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大願成就の先のエキスパート

作者: カケル

 願いを叶えるため。

 人の成す所業は如何様も許される。

 ただし。

 その願いの代償は?

「……」

 実労働年収——二百万未満。

 資格——無し。

 彼女——無し。

 時間——有り。

「……」

 一人暮らしの四十代の男。

 ワンルームにて、向かい合うは通販サイトで買った安物のモニター。

 映るは高解像度のFPSオンライン対戦。

 ただし、fpsは最低値設定。

 つまり、使用するPCは低スペック。

 快適なゲームライフには程遠い。

「よおおしっ」

 のはずなのに。

 次々と勝利をもぎっていく彼。

 安物スペック環境を物ともせずに。

 彼は連戦連勝を積み上げていく。

 ——人生総プレイ時間、十万を超え。

 数多のゲームを経験しつくした彼。

 蓄積されてきたゲーム知識や経験。

 それに勝る者はついぞ現れず。

「優勝は確定だな」

 大会常連者の彼。

 もはやネットでは伝説となっている。

 ——部屋に置かれた様々なデバイスと配線、そしてゲーム専用の棚達。

 別に契約して借りている倉庫。規模は一軒家ほどで賃貸よりも安いという。

「さて」

 口座には優勝賞金がたんまり。

 気分転換で月数度にデバックのバイトをし、面白半分でゲーム配信をしたり。

 ゲーム三昧ここに極まれり、である。

 ただし——。

「……」

 リアルでは話し相手が一人もいないという。

 圧倒的実力と人気を得ているにもかかわらず。

 リアルでの人間関係を一切持たない。

 というかモテないという事実。

「……」

 人間関係、家族、友人よりもゲームを優先したことによる代償。

 会場や画面越しではスラスラ話せる切り替えはあっても。

 プライベートでは、『あ』『え』『その』というコミュ障っぷり。

 街中で声を掛けられ、だが一連でそのファンが冷めたという事例。

 彼の買い物はついぞ通販へと完全移行した。

 ——コミュ障ここに極まれり、である……。

「……彼女ほし~」

 と。

 天上よりも遥か先——。

 無量大数的確率よりもさらに難しい願望を口にして。

「さびし」

 と。

 今年で四十路を迎えた彼。

 手遅れである。

「ま、いっか」

 と。

 気楽に切り替え。

 彼はゲームを再開し、没頭した。

 ——次の大会で彼は。

 決勝戦で完全なる完封勝利を収め。

 会場を大いに沸かせ。

 伝説となった。

 ——自己幸福を極めた先にある、得てしまった自由。

 そして。

 崇高で孤高なる孤独。

 果てしてそれは。

 得てしたそれは。

 真に幸せと呼ぶものなのか、と。

 彼にとってはもう、どうでもいいことになった。


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