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第3話 噂話

 あの日からイケメン先輩からは話しかけて来なくなった。ただ嫌な視線を感じる様になった。気の所為かもしれないけど……


「神島さんおはようございます!今日もいい天気で仕事日和ですね」


「仕事日和?ああそうだね仕事日和だね」


 神島さんとは少しずつだが確実に会話が出来ていると思う。


「神島さん日程が決まりましたよ決戦は金曜日です」


「へ~良く古い歌しっているね」


「カラオケの定番じゃ無いですか」


「そうなんだ……」


 会話が続かないよ。


「そうだ神島さん連絡先教えてくれませんか?ナインでも大丈夫です」


「ナインはスマホに入っていないし当日に伝えてくれればいいよ」


「それって絶対来ない奴ですよね」


「そんな事ないと思う……そうだ僕は奢るって言ったよね一万出すからイケメン君と行ってくるといいよお互い気心も知れているしお似合いのカップルだと思うよ是非そうしてくれると僕も嬉しいよ。もう直ぐ始業時間だその前にチョット席を外すよ」


 あっ!神島さん!絶対逃げたそれよりあのチャラいのとは絶対嫌だ!


 全然相手にされない三和子のほっぺがぷくっと膨れた。





 う~ん何かが可笑しい私を見る目がいつもと違う気のせいでは無いと思う。特に女性社員からの視線を感じるわ嫌な視線を……


「と言う感じなんですよ」


「そうなんだ僕には分からないな」


 私は神島さんにどんな些細な事まで話掛ける様にしている。出ないと彼との会話が直ぐに終わってしまうから会社の事や私のプライベートの事巷での流行りカフェなど何でもかんでも話し掛ける様に心掛けています。


 ウザイ女と思われてるかもしれませんがそれでもああとかうんとかで終わらせたくはないのです。


「何なのかチョット聞いてみるよ」


 やった!私は余りにもの嬉しさでその場でコサックダンスを踊りそうになりましたがここはぐっと我慢。私は満面の笑顔で神島さんにありがとうございますと言ったのです。


 ルンルン気分で有頂天になっていたのでしょうか危うく朝一の大事な仕事を忘れる所でした。

エヘッ!



 僕は空いた時間を使い社内の女性達のメールを送った。アンケートなどで彼女達の率直な意見を参考に仕事に取り入れているのだ。

 

 勿論謝礼も出している。有名スーパーのクーポンや割引券、偶にある無料の食事券などだ僕にはこれが手一杯だけど手軽さが相手に気を遣わせないし結構好評だ質問内容は簡素で手間を掛けないよう注意している。


 噂の内容、いつ頃誰から聞いたか、の二点だけ有力な情報には上位から謝礼を選んで貰う事にしている秘密は厳守だ。


 直ぐに結果は出た。


 池面いけおもて君だ皆んなからはイケメンと呼ばれているけどどうでもいい事だ

 

僕は早速イケメン君とコンタクトを取った。


「いや、悪いね貴重な休憩時間をもらって

直ぐに終わる話だから」


「何ですか急に滅多に話もしないのに」


「そうだね僕も悪いと思っているよ」


 イケメン君は怪訝な顔で僕を見る。


「絶対思って無いでしょう」


うんそうだねその通りだよ。


「アハハハ……君でしょう美和さんの噂流しているの」


 真顔になり僕を睨みつけるイケメン君

おー怖い怖い。


「いやね、勿体無いと思ってね君が優秀なのは僕も知っているし上司達も期待している。多分だけど君が直ぐに出世すると思うよマジでね」


「えっ俺が……」


「そう、入社時にやらかした時はヤバいかなと思ったけど君は頑張って実績を積み重ね評価を上げた。だから当然の結果だよね。だから勿体無いって思ってね」


 色々と考えているのだろう窓の外をじっと見つめるイケメン君。マジイケメンだよな僕は悔しく無い筈。


「そんな君が社内の女子社員如きで潰れるのはね勿体無いだろう?」


 イケメン君は目を見開いた。


 く~、カッケいいなイケメンって奴は。


「君なら会社のトップまで行けるでしょうそうしたら上の次元の女性とも巡り逢う事もあるんでないの?」


 おっー!腐った魚の目に光が!


「出世街道の入り口に立っているのに足元の小石達に足を掬われてふり出しに迄転げ堕ちるのはあっと言う間だよ多分だけど元には戻れない」


 暫くの間無言で僕を見ていたイケメン君は決心したようだ。


「俺、美和に謝るよ」


「いや、何もしない方がいいと思う彼女だって誰か知らないんだから勿論僕も言わないよ変に謝って周りに誤解を招く恐れもあるしね」


「ありがとうございます神島さん」


「いいって!上司に成ったら僕を虐めないでよ。ゴメンネ時間を取らせて」


「いいえ、感謝してますよ」




 ふう、一件落着かこれで貸し借りなしだな。でも彼女になんて言おう犯人はイケメン君で僕が言い聞かせたって……絶対信じないよな僕も何もしない方がいいんだろうな噂の元は消したんだから。


「週末に食事か……それも女性と……考えるだけで憂鬱だ……吐きそう……」


 次の日


「おはようございます神島さん!」


「ああおはよー」


「なんか元気無いですね」


「そんな事ないよー」


 今日も彼女は朝からグイグイとやってくる僕の平穏なひと時が……


「いえ、私には分かります!」


 うぇ!何で分かるのよ、こぇーよ!とは口に出せない。


「私の危機感知センサーがビンビン鳴って居るんですだから神島さんスマホを出して下さい」


 何だよ危機感知センサーって?


「えっ?なんで」


 むすっとした美和さんが黙って手を出す


「えっ?」


 更に僕の目の前に手を出す美和さんの無言の圧が堪りません。


「早く出してください!」


「えっ!チンコですか?」


「何処のハーレム女子高生ですか!神島さんセクハラですよ!」


「御免なさい美和さん」


 顔を赤くする美和さん不覚にもチョット可愛いと思ってしまった。


「スマホですよ!スマホ!」


「はい!」


 つい勢いで渡してしまった。全く美人の威圧には逆らえないって本当なんだな。


「ふう、全く……」


 無言で僕のスマホを突き返す美和さんの目が怖い。


「えっ?」


「ロック解除して下さい」


「あい」


 僕はスマホのパスコードを入力する。あ、美和さんの前だった見られたな。パスコードは全てゼロで打ち込んだのを見逃してくれなかったようだ美和さんの口角が上がっていた。


 彼女は僕のスマホを取り上げると何かのアプリをダウンロードしてメチャクチャ早い指捌きで設定して行く。


「すげ~や」


 僕が感心していると入力が終わったようだ。


「ナインを入れておきました。私のメールアドレスと電話番号もマップも登録しておきましたのでいつでも何処でも直ぐに私に連絡が出来ます」


 なんか凄く嬉しそうだな美和さん。やり切ったのか充実感がある。


「後ナインの使い方なんですが」


 なっ!美和さんは恋人同士のように僕の背中から抱きつきスマホを持つ僕の手の上から彼女の手が重なるそして僕の耳元に囁くようにアプリの使い方を教えてくれるのだ。


「神島さん……」


 美和さんの感触とほのかな甘い香りが……


「美和さんの吐息がゾクゾクするんですが」


「ハァハァハァ」


「聞いちゃいない!」


 僕の背中の肩甲骨の下辺りに制服を押し上げる双丘が押し当てられ美和さんのが潰れているのがハッキリ分かった。


 不味い不味い不味い!いくら女嫌いな僕でも男の本能が……立ってしまったよ防御力無さすぎだよ僕は!


「美和さん美和さん皆んなが出勤してくるから早く退けて!美和さん!!」


「はっ?あーっ!御免なさい!」


「大丈夫だから落ち着いて皆んな来るから

離れてね美和さん」


「はっはい!」


 ふう、セーフだな暫く席から立てないけど

大丈夫だ……多分。



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