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空架ケル虹の彼方 -Unlimited Longing-  作者: 山並萌緩
イェソド大陸-研究都市ノーティア

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#77「意思の力」

「......以上が現在の認識に至るまでの変遷だ。」


シオンによる、オーラの『物理法則への干渉』が『エネルギーへの干渉』と認識され直すまでの説明が終わった。


「ここまでのことで何か質問はあるかな?」


質問......。

今の話で気になった事といえば......。


一つ思い至り、手を挙げる。

「ん。何かな?スズネ。」


「......『エネルギーへの干渉』を騎士団の人たちが使えたのは、なんでかなって。今の話だと、オーラを使えるようになってすぐに『エネルギーへの干渉』も出来るようになったってことだよね?...でも、私たちの故郷の村ではそんな力が使えるのを聞いたことが無かったし、何かオーラを使えるようになるまでに違いがあるような気がして。」


......オーラの習得と『エネルギーへの干渉』が可能になったタイミングに差が無いのであれば、必要なのは単純にオーラの練度の高さではないということになる。


それに練度でどうにかなる話であれば、村の大人たちや、出会った頃には既にオーラの力を扱えていたアンリが出来てもおかしくない。

それでもそれが無かったということは、やはり何か根本的な違いがあるのだろう。


「フフ、良い質問だ。その疑問の答えは、オーラが出力されるメカニズムの根底に関わる話になる。」


出力のメカニズム......?

オーラの力というものは、生命と精神のエネルギーが<夢想>のオーラに通されることで、私たちが普段使っているオーラの力になる......という話はしてもらったはずだけど......。


「ここで言いたいのは、()()()()()()使()()()()という話ではなく、()()()()()()()()()使()()()()()()という話だ。」


「君たちは全員、オーラの扱いを習得している訳だけど、普段それをどうやって使っているかは分かるかい?」


「......?どうって......。」


<夢想>のオーラからの出力とは別の話ってことだよね......?

たぶん、どちらかというと感覚的な......。

...でも、改めて言われると...何をどうしているか......


「わかんない......!!」


アンリが元気な声で断念する。

......実際、私も「どうやって」という感覚はよく分からない。


「そう、案外いきなり聞かれるとよくわからないものだ。」


......どうやら「わからない」というのがシオンが想定していた答えだったようだ。


「――だから、質問を変えよう。君たちがオーラを使う時というのは()()()()()?」


どんな時......。


「戦う時......?」


私たちがオーラを使うのは何よりもこの為。

村では魔獣の存在が身近であったし、だからこそ私たちは戦う力を教えられてきた。


「そうだね、君たちは戦う為にオーラを使う。だけどその戦いの中には、オーラを使う瞬間というのがいくつもあったはずだ。...例えばアンリ、君はさっきの戦いでいつオーラを使った?」


「えっと......、ヒーナちゃんに向かって行く時と......こーやって!パンチする時!!」

アンリが拳を突き出しながら答える。


「そう、その答えこそがオーラ出力の根底の考え方――」


「――すなわち『意思』の力だ...!」


「意思の......」

「ちから...?」


「ああ、さっきの戦いではこの場の全員がオーラを扱ったが、その力というものは自動的に発生したものではなく、()()()()()()()()使用されたはずなんだ。今、アンリが答えたようにね。」


......私の場合は、攻撃を受けるためや、体の力を奪うために使った。

つまり、それが私がオーラを使った目的......。


「なら私はアンリちゃんと同じで、『パンチをする』っていう目的のためにオーラを使ったってことかな...?」

「いや、ヒーナ。君の場合は()()()の目的を意識していたはずだよ。」

「その先...?」


「...俺はスズネの刀をナイフで受け止めた時、その力の流れをずらす為にオーラを使った。おそらく、ヒーナにも同じことが言えるんじゃないか?」

「どういうこと?」

「俺はナイフで受け止める為にオーラを使ったわけじゃない。力の流れをずらすということが俺の目的だった。」

「......じゃあ、私は...パンチをすることじゃなくて、()()()でアンリちゃんを吹き飛ばすことを目的にしてた、ってこと...?」


「その通りだ。ヒーナやエイリが見せた『エネルギーへの干渉』が起こったのは、二人の目的の対象が物体が動くエネルギーであったことに起因する。このように、目的とはオーラの干渉先を決定するのに重要な役割を担っているんだ。」


「ほぉー!なるほど〜!」

ヒーナさんが納得の声を上げる。


つまりは、同じ拳による攻撃をしたアンリとヒーナさんであっても、その目的が違っていたためにオーラの干渉先が、自らの体と物体が動くエネルギーとで分かれることになった、ということだろう。


「そして、ここからがスズネの質問の答えだ。」


......!

そう、元々の私の質問は、同じオーラの習得に『エネルギーへの干渉』が出来る者と出来ない者がいることの違いだ。

そしてその違いは――


「結論から言えば、オーラをどう扱おうとしたか......『意思』がどう働いていたかが違ったということになる。」


――当然、今の話を踏まえればそうなる。

だけど......


「だが今度は、何故彼らが物体が動くエネルギーを目的にオーラを扱おうとする『意思』を持っていたのか、という疑問にぶつかるだろう。」


「うん...。」

......そう、村の人間と騎士団の人たちに存在した違いは明確になったけど、()()()()()()()()()()()()()という疑問は解消されない。


「では、次は騎士団の伝統的な戦闘技術について少し説明しようか―――。」

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