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空架ケル虹の彼方 -Unlimited Longing-  作者: 山並萌緩
イェソド大陸-研究都市ノーティア

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72/85

#72「接戦」

抜刀......。

シオンの合図とともに刀を抜いた。


「............。」

刀にオーラを込めて構え、...様子を窺う。


......リーチだけならこっちの方が有利だけど...。


「......。」

切先をこちらに向けてナイフを構えるエイリさんは、体を真横にしてナイフを構えた右手の後ろに隠している......。


......どこから打ち込んでも対応されてしまう気がするような構えだ...。

...それに、さっきのヒーナさんが見せた()()のこともある。

下手に間合いに入るのは危険かもしれない...。


「............。」

「......。」


......互いに睨み合う膠着状態が続く...。




.....................。



..............。



......。




―――タッ――!


――先に動いたのは私......!


「――はぁっ...!!」


右手で持った刀を、左下から振り上げる......!


――狙うのは、()()()......!


「......!」


ガギンッ!


ぶつかり合った刀とナイフが、鈍い金属音を響かせる。


――よし...!


このまま、刀に乗せたオーラを使って――

「.........っ」


――"吸着"――


「―――ぇ」


――しようとした瞬間、私の体は振り上げた刀と共に()()()()()()()......!


というか、エイリさんが消えて――!?


カラン


――いや違う...!


視線を下に落とす――


「足元がおざなりだ...!」


――エイリさんは身を屈め、体勢を崩した私の体へ蹴りを――


「――くっ......!!」

瞬時に振り上げている刀を地面に叩きつけ――


シュバッ


――それを支えに、跳ぶ...!!



「――――。」


跳び上がって、一瞬捉えた視界で状況を確認する。

......ナイフが落ちている...。

...まさか、エイリさんはナイフを離して......!?


私の刀と打ち合った直後、私がナイフを"吸着"しようとしたあの瞬間にナイフを離したんだ...!

だから、体重を乗せていた私の体は、支えを失って前へ......!


シュタッ


跳び上がったまま、刀の切先を中心に空中で弧を描いた私の体は、刀の向こう側へ着地する......


......エイリさんに背を向けて......!


ガギンッ!!


――瞬時に振り向いて刀を振り抜けば、そこにはエイリさんが眼前に迫っていた...!!


当然、ナイフを再び手にしている......!


「......っ...!」

「......。」


......どうする...!?


私の目標は、"吸着"でナイフの動きを止めつつ、ナイフ経由でエイリさんの体に<静謐>のオーラの"減衰"の力を流し込むことだった。

...だが、ナイフを離されて避けられてしまっては......。


......いや、

「.........っ」

刀にかける力を下向きに......!


これで大勢を崩されても、下向きに振り抜ける...!


そして、動かないのなら......このまま、オーラを流し込めば......!!


「ふんっ.........!!」


「.........!!」

「――!?」


――エイリさんの体が、私の刀の下を潜るように落ちていく......!


くっ...!今度はナイフを持ったまま...!


いや、だけどこのまま、下に力を入れて地面へ叩きつけ―――!?


ジジジジッ


――刀は、受け止められているナイフの上を滑るように()()()()()......!!


「.........ハッ...!」


――僅かに見えるっ......!!

ナイフから溢れた藍色の光――<蠱惑>のオーラ......!!


あれで、私の力の方向が"歪曲"されてる......!!


ケントルアであの少年が見せたほどの強い力は無いが、この状況で力の方向を僅かにでもずらされるのはマズい......!


――!いや、違う――


「――っはぁっ――!!」


――ここで"()()"...!!!


「―――ぬっ......!?」


力の方向を上へと少しずらされていた私の刀は、ナイフを"吸着"したままそれを握るエイリさんごと、前方へ振り抜かれる......!


――捕らえた......!


これでナイフを握り続けるなら、<静謐>のオーラを流し込む...!

ナイフを離すのなら、刀を振り下ろす......!!


バッ...!


やっぱり、離した......!!


「――せやぁッ!!」



――パァン!!


「!!」


振り下ろした刀をエイリさんが両手で挟み、受け止める――!



―――だけど......


...これなら、()だっ...!!!


「...!!?」


刀を挟み込む両手へ<静謐>のオーラを流し込み―――



「――降参だ。」



「......!」

その言葉が聞こえて、咄嗟に刀にかけていた力を抜く。


...私の刀が完全に停止すると、エイリさんは刀から手を離し立ち上がった。


「......その刀、向けられていたのが刃の方であれば、あと数秒で俺は頭を左右に切り裂かれていたことだろう。.........俺の負けだ。」



...あ......

......私が勝った.........?

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