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空架ケル虹の彼方 -Unlimited Longing-  作者: 山並萌緩
イェソド大陸-研究都市ノーティア

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78/85

#78「未来の騎士団長」

「私たちの戦闘技術?」


説明の内容が騎士団に向いたことで、ヒーナが反応する。


「ああ、君たち騎士団が扱う戦闘技術は、『エネルギーへの干渉』に適応しやすいものだった。......君たちは戦いの中で『力の流れ』というものを意識している。そうだろう?」


「うん!それはもう、体に染みつくほどね!」

「そうだな、その意識は騎士団であれば誰もが持っている。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。」


私の問いに、二人の肯定が返される。


彼らの技術は、北に向かって移動する習性がある魔獣たちが行き着く先であるマルクト大陸......そこで戦い続けた長い歴史の中で培われてきたものだ。


......だが、今のエイリの言葉が少し引っかかるな。

騎士団における本格的な戦闘技術の訓練は、早くとも10歳から行われるものと聞くが、今の言い振りだと二人はそれ以前から訓練を受けていたのだろうか?


「その技術ってどういうものなんですか?」

「わたしも知りたい!」


二人に詳しく聞いてみようかと思案していたところにスズネたちの言葉が飛ぶ。


「どういうもの......か。俺たちも感覚的に理解している部分が大きいために言語化が難しいが......。相手の体に流れている力を意識し、自らの力を最大効率で相手に伝える...というのが俺たちが受けた教えの中でも基礎となる部分だ。」

「うんうん、それそれ!」


「おー!」

「.........。」


スズネの理解しようと考え込んでいる様子に対し、アンリは随分スッキリしたリアクションだが、あの反応はあまりよく分かっていないんじゃないだろうか...?


「まあ実際、彼らの技術は科学的に解明出来ていない部分も多いからね、説明も理解もこの場で簡単に出来るものではないだろう。ここで理解すべきなのは、この技術が『力の流れ』を意識するものであったために、オーラの力をその『力の流れ』...つまりは『エネルギー』へ干渉させるという『意思』が生まれたということだ。」


「...それが、私たちとの違い......。」


これでスズネの質問に対する答えに辿り着くことになった。

次は、私の疑問へ話を持っていくとしよう。


「この話の補足として、騎士団がオーラを習得するのは今言った技術を体得してからになるというものがある。騎士団はオーラの力よりも、その基盤となる身体と精神の成熟を優先して育てるという考え方を持っているんだが、その過程で戦闘技術を先に教わったために、オーラを習得してすぐに『エネルギーへの干渉』が可能になったというわけだね。」


「なるほど......。」


「そして、これは私からの質問なんだが......」

ヒーナとエイリの方に視線を送る。


「さっきのエイリの口振りでは、他の訓練騎士(スクワイア)よりも幼い時から戦闘技術の訓練を受けていたようだし、すでにオーラの力を使えることもあって、君たち二人は騎士団の訓練課程から逸脱しているように見える...。それは何故だろうか...?」


オーラの力自体は自発的に習得する事例も珍しくはない。

だから、二人がここへ来た時点で扱えていたことにもあまり疑問を持っていなかったが、それが訓練過程が他と違ったためとなれば話が変わってくる。


「ああ、それは俺たちが――」


「――私が団長になって、エイリが副団長になるからだよ!!」


エイリの言葉を遮ってヒーナが高らかに宣言する。

...なるほど、次期団長と副団長ときたか。


「団長って?」

「騎士団で一番偉い人!」

「え!?ヒーナちゃんすごーい!!」

「えへへ、そうでしょー!」

アンリに向けVサインを作って見せるヒーナ。


だが、騎士団の慣わしでは......


「いや、正確には決定事項ではない。」

「え?」

「騎士団の団長と副団長は、代々俺たちの家系から輩出されている。だから、次代でその役目を担うのが俺たちであることは事実だが、どちらが団長で副団長となるかは前の代の団長たちが代替わりをする時に決めることになっている。」


...そう、そのはずだ。だから、今の段階で決まってはいないはず。


「そ、そうだけど!団長をしてきたのは私たちスヴェート家の方が多いし、エイリも私の方が団長に向いてるって言ってたじゃん!」

「俺は決定事項でないという事実を話しただけだ。それに、実際に決めるのは現団長であるお前の父と現副団長である俺の母だ。そこに俺たちの意向は介在しない。」

「ぐぎぎ...そうだけどぉ...!この正論マンめぇ......!」


「ヒーナちゃん団長になれないの...?」

「ううん!違うよ!今はまだ決定じゃないってだけ!絶対私がなるよ!絶対!」

「そうなんだ!」

「そうです!」


どうやら、ヒーナの断言はあくまで本人の意向によるもののようで、エイリが言うように決定はしていないようだ。


しかし、彼女たちが騎士団の次期トップだったとは......。

「...ふむ。だから、君たちには特別早く訓練課程が適応されていたということかな?」


「え...うーーん......。そういうことなの?」

「当たらずとも遠からず、というとこだろう。...俺たちは幼少期の頃、現団長副団長であるヒーナの父と俺の母に戦闘技術やオーラ習得の訓練を受けたんだ。」


......騎士団としての訓練とは別、ということか。


「さっきシオン先生が言ったように、本来騎士団でそれらの技術を真っ先に教わることはない。だが、俺たちの家系では直接技術を継承される風習があり、......それが10年ほど前、俺たちが幼少期の段階で執り行われた。だから、俺たちの技術の習得状況が他のものより早いという話だ。」


......10年前...。

戦争が始まった時期か......。

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