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空架ケル虹の彼方 -Unlimited Longing-  作者: 山並萌緩
イェソド大陸-未開の森

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#28「暗闇の中で」

暗闇に薄っすらと広がる霧の中を勢いよく進む。

依然、私を背負ってくれているアンリは、私の指示により霧の発生源と思われる方向...南東方向へ走っている。

とにかくまずは見つけなくては...。

<叡智>のオーラをより集中させる。

発生源が魔獣だとすれば、そのサイズはおそらくそう大きくないはずだ。

基本的に北にでる魔獣というのは、南にある村のいずれも察知できずに通り抜けてきてしまったものがほとんどだという。そのため、大きいサイズのものが出没した例はあまり多くなく、いるとしても小型なものである可能性が高いとお母さんが言っていた。

サイズが小さいということは、その分核の位置の特定も簡単だということ...特にアンリの一撃は、<壮烈>のオーラを最小限に留めた「超小型(マイクロ)」であっても体の何処かを捉えさえすれば倒せる可能性が高い。

だから見つけさえすれば...倒せる...!

「スズネちゃん!しっかり捕まって!」

アンリの声が響く。視界の先にはここまで辿ってきていた川が見えていた。その川の目前で――

ズンッ

――視界が飛び跳ねる...!

アンリは大きく跳躍し、幅10m以上はあるであろう川を飛び越えた。

ズシャッ

「スズネちゃん!大丈夫だった!?」

着地と同時にまた走り始めたアンリが心配してくれる。

「うん!大丈夫!そのまま真っ直ぐお願い!」

「りょうかい!」

私の"知覚"の範囲には未だ何も......

――!

「アンリ!左斜め前!方向変えて!」

「おっとっと...!りょーかいっ!」

勢いよく走っていたアンリが少しよろめきながらも、すぐに方向を変えてくれる。

南東に進み続けた為か方向が少しズレていたのだろう、やや北方向にその存在を"知覚"出来た...!

「いたっ!!」

アンリが方向を変えてから数秒後、すぐに視界にとらえることの出来たその存在は――コウモリの姿をした魔獣だ...!!

「アンリっ!上の方にいるデカいコウモリ!見える!?」

「......見えた!」

体長は30cm程だろうか、魔獣としては小型だがコウモリとしては十分デカいそれをアンリも視界に捉える。

「着地は出来るからこのまま手を離して!アイツを追うよ!」

「わかった!」

アンリの手が離され、体が宙に浮く。そのまま地面に着地し、肩に掛けていた鞄を下ろして走り出す。

すでに全力で走っていたアンリは私を降ろしたことでさらにスピードを上げ、コウモリへと迫る。

あのコウモリ、どうやらこちらの存在に気付き逃げているようだ、しかもかなり速い...!でも速さならアンリの方が――

超小型(マイクロ)()大・爆・発(エクスプロージョン)!!」

<壮烈>のオーラを"解放"した激しい爆発音があたりに響いた...!

――だが、コウモリは位置を変えまだ前方を飛んでいる...!

避けられたっ!?いや、それより...!!!

「アンリッッ!!!」

より一層力強く走り、アンリの落下地点へと飛び込む。

ドスン

「うっ」

なんとかアンリを受け止められた...!

「......あ、ありがと...スズネちゃん......」

「ううん。大丈夫。それよりすぐ動けそう...?」

「うん、あと何秒か......」

しばらく待ってアンリの手足が動き出す。

「...もう大丈夫...!動けるよ!」

「...よかった...。でも、何か異常を感じたら無理はしないでね...!」

「うん...!」

やはりアンリは<壮烈>のオーラの使用により動けなくなってしまうようだ。「超小型(マイクロ)」であれば数秒の手足の硬直で済むということだったが、それは状況次第では致命的な隙になりかねない。しっかり私がフォローしないと...。

「でもどうしようスズネちゃん。あのコウモリ、わたしの全速力でも避けられちゃった。」

「...とりあえず、追おう。このまま見失うとまた見つけられなくなるかもしれない...!」

「うん、わかった...!」

2人で走り始めながら考える。

アンリはあのコウモリより速い。しかし、その動きは直線的でコウモリのあのスピードであれば軌道を読み避けることは難しくないのだろう。地上であればアンリはその反射神経で機敏に動くことが出来るが、いまヤツは空中にいる。さすがにアンリでも空中での方向の切り替えは足場がないと無理だ。

このまま追って行ったとしてもアンリ1人の力で一撃を入れると言うのは難しいだろう...。

それに数を重ねて行けば、今は何ともない様子でも<壮烈>のオーラの影響がどう出るか分からない。そうなると無闇に突っ込み続けることも出来ないから、何かあのコウモリを捉える方法を考えないと...。

......そもそもあのコウモリは今私たちから逃げているのだから、このまま離脱する...?......いや、ダメだ。今が森のどの位置かわからない以上、まだ森を抜け切るのに何日か掛かる可能性がある。その間にまたあのコウモリに認識を"歪曲"されてしまえば、今度は気づけるかわからない。やはり、ここで仕留めなくては...!

「スズネちゃん...!わたしもう一回行ってみるよ!」

私が悩んでいる様子を察してかアンリが提案する。

いや、しかし...

「ダメ...!無闇に飛び込んで<壮烈>のオーラを使い続ければ、今度は手足の硬直じゃ済まなくなるかもしれないでしょ...!!」

「......!......うん...そうだよね...。...でも、そうなるとどうしよう...?」

アンリに無闇に飛び込ませるわけにはいかない...かといってこのまま追い続けて体力をすり減らすのもマズい。

......どうにか私のオーラで"吸着"出来ないものか...。

要はあのコウモリの動きを止めることさえ出来れば、アンリの一撃は確実に決まる。だが、私のスピードではあのコウモリの避ける動きに間に合わないし、そもそもあの高さまでの跳躍をスピードを落とさずに出来るかも怪しい。

やっぱり、アンリのスピードじゃないと......。

これでは堂々巡りだ。私がアンリと同じくらいのスピードを出せれば...

「あ」

「スズネちゃん...?」

「一つ思いついた...!アンリ、あのコウモリ倒すよ!2人で!」

「!......うん!」

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