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空架ケル虹の彼方 -Unlimited Longing-  作者: 山並萌緩
イェソド大陸-研究都市ノーティア

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83/85

#83「体が覚える」

「失敗じゃないってどういうこと...?」


アンリが"圧縮"した結晶体は、跡形もなく弾け飛んでいる。

...にも関わらず、失敗ではない......?


「...ああ、今アンリが見せた"圧縮"は、失敗したから弾けた訳じゃない――」


「――"圧縮"されたオーラを()()"()()"()()()()()()()()()()()んだ。」


「わたしが...?」

「"解放"......。」


"解放"は<壮烈>のオーラに対応した形質変化...。

当然、アンリも使える......というより、さっき見せた超小型の大・爆・発マイクロ・エクスプロージョンでも使っていた。

...だから、原因が"解放"によるものだったという理屈ならば、納得は出来るが......


「アンリ、"解放"したの?」

「ううん...したつもりは、ないんだけど......」


......当然、アンリには()()()()()()()()()()()()()


「ふむ......。ならば、やはり無意識か......。」

シオンがつぶやく。


「どういうこと?」

口振りから察するに、何か思い当たるものがあるようだ。


「...オーラが『意思』によって働く力であるという話は覚えているかな?」


「うん、もちろん。」

昨日聞いたばかりの話だ。


「わたしも!覚えてるよ!」

アンリもしっかり覚えていたようだ。偉い。


「うん、昨日話した通り、オーラは『意思』によって、その力の向かう先を決める。今アンリが"圧縮"した<強靭>のオーラが、"増強"の能力を発揮しなかったのも、何かに力を向ける『意思』が無かった為だ。」


「だが、形質変化に関してはその限りじゃない。」


......形質変化だと違う...?


「そもそも、形質変化とはオーラを扱う技術のようなもの。オーラの力によって外部に変化を与えるのが『能力』なら、オーラそのものの形や性質を変化させるのが『形質変化』だ。」


「そして、オーラに直接作用する形質変化を扱う際の脳の処理は複雑なものとされ、私たちの脳はそれを無意識下で処理することが多い。」


「無意識」......。さっきシオンがつぶやいていた単語だ。


「だからアンリは無意識に"解放"を......?」


「結論だけを言えばそうなるが、もう少し詳しく話そう。」


「形質変化が無意識下で処理をされる、これは間違いないことだが、だからといって自分の『意思』に反した処理を無作為に発生させるわけじゃない。」


「ここでいう『無意識下の処理』というのは、『体が覚える』ということを意味する。」


......なるほど...。

なんとなくシオンが言いたいことが分かってきた気がする...。でも、そうだとすれば()()()......


「体が?」

アンリの方は疑問符を浮かべていた。


「ふむ、そうだね。例えば......いや、アンリ少し歩いてみてくれるか?」

「...?こう?」


シオンの言葉通りにアンリが足を動かし歩き始める。


「アンリ、今君は何を考えて歩き始めた?」

「え?......うーーん...?」


シオンの問いかけによって足を止めたアンリが悩み始める。


「......シオンちゃんに歩いてって言われたから、歩こう!って思って............歩いた......?......あ!でも歩く前は、シオンちゃんに当たらないように横に歩こうって考えた......かも...?」


確かに、シオンと向かい合う形で立っていたアンリはその体を横に向けて歩いていた。


「そう。私たちが『歩く』という動作をする時に考えることなどせいぜいそれくらいのもので、実際に動いている()()()()()()()()()()()()()()()。」


「...?...アレ?ホントだ...わたしいつもどうやって足動かしてたんだろう...?」


「それが『体が覚える』という感覚だ。」

「...!おぉ...!これが...!」


......きっとこの話は、歩いたり走ったりすることだけじゃない。私たちが戦いの中でする動き、村で教わった武術の型もそれに当てはまるはずだ。

だから、私たちは自分で思っているより無意識下の行動をしているし、そして――


「そして、この感覚が形質変化にも当てはまるものだ、というわけだね。」


私の思考の先は、シオンの口から発せられた。


「だけど、なんでそれが"圧縮"の後に"解放"されることに繋がるの?」

先ほど一瞬浮かんだ疑問をシオンへ投げる。


「歩こう」と思うことが「歩く」という動作を無意識下で引き起こすというのなら、「"圧縮"を使おう」と思うことで引き起こされる動作に"解放"という別の動作が含まれるのはおかしい気がする。


「...ああ、おそらくアンリにとっての"圧縮"は、"解放"とセットで行われるものだと体が覚えてしまっているんだ。」


"圧縮"と"解放"がセット...?

...確かに、ここまでの話ならその理屈は通ると思うけど......それこそ、「何故」という疑問が発生してしまう。

セットとして体が覚えるには、武術の型のように体に馴染む必要があるのだと思う。

だけど、私の知る限りアンリが"圧縮"を使おうとした時には最初から―――



―――それより前だとしたら.........?



......私はアンリと出会う前のことを知らない。

それは、出会った時に記憶を失っていたアンリ自身もだ......。

そして、記憶は無くなっても、体が覚えたことを忘れてないとすれば......この状況に説明はつく......けど.........。


でもそれは......私がアンリと出会った9年前より前の段階で、()()()()()()()()()()()()()()()()ということになる............。


もし、本当にそうなんだとしたら...アンリの過去にいったい何が.........。

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