#46「怒号」
「あ、アンリ...!?」
アンリが急に立ち上がったと思えば――
ズンッ
地を強く蹴り、再びあの少年へと突っ込んでいく...!
「――また?」
マズイ...!
さっき一瞬アンリを包んだ藍色...あれは、<蠱惑>のオーラだ...!あのオーラによってアンリは、進行方向を"歪曲"された...!
物理法則を捻じ曲げるほどの"歪曲"は、相当強いオーラで成り立つ。なのにまた突っ込んでしまえば今度はどうなるか...!
「無・限――」
―――!!?
アンリが口にした言葉に背筋が凍る――まさか、全力で――
「――大・爆・発...!!!」
アンリの拳は少年――から噴き出した藍色のオーラへ突き刺さった――
「......は?」
――ところからたちまちオーラを吸い始めた...!?
「くそッ――」
瞬時に少年の体が藍色のオーラで包まれる。
その時女の子は手を離され、そこに飛び込むアンリの体は、藍色をすり抜け、まっすぐ進む拳は――
ズコォォォォォン!!!
壁にめり込み、激しい爆発と共に壁や周辺のパイプを"破壊"した......!
「.........」
――アンリは!?
土煙で見えないアンリの状態を今すぐ確認しに行きたい...!!しかし、この状況に心が追いつかず、体が動かない......!!!
「オイッ!!テメェ!!!」
オーラに紛れて消えたように見えた少年が、どこからともなく現れ、すごい勢いで土煙へ突っ込んだ...!!
「アンリッッ!!!」
体が動いたっ!!そのまま走って土煙へと向かう...!
「......!スズネッ!!」
―――。
土煙の中......壊れた壁の向こうは別の通路に繋がっていた。その奥に――
「テメェ...一体誰の差金だッ!?」
さっきまでの様子が見る影もない少年と――手足をオーラで拘束されたアンリがいた...!
アンリは拘束から抜けようともがいている様子だが、あの進行方向を"歪曲"するオーラによってあの場に留められている...!
「アンリを離せッッ!!!」
全力で走る――
こうなれば切り捨ててでも......――!
鞘からその刃を見せ始めた刀は、峰が外側を――
ぐっ――いや、このまま!!
――抜刀...!!
刀は、少年の首筋目掛けて――
「邪魔するんじゃねェッッ!!!」
少年の怒号と同時に視界を一瞬、藍色で埋め尽くされる。
次の瞬間、私の刀は――目の前のフォルロさんに――!?
ガキンッ!!
フォルロさんが、私の刀を"圧縮"したオーラを纏った腕で受け止めた。
「フォルロさんッ!」
すぐ刀を納め、フォルロさんの身を案じる。
「大丈夫だ...。それよりすまねえ、お前が走り出すまで放心して動けなかった...」
フォルロさんもあの状況に圧倒され動けなかったようだ...。ひとまず安心出来たが、すぐに後ろを振り向く...!
「オイッ!誰の差金かって聞いてんだッッ!!言えッ!!」
拘束されたアンリに少年が怒声を浴びせ続けている。少年の言葉に引っかかりを覚えた気がしたが、そんなものは後だ...!アンリを......!!
「待て...!」
再び走り出そうとしたところでフォルロさんに腕を掴まれ止められる――
「邪魔しないでッ!!」
「落ち着けっ...!また突っ込んでも同じことの繰り返しだ...!」
「――ッ...!」
あの<蠱惑>のオーラ...あれになんど突っ込んでも進行方向が"歪曲"される......!だが、そうだとしてもアンリを......!!
「見ろ、あのガキ、なぜかは知らねえがアンリを問い詰めるばかりで手は出さねえ...。だから、一度落ち着け...!」
......!...確かに、あの少年はアンリを拘束して怒声を浴びせているだけだ。
「...でも...いつアンリに手を出すか...!」
「分かってる...!だから協力してアンリを助けるぞ...!」
フォルロさんには何か考えが...!?
「...どうすればいいですか...!」
何でもいい、アンリを助けられるなら何だってやってやる...!
「ああ、時間がないから簡潔に言うぞ。」
「はい...!」
「まずは、私があのガキに突っ込む、...またあのオーラが出てくるだろうが、私のスピードならギリギリで避けて撹乱出来るかもしれねえ。そこで一瞬でも隙が出来たら、お前はそこを突いてアンリを助けろ...!」
...フォルロさんのリスクが大きい......だが、迷っている場合じゃない......!
「...わかりまし――」
「フザケやがってッ!喋る気がねェなら殺すッッ!!」
「くそっ――」
ブゥン
少年がアンリに手を振り上げたと同時にフォルロさんが風を切り走り出す...!
「――あ゛!?またかよ!?邪魔すんじゃねェっつってんだろォがッッ!!!」
走り出したフォルロさんに気づいた少年が怒号を上げた。
――隙ができると信じるしか...!
アンリへ向かって全力で走り出す......!




