「自維連立政権」であり得そうなこと
筆者:
10月15日の自民党と日本維新の会との代表会談の後、維新の吉村代表はこの政策協議がまとまれば国会での総理指名選挙では高市氏に投票する考えを明らかにしました。
衆議院で自民党と日本維新の会を合わせれば過半数までは2議席足りないものの、
残る全ての政党がまとまることは極めて難しいです。
このことから「高市自維連立政権」が新しく成立する可能性が極めて高くなったと思っています。
では具体的にどのような政策が行われそうか? などについて個人的な意見を述べていこうと思います。
質問者:
思えば参議院選挙前から筆者さんは「維新の会に投票するのは自民党に入れるとと変わらない」という話でしたからね……。
筆者:
あの時は「予算を成立させた維新が石破政権を支える」という風に予想させてもらいました。
実際のところ選挙直後には予想を外した形になりましたが、
自公連立が解消され「政権の座から陥落するかもしれない」という13年ぶりの危機に瀕したこの一番の大詰め瞬間に助けたということです。
自民党総裁が交代したところでその構図は変わらなかったということですね。
公明党と関係を解消することは想定外でしたが、基本的には「党の本質」や「党と党の関係性」って変わりませんからね。
そのために政治を変えるには自民党には投票してはいけないという主張をし続けているということです。
◇「自維連立」の条件となっている政策
質問者:
記事によると、「副首都構想」や「社会保障改革」などを維新の会が要求して、それを高市さんが吞みそうだという感じなのですが、具体的にどんな感じになりそうなんでしょうか?
筆者:
「副首都構想」は大阪を中心とした関西圏に首都機能の一部を移転させるものです。
人口の「東京一極集中」を打開するための施策の一つと言われてます。
首都機能をバックアップするため、危機管理専門の省庁を設置したり、首都機能の一部を移転する構想のようです。
ただ、令和5年から文化庁が京都に移転しました。
奈良・京都には世界遺産や文化庁が指定する重要特別史跡名勝の3割以上が集まっているために非常に合理的と言えます(逆に東京には世界遺産はゼロ。名勝も4と少ない)。
どちらかというと、各省庁が「その場所にあったら一番効率的なところ」に移転すれば良いだけであり、何も関西圏にこだわる必要性は無いと思います。
農林水産省は東北や北海道にあればいいと思いますし、復興庁でしたら東北や能登にあればいいと思います。
質問者:
確かに……。どういう意図があるんでしょうか?
筆者:
官公庁の一部を移転させることで雇用の創出や関西圏のGDPを上げたいんでしょうね。
しかも、国家公務員であれば国費が負担するので大阪の懐を痛める必要はありません。
「金かけずにGDP増やしたろ」
みたいな感じだと思います。
ただ、今の世の中デジタル化や郵送での簡略化は進んでおり、物理的な出張所も全国にあります。
「凄いことやっているように見える感」
を出すだけで、政治家の利権が増えるだけでしょう。
国民側から見たらそんなに抜本的に何か変わるような感じはありませんね。
質問者:
社会保障改革についてはどうなんでしょうか?
筆者:
日本維新の会の公式ホームページを見に行ったのでその内容を簡略的に書いておきますが、
・薬局で買えるお薬への保険適用を見直す
⇒ 湿布、胃薬、風邪薬など市販薬でも対応可能なものの保険適用を見直し、医療費の膨張を防ぐ。
・公平な窓口負担改革
⇒ 70歳以上でも所得や資産があれば2割・3割負担へ。
・オンラインやAIを活用した診療の推進、電子カルテの完全普及
・病床数の適正化
⇒ 地域に必要な医療提供体制を構築
この4点の改革で4兆円削減、現役世代1人当たり年間6万円の負担軽減になるとしています。
質問者:
年間6万となると月5000円は嬉しいようなそうでないような……。
筆者:
今現在年金も合わせれば130兆円ほどある社会保障を改革することについては賛成しますし、
実はこれら言っている内容はそこまで悪くはなく、否定することはそんなに無いと思います。
(特に薬の保険適用見直しを行わないと病院がご高齢の方の”溜まり場”と化している)
ただ、社会保障の「根本構造」が変わっていないと結局のところお話になりません。
質問者:
具体的に何が問題なんでしょうか?
筆者:
社会保険料は税金と同じように徴収されながら「保険である」という理由から一律の割合(健康保険料10%、厚生年金18.3%、介護保険料1.82%)になっているんですね。
そのことから逆進性が非常に高いものとなっているので、給料が低いほど重荷になっています。
ですから「社会保障の壁」といった問題が発生し、「働き止め」といった社会・労働問題にも制度設計が悪すぎるために発展しているのです。
「税と社会保障の一体改革」とかいう名前を消費税増税の際に自民党などは銘打っていたので、
いっそのこと「社会保障税」と名称変更して所得税同様の累進性の割合にした方がいいと思います。
質問者:
「改革」とか言っても「月5000円給付の財源」を捻出しているだけという感じなんですね……。
筆者:
暗に言えばそういうことになります。
これも「凄いことをやっている感」があるだけでこれまでと比べて大きく何か変わるわけではありません。
◇「自維政権」で今後起こりうる政策
質問者:
政策協議で一致しそうな政策以外ではどのようなことが考えられますか?
筆者:
維新の会というのは基本的には「身を切る改革」による公務員削減、新自由主義を前面に出している政党です。
公務員の仕事を効率を上げることで減らして公務員を減らすのであれば理屈は分かるのですが、
大阪府で起きていた実情は正社員から派遣に置き換えて仕事内容はほとんど変わらず、国民の平均給与を下げただけでした。
「財政改善のためのパフォーマンスコストカット」
と言っても過言ではないでしょう。
質問者:
新自由主義というと、維新の会には”あの竹中平蔵さん”がバックについているという話が以前ありましたが……。
筆者:
竹中氏は日本維新の会創設に関わり当初は公認候補者の選定に携わったようです。
現在も日本維新の会が党内に設けた諮問機関の「ガバナンス委員会」の委員長を務めており、影響力は絶大でしょう。
そうなると当然、「規制緩和」というニックネームの「日本破壊政策」も来るでしょうね。
目下一番あり得そうなのはライドシェアですね(現在の一部解禁はタクシー会社が責任を持っているために事実上の”流動的な社員付き車を雇いやすくなっただけ”に過ぎない)。
ライドシェアにも色々種類があって、テスラの自動運転などで省人化によるライドシェアであれば問題ないのですが、
外国人移民受け入れ&個人タクシー解禁であれば運転技術やモラルの懸念など問題点が多すぎます。
※在留資格「特定技能」で外国人材を受け入れられる分野は、これまで12分野のみでしたが、2024年3月の閣議決定により、「自動車運送業」、「鉄道」、「林業」、「木材産業」の4分野が新たに追加されているために荒唐無稽な話ではありません。
質問者:
事故とかちゃんと届けてくれるのかとかトラブルが怖いですよね……。
後は進次郎さんがやろうとしていたと言われる「農協改革」もあり得そうですよね……。
先ほどお話にあった「身を切る改革」関連では他に何かあるでしょうか?
筆者:
高市氏は「PB黒字化目標」を破棄して「責任ある積極財政」を公約にしていますが、維新の会は財政規律を強く重んじますので「PB黒字化目標」が取り下げられない可能性はあると思います。
何かを増税して減税をすることは「本当の意味での減税」ではないです。
実質賃金が22年~24年まで3年連続通年ではマイナスになっています。
最低でも実質賃金がプラスになるぐらい(増税を伴わない)の減税をやらないと自然に日本国民は貧しくなっていくと思います。
当然先ほどの保険料5000円下げる程度ではお話になりません。
質問者:
規制緩和や責任ある積極財政が実現できるかが焦点ということなんですね……。
筆者:
まぁ、財政出動できても「企業優遇措置」連発だと国民に還元されないのでそれだけはやめて欲しいですけどね。
ということで、「自維政権」の10月16日朝時点での予測を立てさせてもらいましたが、
今後何か政局の変化、合意内容の変化があればまた解説させてもらいますのでどうぞご覧ください。