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空架ケル虹の彼方 -Unlimited Longing-  作者: 山並萌緩
イェソド大陸-未開の森

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29/85

#29「曲がれ」

走り、跳ねる――

「アンリ!お願い!」

ズンッ

「...ぅおりゃぁあっ!!!」

アンリの"増強"された拳が私の足裏へ直撃する――。

瞬間、私の視界は一気に加速し、コウモリを目の前に捉える...!

――抜刀......!!

腰の刀を勢いよく抜き、コウモリへと――

「――ッ!」

やはりコウモリの反応速度が速い!

コウモリは私の刀の軌道をいち早く捉えたようで、軌道から外れた上へ動いた。

くっ、させるかっ!

刀を振り抜き切る前に軌道を上へずらす...が、

「...っ」

コウモリの動きは刀の軌道だけでなく間合いから外れる位置まで移動し、届かないまま私の体は落ちていく。

「スズネちゃん!」

着地した私にすぐ追いついてきたアンリが駆け寄って来る。

「まだやるよ!アンリ!」

「うん...!まかせて!」

2人で顔を見合わせるとまたすぐに走り出した。


―――。

私が思いついた方法。それはアンリの"増強"された力で私を吹き飛ばし、アンリと同等のスピードを一時的に得て、刀であのコウモリに触れて"吸着"するというものだ。

刀のリーチがある分アンリが直接狙うより捉えられる可能性は高く、なによりアンリが<壮烈>のオーラを使わないで行動出来るのでリスクが無い。

そのため何度でもあのコウモリに突っ込んでいける。

「くっ...また...!」

すでに4回目となった落下が始まる。

シュタッ

着地にも慣れてきてしまった。

「スズネちゃん!まだいける...!?」

「うん...!あのコウモリ、倒すまでやるよ...!!」

「...わかった!」

再び走りだす。

......どうしても、あと少し足りない......。

ここまでの4回の失敗、その全てがあと少し距離が足りないというものだった。

もう少し、刀が長ければ...!

そんな考えをよぎらせながらも5度目の跳躍に移る。

地を蹴り、体が宙に浮くとすぐに足裏へ強い衝撃が走った。

「ぐッ......!」

...!マズイ...。

アンリの体に負荷がかからないため、何度でも出来ると思った跳躍...。しかしあの衝撃では、()()()()()()()()()()()()()()()()......!

そうなるともう何度も失敗はできない...。なんとか早く決着を決めないと...!

そんな私の焦りを周りの景色は待ってくれず、すぐにコウモリが眼前へと飛び込んでくる。

うっ...!?......抜刀ッ!!

慌てて抜いた刀は、コウモリ目掛けて真っ直ぐと軌道を描く。――だが、やはりコウモリはそれに反応し回避の動きをとろうとする。

クソっ、もっと長く......!!

私の刀はこれまでの4度の失敗と同じく、コウモリには届かない。だが......

バサバサッバサッ

一瞬、コウモリの動きが今までより慌ただしくなった。

――今、なにか......。

体が落ちていく中、数瞬前の視界が脳裏に映し出される。

コウモリが一瞬見せたあの動き...あの瞬間の刀に違和感があった......。

コウモリを"吸着"させるため刀に纏わせていたオーラ......そのオーラが――()()()()()()()()()()()()()......!

あれは...!

お母さんにオーラの扱いを教わった時には上手く扱えなかった、<叡智>が得意とする形質変化"造形"――!

"造形"はオーラの形を自在に変化させることができる形質変化だ。私が刀にオーラを纏わせているのも刀に沿わせて"造形"しているから...。しかし、私はそれ以上の"造形"に成功したことがなかった。

だが、たった今それが成功した......!

いや、"造形"によって伸ばせたのはほんの僅かな距離なので、成功と言っていいかは分からないが...コウモリを捕らえられる可能性が上がったのは確かだ...!

刹那の思考が巡り終わり、地面に着地する。

「アンリ、もう一回...!」

「う、うん...!」

すぐに追いついてくるアンリに一声かけ、また走り出し、跳ぶ――

「――ッ!!」

足裏の衝撃が体に響く。

耐えろ...!次こそ......!

抜刀――

その瞬間、より強く"造形"を意識する。

刀の軌道はコウモリを捉え、回避の動きにも対応する。そして刀の間合いは先ほどよりも確実に伸びた......!

――だが、紙一重というところで届かない...!!

ここまで来たら、今度こそ!

着地をしてすぐ口を開く。

「アンリ!また...」

「スズネちゃん!!」

アンリの声が少し強く、一瞬怯む。

「さっき痛がってなかった...!?体、大丈夫...!?」

衝撃が体に響いた時の反応を悟られてしまったようだ...。

「大丈夫...。あと少しで届きそうなの。もう一度お願い...!」

「スズネちゃん...。無理しちゃやだよ......?」

「...っ。...うん。大丈夫だから。......絶対、次で決めてみせる...!」

「......わかった。」

アンリの表情から不安な様子は消えてくれなかったが、頷いてくれた。

これ以上アンリに心配をかける訳にはいかない...。覚悟を決めなくては...!

また走りだし、コウモリを射程に捉える。

そこで7度目の跳躍を――

「――――!!!」

ッッッ

体に明確な痛みが駆け抜けた。

が、そんなことはどうでもいい!――今!!

抜刀ッッ!!

より強く意識した"造形"は刀の長さを倍近くにするほど伸びていた。

これなら――!

何度も繰り返したコウモリとのやりとり...ヤツはまた軌道を避ける...!それに合わせて軌道を上に修正...!

刀の軌道はコウモリを捉え続けている...!長さも十分...!

刀が触れ―――

るとおもった瞬間、コウモリが急落下した...!!!

もう失敗はできない――!!

"造形"で伸ばした先端に再び意識を集中させる――

「――()()()ぇぇぇえええぇえぇぇぇッッ!!!!」

刀の先はコウモリを追うように下へと反り返り――そして、触れた――!!

ズドン

瞬時にコウモリごと反り返ったきっさきを地面に叩きつける――

「アンリっっ!!!」

口を開いた時には「ズンッ」という音が耳に届いていた。

超小型(マイクロ)()大・爆・発(エクスプロージョン)――ッッ!!!!」

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