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空架ケル虹の彼方 -Unlimited Longing-  作者: 山並萌緩
イェソド大陸-研究都市ノーティア

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82/85

#82「修行」

「それじゃあ、ワシは早速出掛けて来る!シオン、後は任せたぞ!」


やけにテンションの高いおじいちゃんが、階段を上がり地下を出ていく。


「ああ...分かってるよ。いってらっしゃい。」


シオンはおじいちゃんの外出の目的が分かっているようだ。


「おじいちゃんどこに行くの?」

アンリが疑問をシオンに投げる。

...おそらく、今言っていた「当て」のところなんだろうけど......


「ああ、そのうち分かるから気にしないでくれ。」

「えー?」


......そうはいっても、アンリにとって...私にとっても、この件は重要な問題だ。


「...ねえ、シオン。おじいちゃんが言っていた『当て』っていうのでアンリの症状がなんとかなるんだよね...?おじいちゃんはそのために出掛けたんでしょ...?」


さっきのおじいちゃんの宣言は自信に溢れたものではあったが、やはり具体的なことが分からないままでは不安になる。


「...そうだね。先生が向かったのは、アンリの症状を調べるための専門家の元だ。」

「専門家......。」

その人に会えればアンリの症状を治せる...?


「だから、今は気にせず待っていてほしい。...この件については、私はもちろん先生も分野外でね、下手に手出しをするのは憚られるんだ。」


それで、詳しい話をしてもらえないの...?

......正直にいえば、すぐにでも詳細を話してもらいたいけど......。

それでも、今まで何も分からなかったことに治す可能性があらわれた以上、大きな進歩なのは間違いない。


「...そっか、わかった。」

だから、今はこれ以上の追究はよそう...。

...きっと、おじいちゃんが何とかしてくれる。


「うん、すまないね。」

「ううん、シオンが謝ることじゃないよ。」

おじいちゃんもシオンもアンリのために動いてくれてるんだから。


「...うん、ありがとう。アンリもそれでいいかな?」

「うん!わたしは大丈夫だよ!」

「ふふ、そうか。」


......自分の体のことだというのにアンリは気にもしてない様子だ。

この危機感の無さは、私にとっては不安の種ではあるんだけど......。

...それでも、アンリが不安がってしまうよりはよほどいいとも思っている。

.........不安に怯えるアンリの顔は()()見たくないから。



「――それじゃあこの話はここまでにしよう。次は君たちの本題に入らないといけないからね。」


シオンの発言で、話題と共に場の空気が切り替わる。


「わたしたちの本題って?」

「忘れたかい?君たちがここへ来たのはオーラの扱いを学び、より強くなる為だろう。」

「...!忘れてないよ!」


...そうだ、私たちの目的はそこにあった。

昨日、騎士団の訓練所に行ってシオンにオーラの扱いを見てもらったのもそのためなのだから。


「ふふ、だから今からは()()の時間だ...!」


「修業......?」

「修業...!!」


...要するに鍛錬と同じことだと思うが、アンリが好きそうな単語だ。


「昨日見せてもらったオーラの扱いから課題を得た。君たちには、それに取り組んでもらう。」


課題か...。

シオンの"知覚"によって、私たちのオーラに欠点や伸ばす点が見つかったんだろう。

きっと、私たちが強くなるために必要なことが得られるはずだ。


「課題ってどんなの...!?」


修業という単語に惹かれてか、アンリはすでにワクワクした様子だ。


「結論から言えば君たちには形質変化...特にアンリは"圧縮"、スズネは"造形"の扱いを極めてもらいたい。」


「「...!」」

どちらもアンリの<壮烈>のオーラと共に相談しようと思っていたことだった。

アンリも私も昨日の戦いの中で使っていないものだけど、どうして......。


「シオンちゃん、わたし"圧縮"が使えるようになるの...?」

「...いや、むしろ私としては使っていないことが不思議だったんだ。あそこまで<強靭>のオーラを使いこなす君が、対応する形質変化である"圧縮"を使()()()()()()()()。...今まで使おうとしたことが無かったのかい?」


......なるほど、使っていなかったからこそ「課題」と...。

でも、アンリは......


「わたし、"圧縮"を上手く使えないんだよね。使おうとすると()()しちゃって...」


「失敗......?」


「うん...。...あ、そうだ!見ててね!」


そう言うとアンリは、祈りを捧げるように手を組み――


「んーー!!」


――両手に力を込め、オーラを手の間に集める。


「...!できた―――」


嬉しそうに手を開け、現れたのは、指先で摘めるほどの小さなオーラの結晶体。

だけど――



―――ボンッ!



「ぅわっ...!?」


一瞬姿を見せた結晶体は()()()()、シオンが小さく声を上げる。


「い、今のは......」

「"圧縮"をしようとするといっつもこうやって失敗しちゃうんだ...。」


......そう、これまでもアンリが"圧縮"を習得しようとしたことはある。だが、その度に今のように結晶体が弾け飛び、消失するため、アンリは"圧縮"に対して苦手意識を持っていた。


「いや......今のは()()()()()()()()()()...。」


「「え...?」」


失敗じゃない......?

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