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空架ケル虹の彼方 -Unlimited Longing-  作者: 山並萌緩
イェソド大陸-中央都市ケントルア

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45/85

#45「少年」

ズキッ――

突如、目の前に現れた少年...。あの姿が目に入ってから、ずっと頭が痛む...。

これは、いったい...。

「――キミたち、誰?」

先ほど、女の子をわたしがいる方と逆の壁際に投げ飛ばした少年は、冷たい声でわたしたちに問いかけている。

「お前がコイツらの親玉か?」

「...質問してるのはボクなんだけど?」

フォルロさんの言葉を受け、より冷たさの増した声が響いた。

「......そうだったな。...私たちは盗まれた財布を取り返しにここへ来た。お前が誰だか知らないが、返してもらえるならすぐにでも退散させてもらう。」

「ふぅん。だからか...。――それで、この人たちから財布を盗ったのは?」

少年の声で場の空気に緊張が走る。

少年が現れてから、フォルロさんへ攻撃していた手を止め、俯きながらその場で立ち尽くしていた子供たちは、壁際にへたり込んでいる女の子を一斉に見た。――1人を除いて。

「なんだ、リース。キミかい?」

少年がしゃがみ込み、女の子と視線を合わせる。

「......ッ...!」

女の子の怯えがより一層強くなり、震え始めた。

「盗ったものは...?」

「......ぇ...?.........ぁ......。......!」

女の子は震える手で懐から財布を取り出す。

あれは、まだあの子が持ってたんだ...!

「......へぇ、1万が、1、2、3......9枚...!ずいぶん、大物を引き当てたんだね?やるじゃないか...!」

「......!......ぁ、はぃ......!」

少年の明るい声で、女の子の瞳に僅かに光が灯る。

「――でも、この状況の責任は取ってもらうよ。」

少年の明るい雰囲気は一瞬で鳴りをひそめ、すぐに冷たい声色に戻ると、女の子の首を掴み持ち上げた......!

「......ぁ!?......ぁがっ......!......ゃ...!」

「どうせまた、カリルに手伝ってもらったんだろう?しかも、足を引っ張ってつけられた...。違うかな?」

少年の視線は、子供たち――さっき1人だけ女の子から目を背けていた男の子へ向けられる。

あの男の子は、女の子と一緒に逃げてた...。

「おい!お前、やめてやれ...!」

フォルロさんが少年に声を上げたが、少年は意に介していないようで...

「――聞こえなかったかい、カリル?」

...フォルロさんを無視して、再度口を開く。

カリルと呼ばれた男の子は、ずっと目を泳がせていたが......少年に改めて問われたことで、小さく頷いた。

「やっぱりね。じゃあ、リース。キミはここまでだ。」

「...ゃ......!!......!!.......!!!」

「オイッ!!」

ズンッ!!

フォルロさんとわたしは同時に走り出していた。

少年が女の子の首を掴む力が強くなっている...!今すぐ助けないと、きっと手遅れに...!

フォルロさんよりわたしの方が少年に近い上に、背後をとっている。だから、このまま後ろから――

女の子を引き離すため、少年目掛けて突っ込んだが――一瞬、視界が()()に――と思えば、目の前にフォルロさんが現れた......!?

「わぁっ!?」

「うぉっ!?」

わたしとフォルロさんの体が衝突し、お互いの勢いが殺される。

「アンリッ!フォルロさんッ!」

地面に倒れた私たちの元へ、奥にいたスズネちゃんが駆け寄って来た。

「アンリ!大丈夫...!?」

「うん...。でも......」

起き上がりながら、少年の方を見る。...掴まれた女の子のもがきはかなり弱々しくなっていた......。

「急になんだよ?危ないだろ。」

少年の声は僅かに苛立ちを滲ませている。

「まあ、お前たちはあとだ。......さあ、リース。いくよ。」

そう言った少年の手から――()()()()()――

――ズキンッ!

頭に強い痛みが響く。

「...え......。」

「なんだ...ありゃ......。」

あれは......あれは、()()()......

――ズキンッ!!

()()()()()()()()......だけど()()()()()()()()()()()().........

――ズキンッ!!!

立ち上がった。

「あ、アンリ...!?」

――地を蹴った。

「――また?」

―――()()を拳に込めた。

無・限(アンリミテッド)――」

――――視界が黒く染まった――

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