#74「オーラの干渉」
「少し話が逸れたが、次はヒーナとエイリが扱ったオーラについても説明しておこう。特にアンリは何が起きていたか正しく理解できていないだろうしね。」
シオンちゃんがこちらを見る。
「...?......あ!」
そういえば...!
「ヒーナちゃん!さっきのアレなに...!?」
ヒーナちゃんと戦っていた時、想像以上の勢いで飛ばされたり、攻撃したときに不思議な手応えを感じたりした。
シオンちゃんが今言ったように、やっぱりオーラの力のようだけど......"知覚"が弱いわたしには、どのオーラの力がどう働いていたのかが分からなかった。
「ふっふっふ。やっぱ気になる?」
「うん!」
「どうしよっかな〜私、アンリちゃんが勝ったら教えるって言っちゃったしな〜」
たしかに、シオンちゃんに途中で止められちゃったから決着はついていない。
「じゃあ、もう一回勝負しよ!今度は勝つよ!」
「お、いいね!やっちゃう?」
さっきの戦いで死角を狙えばチャンスがあることがわかったし、もっと速く動ければ今度こそ......!
「いや、ちょっと待ってくれ君たち...。今私がそのことについて話そうとしてたんだが......。」
「あ...。」
そうだった。
「すまない、シオン先生。コイツはふざけてからかっているだけだ。」
「あはは!ごめんねアンリちゃん、素直な反応が可愛くってつい♪」
「え」
からかってただけ?
「...わかります。」
なぜかスズネちゃんが深く頷いてる。
「じゃあ教えてくれるの!?」
「もっちろん!あれはねー、オーラの力でこう、動きをバビューン!ってする感じでね、オーラをドーンって外に出すと出来るんだよ!」
「......?」
動きをバビューン...?
吹き飛ばされた時の勢いのことかな...?
「......シオン先生、説明を頼めるか?」
「...ああ。」
「あれ!?私いま説明したのにっ!?」
今度はシオンちゃんが説明してくれるみたい。
「アンリ、ヒーナが使ったのは君と同じ<強靭>のオーラだ。」
同じ......?
「でもわたし、あんなこと出来ないよ?」
<強靭>のオーラの"増強"はよく使うけど、それはより強く力を振るうことが出来るだけで、力以上の衝撃を与えるようなことはしたことがない。
「ああ、それはオーラの干渉先が違うからだ。」
「......??」
かんしょー先ってどういうこと??
「君は普段<強靭>のオーラを扱う時、自らの体にオーラの力を向けているはずだ。」
「う、うん...?」
"増強"は、強く地を蹴ったり、強いパンチをするために、腕や脚に集中させる......。
それが、オーラの力が自分の体に向いているってことかな...?
「それに対して、ヒーナが扱った<強靭>のオーラの力は、物体が動くエネルギーに対して向いていた。」
「......???」
よくわかんない。
でも、エネルギーってなんか強そう...!
「アンリ、君はヒーナの攻撃を受けた時、その威力以上の衝撃が体に与えられた感じがしなかったかい?」
「...!うん...!思ったより体が吹っ飛んでビックリした!」
「それが今説明した、エネルギーに対する干渉の結果だ。」
「......かんしょーの...。」
「そう。ヒーナからの攻撃を受けて、飛ばされるはずだった本来の衝撃力......つまりエネルギーに対して、"増強"が干渉した。これによって増幅されたエネルギーがより強い衝撃力となって、君の体をより強く、遠くへと吹き飛ばすことになったという訳だ。......理解してもらえただろうか?」
「うーーん......なんとなく...?」
"増強"は、力がより強くなる力。
それが、吹き飛ぶ力を強くした......?
......シオンちゃんの説明はわかった気がするんだけど、なにかしっくりこないというか......。
「つまり、オーラを外にドーン!ってして、エネルギーにバビューン!ってことだね!」
「......!」
「おい、余計な口を挟むんじゃ......」
「――わかった!!」
「む?」
「お!」
「オーラの力は、体の外にも集中できるってことだよね......!!」
<強靭>のオーラを使う時は、力を出したいところに集中させる。
それはいつも体のどこかだったからしっくりこなかったけど......。吹き飛ぶ力を強くしたい時は、体の中のオーラを外に押し出せばいいんだ!ドーン!って!
そうすれば、体の外にもオーラを集中出来る!
......のかな?
イメージにしっくりきたというだけで、具体的にどうすればそうなるのかはまだよくわかんないままだけど......。
「ふむ......そうだね。そのイメージでも問題ないだろう。実際に力を扱うヒーナの感覚的な言葉で腑に落ちた感じかな。」
「そうかも...!」
ヒーナちゃんが言った「ドーン!」で、腕や脚にオーラを集中させる時の流れが外へ続いていくイメージに繋がった気がする。
「さすが私...!実は、先生の才能があったり...?」
「それはないだろう。やめておけ。」
「は?なんでよー!」
...?
「お前は座学の成績が悪いからな。」
「それは、アンタもでしょーが!」
「その事とお前の才能の有無とは関係ない。」
「うっさいわバカ!」
......しっくりくるイメージができたのは良かったけど、二人がケンカ...?し始めちゃった。
でも、二人の様子は険悪な感じというより、むしろ仲が良さそうに見える。
ケンカするほど仲がいいって言葉を聞いたことがあるけど、こういうことなのかな。
......そういえば、わたしはスズネちゃんとケンカしたことないなぁ。




