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空架ケル虹の彼方 -Unlimited Longing-  作者: 山並萌緩
イェソド大陸-研究都市ノーティア

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#84「基底動作」

「ちなみにこの話はスズネ、君にも当てはまる話だ。」


「え...?」


アンリの過去へ向いていた私の思考がシオンの言葉によって現実へ引き戻される。


「私にも......?」


「そう、君の"()()"にもね。」


「.........?」


私の"造形"にもアンリと同じような、無意識下での別の動作が.......?


......だけど、私はまだシオンに"造形"を扱うところを見せていない...。

いや、そもそもシオンは私の課題を"造形"だと言っていた。

なら、私は昨日の戦いで......?


「あまりピンと来ないのも無理はない。この現象が起こるということは、体が覚えるほどに無意識下へ刷り込まれている状態になるということだからね。」


......シオンの言う通り、全く分からない。

私が昨日、"造形"を使った......?


「......私、いつ"造形"を使ってたの...?」

とにかく疑問をそのまま投げてみる。


「......ふむ。すまないが、その質問に()()に答えるならば、『昨日の戦いの間、常に』だ。」


「え......!?」


想定外の答えに驚く。

だけど今の言い方、何か含みがあったような......。


「まあ、この答えは今の話のノイズになるからね、少し説明しよう。」


そう言うシオンが話し始める。


「普段、君たちが引き起こしている形質変化は、君たちが形質変化だと捉えているもので全てではないんだ。」


「えっと......?」

「どーいうこと......?」


私もアンリも首を傾げる。


「......君たちが認識してないものの中...知らず知らずのうちに引き起こしている形質変化が存在する...と言えば伝わるだろうか?」


「あ、そういう......。ん...?」

「そーなの?」


言いたいことは理解できたが、その内容には疑問があった。

私たちが認識出来ていない形質変化とは一体どういうことだろうか...?


「例えば、アンリ。君が拳を振う時は、<強靭>のオーラに対し、"操作"、"圧縮"、"解放"の形質変化を発生させている。」


「え!そんなに...!?」

「......!?」


アンリが......!?

"圧縮"と"解放"であればまだ分かるが、"操作"は<夢想>のオーラに対応した形質変化だ...。


それにアンリが<強靭>のオーラを扱う時に、"圧縮"による結晶体の発生や"解放"による爆発が引き起こされた事はない。


「どういうことなの...?」


「ああ、順番に説明しよう。」


「まず"操作"だが、これはオーラの『位置』を決める力。今の例で言うなら、アンリは肩、腕、拳...とオーラの位置を移動させながら筋力の"増強"を発生させていた。」


「...あれが、"操作"......?」


その行動は、いつもアンリが自然とやっていることだ。

なのに、それが形質変化だった......?


「次に、"圧縮"はオーラの『密度』を高める力。これは肩、腕、拳の各部位で効率よく"増強"を引き起こすために、オーラが一点に集中されている状態を指す。」


...それも、いつもアンリが......というよりさっきの"操作"も含め、この話は私もオーラを扱う中で自然とやっているものだ...。


「そして、最後に"解放"だが、これはオーラの能力を発生させる力...。そもそも君たちがオーラの能力を扱えていること自体が"解放"の力なんだ。」


「んー...???」

「.........。」


......この話、もしかして.........


「今話したのは、形質変化の『基底動作』と呼ばれるものでね。君たちが普段形質変化と呼んでいる力よりも、遥かに微小な動作がオーラを扱う時に無意識下で発生しているんだ。」


やっぱり、この話も無意識下でのこと......!


「...つまり、私たちが自然とやっているオーラの扱いは、実は無意識下で発生している形質変化によるものだったってこと...?」


「そういうことだね。形質変化というものは、各オーラのもう一つの能力のようなものとして捉えられることも多いが、実際のところ"解放"による爆発や"圧縮"による結晶化などは、この『基底動作』の延長線上にあるものなんだ。そして、それら形質変化に対応するオーラの適性が高いほど、その延長線が伸びる......つまり、より効果を発揮しやすくなるわけだ。」


「おぉ......」

「なるほど...。」


私たちが認識していた形質変化というものは、強い効果を発揮していたものに過ぎず、その根本に存在する『基底動作』と呼ばれる、普段自然に扱っているものも含めたのが、形質変化という括りであるということなのだろう。


「そして、この話を元にスズネが常に"造形"を使っていたという話の説明をしよう。」


......今の話から考えれば、私のオーラの扱いの中にも『基底動作』によって成り立っていたものがあったということ。

そして、昨日の戦いの中で私が常に行なっていたことといえば......


「君は戦いの最中、常に刀へオーラを纏わせていた。この動作に関わっていた形質変化の一つが"造形"なんだ。」


...思ったとおりだ。

私が刀を使う時は、常にオーラを纏うようにしている。

だから、シオンの答えが『昨日の戦いの間、常に』というものだったのだろう。


「刀に限らず、手に持った武器にオーラを纏わせるという動作には、"操作"、"造形"、"吸着"の形質変化が関わっている。」


「まず"操作"は、アンリの時と同じだ。今回は出力の始点となる手元へ、オーラの『位置』を操作した。」


さっきの話もあり、ここのイメージはすぐに出来た。

重要なのはここからだ。


「その次に関わるのが"造形"だ。これはそのままだが、オーラの形状を変化させることができる。そのため、今回は出力されたオーラが刀の形に合うように"造形"された。」


...なんとなく察しはついていたが、やはりオーラの形状に関わる話だった。

そして......


「そして、"造形"されたオーラを刀へ纏わせることを可能にしているのが"吸着"だ。これも単純な話で、"吸着"というのはオーラが物体へくっつく力......つまり、刀状のオーラが刀にくっつくことで纏わせるという動作を実現していた訳だね。」


"造形"したオーラを"吸着"させる...。

言われてみれば単純なことだが、それゆえに私たちは普段の動作の中でこれらを無意識の内に行っているということなのだろう。


......なんというか、理解は出来たけれど実感が無いというか......、今まで当たり前だと思っていた価値観が新しく作り変えられるような.........。


こういうのなんて言うんだっけ.........たしか......、目から鱗...?

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