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空架ケル虹の彼方 -Unlimited Longing-  作者: 山並萌緩
イェソド大陸-デシデ村

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15/85

#15「誕生日パーティ」

玄関の扉から中に入ると、いろんな香りが漂ってくる。しかも一つ一つがとても食欲をそそられる美味しそうな匂いだ。

タッタッタッ

つい小走りになり、廊下を抜け、リビングへ入る。そこで目に入ったのは――

「わぁ.......!!」

机いっぱいに並べられた料理、料理、料理。文字通りのごちそうに胸が躍る。

「あら、やっと来たわね。どう?このごちそうの数。」

フフンとお母さんは得意げだ。

「すごい!すごいよ!お母さん!!」

「......え。本当にすごい...!」

あとからお父さんと一緒に入ってきたスズネちゃんも驚いている。

「お母さん、すごく張り切って作ってたみたいでね。...とはいえ作りすぎな気もするけど......。」

「何言ってるの。今日は()()なんだから、盛大にしなきゃ!それにアンリならこれくらい食べちゃえるわよね〜?」

「うん!食べる!」

「ん!じゃあアンリもスズネも手洗ってらっしゃい。そしたら早速パーティの始まりよ♪」

「はーい!!」

「うん!」

急いでスズネちゃんと手を洗いに行った。


―――。

「それじゃあ、まずは――」

「「「アンリ!誕生日おめでとう!!」」」

「――ありがとう!!!」

席に着くと、早速お母さんの合図で「おめでとう」が言い渡される。

一年に一度の生まれを祝福される日、わたしはこの日が大好きだ。実は、わたしの誕生日というのはわたしが生まれた日ではなく、わたしがスズネちゃんたちに拾われた日だ。でも、それはわたしがみんなと家族になった日ということであり、今もみんなと家族でいられることの証でもあった。...こんなに嬉しいことはない。

「アンリも今年で13ね...。月日が流れるのはあっという間だわ。」

お母さんがしみじみ言う。そう、わたしは今年で13歳になった。ひとつ上のスズネちゃんの誕生日はまだ先なので今だけ同い年になれる。何だか嬉しい。

「ま、感慨に耽るのは後ね。せっかくの料理が冷めちゃうし、早速食べましょ♪」

「うん!」

お母さんは家族全員を目の前のごちそうの山へと促した。

わたしがまず目をつけたのは...

「ふふっアンリ、これが気になっていそうね?」

わたしの視線の先、お母さんが指差したソレは、――幾重にも重なった肉の塊......ステーキの盛り合わせだった。

「お母さん...またこんなにお肉重ねて......。ていうかこんな量のお肉どこから...」

スズネちゃんが呆れながらも疑問を漏らす。

「じ・つ・は、午後に一匹猪を狩ってきました〜!」

待ってましたと言わんばかりにスズネちゃんの疑問に答えるお母さん。

「えっ。いつのまに...。」

「あなたちが屋根の上でグッスリだった間よ♪」

どうやらお母さんはわたしたちが眠っている間、お昼前辺りから夕方までの間に猪を1匹狩り、しかもこれだけの料理も作ってしまったらしい。さすがだ......!

そんなやりとりをしながら、お母さんは大きい取り皿にステーキを5枚ほど乗せて渡してくれた。

「はい、アンリ。こんなにいっぱい焼いちゃったから、遠慮せずじゃんじゃん食べてちょうだい。」

そう言うお母さんの前には、5枚取り分けてなお、何十枚と積み重なる肉の山がそびえ立っている。

「うん!いっぱい食べるよ!!」

そう答えて早速大きな肉の塊にかぶりつく。ベーコンでは味わえない野生味溢れる噛みごたえ。舌に触れる肉の皺一つ一つから肉汁が溢れ、肉の風味が口いっぱいに広がる。少し効いた塩や胡椒のピリリとした刺激も舌に心地良い。

こんなに美味しいお肉が、まだ何十枚も......!

まだ始まったばかりの幸せな時間に想いを馳せつつ、次から次へとお肉を頬張る。

「ふふっ、焦らないの。あ、それとお腹いっぱいにはなっちゃだめよ?デザートが待ってるんだから。」

「でふぁーほ......!?」

口いっぱいにお肉が詰まったまま驚きの声をあげる。こんなにいっぱいあって、デザートまで...!

机にはステーキ以外にも、具沢山なシチュー、新鮮なサラダ、カゴいっぱいのパン...。ここにさらにデザートが加わるらしい。

もう、嬉しくて楽しくてしかたなかったのに、ますます胸が躍る。

「嬉しそうにしちゃって...。私も食べようかな。」

わたしの様子を見ていたスズネちゃんもごちそうへ手をつけるようだ。

「おにふ、おいひいよ!」

「フフっ、わかったから、食べたまま喋らないの。」

「ふぁーい」

スズネちゃんに注意されてしまった。

わたしのおすすめを受けてか、スズネちゃんもステーキをお母さんから受け取る。

「うん、本当に美味しい...!」

スズネちゃんもお肉に感動したようで、目を輝かせていた。

「ほら、お父さんも食べて食べて!」

「え、エリナ、僕はこんなに...」

お母さんによって、お父さんへ分厚いステーキ3枚が乗った皿が渡される。お父さんはわたしたちの中でも少食なので、量の多さに遠慮していた。

その様子を見たわたしとスズネちゃんは、顔を見合わせると2人で笑い合ってしまう。それを見たお母さんたちも笑いだし、そんな雰囲気の中楽しいパーティは続いていった――

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