#59「突飛な出逢い」
「ようこそ!メルカートノーティア支部へ!今日はどのようなご用件でしょうか?」
ノーティアの壮大な街並みに浸りながら、わたしたちはメルカートへやって来た。
「あの、私たち今日ノーティアに着いたばかりで...道を教えて欲しいんですが...」
「はい!構いませんよ!どちらまで行かれますか?」
「あ、えっと...この住所にノレフ・ルクシアという人が住んでるはずなんですが......。」
スズネちゃんが鞄から取り出した紙を渡しながら尋ねる。
ノレフ・ルクシアというのは、お父さんのお父さん...わたしたちのおじいちゃんのことだ。
そして、お父さんがくれたあの紙にはおじいちゃんの家の住所が書かれており、ノーティアに着いたらまずメルカートで道を尋ねるようにと言われていた。
「あ!ルクシア先生の!ルクシア先生、お二人が着くのを楽しみにされてましたよ!ちょっと待っててください、今地図を用意してくるので...!」
「え、...あ、はい。」
受付の女性は少し慌ただしい様子でカウンターの奥へ入って行った。
「おじいちゃん、楽しみにしててくれたんだね...!」
「うん、そうみたいだね。」
なんだか嬉しい。
初めて会うということもあって、少し緊張のようなものを感じてはいたが、今の話を聞いてそんなものはなくなってしまった。
「おじいちゃん、どんな人なんだろ〜。」
期待が膨らみ始めるのを感じながら、女性が戻ってくるのを待った。
―――。
「えぇっと、...次はあっちかな。」
メルカートで地図を受け取ったわたしたちは、また街中へと戻り、目的地への道を進むことになった。
スズネちゃんが地図を見ながら進んでくれるので、わたしはそれについて行く。
「あとどれくらい?もう少し?」
「ふふっ、もう...。そんなに遠い距離じゃないから、すぐ着けると思うよ。」
「やった!」
いよいよ目的地が迫ってきたこともあり、ウズウズしてしまう。
早く着かないかな...!
「......次は左で...その次が......あ、アンリ、その角曲がったら見えるかも...!」
「ほんと...!?」
思わず駆け出す...!
タッタッタッタッ
駆けた先で角を曲がると――一際大きい建物が目に入った。
「スズネちゃん!アレ!?」
振り向いて、尋ねる。
「あ、......。うん、多分あれだと思う...!」
さっきメルカートで、おじいちゃんの家は周辺で1番大きい建物だと教えてもらった。
この辺りには高い建物は少なく、10mくらいありそうなあの建物が1番高いはずだ...!
「早く行こっ!スズネちゃ――」
スズネちゃんと共に駆け出そうと思い、あの建物を見上げると――そこには人が立っていた。
「え......?」
あんな高いとこに人が...というか――
建物の頂上に立っていた人は、外側へ踏み出し、落ち―――
ズンッ
「アンリ!?」
あの人がなんであんなことをしているのかは分からない。
――でも、助けなきゃ...!
落下してくる人影に向かい一直線に走っていき、足に力を込め――跳ねた...!!
「っ――」
落下する人影――小柄な少女に手を伸ばす...!
――長い薄紫の髪をした少女は、わたしを視界に捉えると、その金色の瞳を見開いて―――
「――うべっ!!」
――一瞬、何かにぶつかり、視界が黄色に染まったと思ったら―――
あれ!?わたしの体...!?
――わたしの体は――少女から離れ、落ちていく――!?
ドサッ!
「うぐっ!!」
背中に衝撃が走った。
――わたし、地面に落ちて......?
「アンリっ!!大丈夫!?」
スズネちゃんがすぐに駆け寄って来てくれる。
「う、うん...わたしは大じょ――」
――いや――
「――あの子は......!?」
咄嗟に体を起こす。
あんな小さな子があの高さから落下するのは無事で済まないかもしれない...!
「......えっと、あれは......大丈夫、なのかな...?」
スズネちゃんが困ったような表情で指を指している。
その指の先には―――ポヨン、ポヨンと跳ねているさっきの少女の体があった。
――――???
なにあれ???




