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第6話  松坂さん

 私はまだ熱があるにもかかわらずフワフワと幸福感に包まれていた。


「まかさ、サトルさんと一気に距離が縮まるとは思いませんでした。それも男女の関係なんて……

キャ!恥ずかしいよ!」


 布団を頭まで被り一人ニヤニヤしている三和子。熱がぶり返しそうだそしたらまたサトルさんに色んな事を介抱して貰おうと考えていた。


 私からあんな事やこんな事をしたなんてサトルさん私の事ビッチとか思っていませんよね私は絶対ビッチじゃありません。


 身体中をサトルさんに拭いて貰い最後には私をイカせてくれたんですよね。本当はサトルさん自身が欲しかったけどこの状況では仕方が無いのです。


 サトルさんも本調子でない筈ですから……


「うふふ、保険のつもりで自分でつけた乳房のキスマーク、本当に慌てていましたわねコレで私達の関係が強固な物になるでしょう」


「仕事帰りにまた寄ってくれると言ってましたね暫くは熱が下がらなければいいんですけど……ああ!サトルさん!まだ疼きが止まらないの……早く来て!」


一人悶々としている三和子だった。




 僕は家に戻りスーツに着替えて会社に向かった。


 しかし今の子って凄い積極的なんだな

いきなりあんな事をするしこんな事も要求するなんて、まあ熱で可笑しくなりましたって言われたらそれ迄何だけど確かに僕も熱で可笑しかったのも事実だし行為もした事も事実。


 それを全て美和さんの所為にするのも違うと思う。


「アレが置いていったアフターピルを使う時が来るなんて考えもしなかった。捨てなくて正解だった期限ギリギリだったけど大丈夫だよな今日の夜も飲ませた方がいいな保険の為だ」




 会社に行くと皆が気遣ってくれる

とくにイケメン君が世話を焼いてくれる

のでチョット引いてしまった。

 美和さんの事も伝えた変に隠して後から取り返しの出来ない誤解を招く危険性があったからだ。


 年配のゴホン!お姉様達からは暖かい目を向けられていた。休憩時間などはお姉様達から根掘り葉掘り美和さんの事を聞かれてしどろもどろの場面もあったが何とか切り抜けたようだ際どい質問ばかりしてくる。


「アンタやったんだったらキチンと責任もとりなさいよ!」

「あの子は良い子だよ私が保証するわ!

頑張れ神島!」


 最後には応援しているとビシバシと背中を叩かれて僕は身を捩ってしまった。



 丁度会社が閑散期だった事もありゆっくりと休めそうだ。多分……



 仕事を終えて会社から出ると後ろから誰かが僕に駆け寄ってくる。けど僕に用事などあるはず無いから足を止めず歩いていると、


「神島さ~ん!待ってくださ~い!」


「えっ!僕なの?」


 立ち止まって待っているとウチの会社の子だろう息を切らして駆けてくる。


「ハァハァ、ヒョロイから歩くのが遅いと舐めていたけど案外早いのね」


「顔は見た事あるけど話すの初めてだよねさり気なくディスらないで欲しんだけど。

え~と、隣の部署の美人社員さんが僕みたいな者に何の用ですか?」


「えーっ、美人社員なんなて……良く言われるわよ私!」


 何故かクネクネしだす美人社員さん少し顔が赤い。まあ事実美人だしな。


「そうなんですか?」


「神島さんアナタ三和子の所に行くんでしょう彼女から聞き出したわ、だから私も行くわ

案内よろしく!」


「はぁ、そうなんですか?

彼女何か必要なモノ言ってませんでした。その美人社員さん……」


「そんなに美人美人と言わないでよ確かに美人ではあると思うけど……あっ!御免なさい私名前言ってなかったわね

松坂メグミです!三和子と同期入社です」


「松坂さんですか僕は神島サトルです美和さんと同じ部署です」


「三和子は何も言って無かったわね」





「それではスーパーで少し買って行きましょうか」


「ですね」


「神島さんはいつから三和子と付き合ってるのですか?神島さんから告ったんですか?てかもうやっちゃったんですか!キャ!エッチ!」


 そんなに歳が離れていないのにもの凄いジェネレーションギャップがあるとは思わなかったよ……


「まず、付き合ってはいません。告ってもいません。エッチは黙秘します」


「えー!あのデカチチをしゃぶりついたんですね!羨ましいわ!」


「それも黙秘します」


「松坂さんもグイグイくるんですね」


「松坂さんもって三和子もグイグイきたんですか?」


「えっ?いや、その、違います!」


 ジト目で僕を見る松坂さんに見透かされている様です。


「今の子って肉食系?」


「ぷっ!神島さんまだ肉食系なんて言う人いるんだ!神島さん今いくつなんですか?

十年前の流行りですよ!」


「えっ!そうなんですか?僕は二十八歳ですよもう直ぐアラサーですねオッサンかな?」


「二十八歳なんですか?もう入社五年のベテランですね」


「いや僕は大学院卒だからまだ入って三年ですよ」


「うひょー!大学院卒のエリートじゃないですか!三和子より私と付き合いましょうよ神島さん!」


「美和さんとも付き合って無いですから」


「身体だけの付き合いなら私も参加しても良いですよね三和子はただのチチデカですので私のテクニックで必ず沼りますよ」


 路上でヤバい事を言い出すなよ皆んなこっち見てんだろ!と口に出して言いたかった。



「あっ!あそこのスーパーで買い物しましょうよ松坂さん!」


 僕は話を逸らした松坂さんのペースでは危険だからだ。これ以上の面倒事は避けなければならない僕はただグレ子とゆっくり過ごしたいだけなのに……


「うふっ、了解です」


 松坂さんは僕の左腕に自分の右腕をからめてくる勿論の事彼女の柔らかい部位の感触が僕の腕に伝わると僕の鼓動が早くなる。


「あの松坂さん僕の腕に当たっているんですが……」


「えっ?オッパイですか?」


「えっ!オッパイって……」


「私こう見えても着痩せするタイプなんです後で見てくださいね!チュッ!」


 エアーキッスだ完全に遊ばれている。


「二人で腕を組んで歩いていると目を付けた新入社員をラブホに誘うゲス上司やクズ先輩みたいですね」


「なっ!また大きな声で!」


「あっ!そうだサトル君三和子のお見舞いの後でラブホにいきましょうよ良いでしょうクズ先輩」


 ぐっ、クズ認定されてしまったわい!

しかし、サトル君なんてコミュ力すげーな。


「分かってますよ襲ったのは三和子でしょうあの子一途過ぎるからこのチャンスを逃したく無かったんだわ」


 へぇ松坂さんそこ迄分析が出来るんだ

ただのゴリ押しビッチ、いや大変優秀なお方でした。


 一瞬睨まれた気がしたけどスーパーに入った。


 多分美和さんは寝ているだけだからおじやでも作ってやれば良いか、ついでにスポーツドリンクと健康ドリンクとプリンだな。


「松坂さんお酒はまだ早いですよ」


「サトル君私達が飲むのよ三和子には飲ませないわ。おつまみ用の惣菜も買ったし行きましょうか

ラブホへ」


「えっ?」


 周りの人達も僕達を見る買い物途中のオバさん達がカートを止めて僕達をみている。


「松坂さん!」


「あ、御免なさい!三和子のお見舞いだったわね」


 エヘッペロと小さく舌を出すあざとさは絶対にビッチだ松坂さん。


 僕達はそそくさとスーパーを出て美和さんの部屋に向かった。







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