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空架ケル虹の彼方 -Unlimited Longing-  作者: 山並萌緩
イェソド大陸-中央都市ケントルア

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50/85

#50「夜の光」

ガララララ

「......。っと、大丈夫だ。上がってこい。」

マンホールを開け、先に外に出て周りを確認したフォルロさんが、私を引き上げてくれた。

「ありがとうございます。」

しばらく地下を移動した私たちは、ようやく地上へと戻って来た。空はすっかり暗くなっており、頭上には煙で少し陰る月が昇っている。

「遠回りついでに北の方から出たからな。この辺の駅からならシヨステ区も近いはずだ。行くぞ。」

「...あ、ちょっと待ってください。」

鞄を前で背負い直しながら呼び止める。

「ん......?どうした?」

「アンリは私が背負って行きます。」

地下で運ばれている時から、今までずっとフォルロさんはアンリを抱えていた。

「私なら大丈夫だぞ。」

「...ううん。私に背負わせてください。」

フォルロさんの体を気遣う気持ちも無いわけじゃないが、何より私がアンリを背負わなきゃダメだと思った。

それに私に取って、アンリの重さを感じることは苦にならないのだし。

「......。...わかった、任せる。」

フォルロさんが、抱えていたアンリを私の背に預けてくれる。

「...じゃあ、行くぞ。私もこの辺りは詳しいわけじゃないから、まず駅を探す。」

「はい。」

フォルロさんについて、私は薄暗い路地を歩きだした。


―――。

駅はあっさりと見つかり、私たちは路面鉄道へと乗り込んだ。

しばらく揺れを感じながら、暗い道を進む鉄道の中で過ごしていたが、外が少し明るくなる。

「......?」

もうすっかり夜だというのに、街が光っていた。

...火を焚いてる...?でも、それにしては明るすぎる気が...。

よく見たくて、席を立ち、窓に近づく。

「...おい、どうした?」

「あれ...、何であんなに明るいんですか...?」

声をかけてきたフォルロさんに問いかけで答えた。

「あぁ、そうか。南だとまだ()()は普及していないんだったな。」

「電気......。」

旅立つ前にお父さんが教えてくれた覚えがある。

北にある街では、ここ数年で電気という、火を使わずに暗がりを照らせるものが普及し始めていると教えてもらった。

だが、まさか......

「あの光......全部電気なんですか......?」

「ん、電気自体は知ってるのか。...ああ、そうだ。この辺から中央までは特に文化の伝達が早いからな。北から伝わって来た電気で夜でも明るいんだ。」

鉄道は進み続け、電気によって照らされた街へと入っていく。

「すごい――。」

――私はてっきり、電気とは火の代わりになるようなものだと思っていたが......この明るさ、まるで昼のようだ...!

...こんなにも綺麗な光――

「アンリにも見てほしいな......。」

窓から視線を外し、席にもたれて未だに目を覚さないアンリを見つめる...。

「......街の光ならノーティアにもあるはずだ、だから見せてやれるさ。......それより、アンリは本当に大丈夫なのか...?」

「......はい。...大丈夫だとは、思います...。」

「...そうか......。」

地下で運んでもらっている時にも私たちはこの話をしている。

アンリは<壮烈>のオーラを全力で使うと気を失ってしまうこと。<壮烈>のオーラを使ったはずなのにすぐに気絶せず、あんな暴走をしたのは初めて見たということ。...そして、気絶しているアンリの様子は旅立つ前の猪との戦いの後と同じように安らかな眠りのようであったこと。それらをフォルロさんには伝えた。

......きっと、あの時と同じように明日には目を覚ましてくれるはず...。

今は、そう信じるしかない。

キーーーッ

――鉄道が停車した。...駅に着いたようだ。

「...降りるぞ。アンリを背負ってやれ。」

「はい...。」

運賃を払い、鉄道を降りると――

「――。」

――光に包まれるようだった。

街並みの印象は、イニティアや南のイチリ区と似たようなものではあったが、その明るさは本当に昼と同じ――いや、それ以上に明るく感じる...!

本当にアンリに見せてあげられないのが残念だ...。

「メルカートの場所を聞いて来た。着いてこい。」

私より遅れて車両から出て来たフォルロさんが先を歩く。

どうやら、車掌の人に道を聞いていたようだ。

「...またメルカートに行くんですか?」

「ああ、ケントルア内の路面鉄道と違って、街の外に繋がる高架鉄道は乗客の管理をメルカートがやっているからな。」

「なるほど...。」

思えば、イニティアを出る時にもメルカートに寄っている。

イニティアでは、街を出た後に消息不明になってしまった時に捜索願を受理してもらえるようにという目的があったが、そういったことも含めてメルカートは街からの人の出入りを管理しているのだろう。

――そんなメルカートを目指すまでの道のりも光に包まれており、その景色を眺めながらフォルロさんについて歩いて行く。

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