#22「冒険の始まり」
「開門!」
ギギギギギギギギギギギ
目の前の大きな門が開く。
ギルドで通行許可証を受け取ったわたしたちは早速ここ、イニティアの北門へとやってきている。
門にいた兵士の人に許可証を見せると最初は少し驚いた様子だったが、すぐに問題なく開門の準備に取り掛かってくれた。
そしてその門は今、開ききろうとしている。
「アンリちゃん、スズネちゃん...体に気をつけて頑張ってね...!」
ここまで街を案内してくれたマーノちゃんが応援の言葉を送ってくれる。
「うん!大丈夫、頑張るよ!」
「ありがとう、マーノさん。」
ドォォン
「開門完了!」
ついに門が開ききった。――この先は、わたしにとって未知の世界だ...!
「じゃあ、マーノちゃん!わたしたち行ってくるね!」
「うん...!村のみんなには2人が元気に出発できたって伝えておくから!」
村のみんなの顔が思い浮かぶ...そう、わたしたちはこれから長い間、あそこには帰れない...。それでも、今は...ただ未知の景色を早く見たいと心が昂っている!
「ありがと!マーノちゃん!行ってきまーす!!」
「行ってきます!」
スズネちゃんと2人で歩きだし、振り向きながら手を振る。
「行ってらっしゃーーい!!」
門を出てすぐの深く大きい掘りに架かった橋を渡りきるところまで手を振り合った。
そこからは、閉門し始めた音を背に地平線まで伸びている街道をまっすぐ進み始める。
「スズネちゃん...!わたしたちの冒険の始まりだね!!」
「ふふっ、そうだね。」
「頑張ろうね!」
「うん...!」
スズネちゃんとの何気ないやり取りもすごく特別なものに思える。
今わたしは、この広い世界を...見たことのないワクワクしたものを見に行ける、その一歩一歩を踏みしめているんだ。いつも通り前に進む足は、知らない世界を向いている。すごくワクワクして、胸がドキドキしてくる...!
「アンリ...嬉しいのは分かるけど歩くだけで力が入りすぎちゃってない?北に向かう前に力尽きちゃうよ?」
「あ、ホントだ!...どうしよう!?」
北へはすごく長い距離があるらしい。辿り着くにはすごく体力がいるだろう。でもわたしの体は全身から力が溢れてくる感覚を止めてはくれない。
「ふふっ、冗談だってば。ちゃんと休息をとりながら行くんだから、大丈夫」
「あ、そっか...!」
そうだった、わたしたちはこれから何日もかけて北へ向かって進んでいく。その間、何度も野営をすることになるだろう。そこでしっかり休めれば問題なしだ!
「それで今からの行動なんだけど、もう日が傾き始めてる時間だからこの先にあるはずの川に着いたら今日はそこで休もっか。」
「うん、わかった!」
初めての旅で初めての2人での野営...。やっぱり、ワクワクが止まらなくなってしまう。
「じゃあ、川に向かってしゅっぱーつ!」
「え、あ、アンリ!?走るの...!?」
胸の高鳴りに従うままに走り出してしまった。
―――。
「はぁ...はぁ...スズネちゃん!川、見えたよ!」
「はぁ.........はぁ........はぁ......はぁ......あ、アンリ、...ちょっ、ちょっと休憩......させて...」
あ。
心のままに走ったせいで、ペースのことを考えてなかった。
視界に川が現れたことにより立ち止まったわたしに追いついたスズネちゃんは、息を切らし余裕がなくなっていた。
「ご、ごめんね!スズネちゃん...!わたし夢中で...!」
「い、いいの...。楽しく...なっちゃったん、だもんね......。そ、それより...アンリ、水を貰える?」
「うん...!はいどうぞ!」
今回の旅に備えて、お父さんとお母さんに持たせてもらった鞄、そこに繋いである水筒をスズネちゃんに差し出す。
あれ?スズネちゃんお水無くなっちゃったのかな?
「ゴク...ゴク...ゴク......。っふーー。ありがとう、アンリ。生き返った...。」
「どういたしまして!スズネちゃん、ホントに大丈夫そう?」
「うん。大丈夫。今、最高の気分だから。それよりごめん、水筒の中身ほとんど無くなっちゃったから後で川で汲もっか。」
なんだかよくわからないけど、すごく元気になったみたい。よかった!
「うん!もう走ったりしないからゆっくり行こう?川はもうすぐだよ!」
「そうだね...。うん、そうしてくれると助かるかも。」
赤く染まり始めた空の下、川に向かい2人でゆっくり歩いていく。




