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空架ケル虹の彼方 -Unlimited Longing-  作者: 山並萌緩
イェソド大陸-研究都市ノーティア

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71/85

#71「スズネの番」

次は私の番......。


さっきのアンリたちと同じように位置についた。


「お願いします。」

「ああ、こちらこそよろしく頼む。」


エイリさんに挨拶をして、腰の刀を......あ。


「...あ、あの...木刀とかってありますか...?」

...今の私は真剣しか持っていないことに気づいた。


「...?...その腰のものは剣じゃないのか?」

「あ、いえ...これ真剣で......。」

「......なるほど。俺はそれで構わない。」

「...え、でも......。」

...いくらなんでも訓練で真剣を扱うのは躊躇ってしまう......。


「...変に気を使う必要はない。殺す気で来てくれ。」

「......!」

...この人は淡々と何を......

「俺の方は、このナイフを使わせてもらう。こちらは訓練用で殺傷力は無いから安心して欲しい。」

そう言ってエイリさんは、短い刃物を取り出したが......そうじゃなくて...


「......え、えっと...」

「ちょっと、エイリ!スズネちゃん困ってるじゃん!」

「む...?」

「『む...?』じゃないの!......ごめんね、スズネちゃん。今、訓練用の剣持ってくるから...!」

「あ、ありがとうございます...。」

ヒーナさんが間に入ってくれた。

どうやら、殺傷力の無い剣もあるようだ。


「待てヒーナ。」

「え、なに?」

演習場の外へ向かおうとするヒーナさんをエイリさんが呼び止める。

「彼女のあの剣...反りがあり特殊な形状をしているように見える。あの形状の剣は、訓練用のものに限らずここには無いだろう。」

「え...?......あ。......いや、そうかもだけど...。」

「それに今回のこの手合わせ、目的は彼女たちの戦い方を見るためだと聞いている。それならば扱い慣れた装備の方がいいはずだ。...そうだろう?シオン先生。」


「ふむ...それは確かにそうだが...。本当にいいのかい?」

「ああ。俺たちは()()()()()()()()()。刃を向けられることを恐れる訳にもいかない。」

「.........。」

戦場.........。


......シオンが言っていた、マルクトで起きている戦争のことだろうか......。


「そうか......。私としては、君たちに問題がないのであればそちらの方が好ましいが...。スズネはそれでいいかい?」

「.........」


刀という道具は、簡単に肉を断つ。

それを人に向けるということには、それなりの覚悟が必要だ......。


「......あの、この剣...刀というんですが。」

鞘から少し刀身を引き抜いて前に持ち出す。

「刃の反対側、峰の部分が切れないようになっているんです。...だから、戦う時はこちらを向くように扱います。...それでもいいですか......?」

...ケントルアでもこの方法を使った。

少なくとも、これで切り傷を負わせるようなことは無くなる。


「それでお前が戦いづらくないのなら、俺に異論はない。」

「...はい、問題ありません...!」

...「殺す気で」なんて言われてしまったから少し不安だったが、納得してもらえたみたいだ。


「......うん。二人とも問題ないようだね。...それなら、始めようか。」

シオンが私たちの真ん中に立つ。


「スズネちゃん頑張って!」

アンリが声援を送ってくれる...!

「うん...!」


さっきのアンリが戦った時に見せたヒーナさんの動き......()()と同じことをエイリさんもしてくるのかは分からないが、油断していい相手じゃないことは確かだろう......。


でも、アンリが見ているんだ、カッコ悪いところは見せたくない...!


「では二人とも。準備はいいね?」

「ああ。」

「うん。」


シオンが腕を掲げ――

「はじめ...!」

――降ろした――!

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