第2話 朝のコーヒー
神島さんは誰よりも早く出社して定時で帰宅する女の子の猫ちゃんが待っているからと言っていた。
「神島さんおはようございます!」
「ああ美和さんかおはよう」
会話が続かないいつもそうだ神島さんから話しかけてきてくれるのは業務の事だけそれも手短で的確な指示をしてくれるので私としてはありがたいけれどもっと神島さんとお話がしたい。
最近は私も出社を早くして一秒でも長く神島さんと一緒にいたいと思う様になってきた。
「神島さんコーヒーです」
「あ、ありがとうそこに置いてください」
「ここに置いておきます冷めないうちに飲んでくださいね」
「ん、ありがとう」
でも彼は私の入れたコーヒーは口も付けてくれない。
ある日私は年配の女子社員さんに彼の事を聞いてみた。
「ああ、彼ね他人の作った物や飲み物は口に出来ないのよ」
「えっ、なんでですか?」
「噂によると前の彼女に盛られたそうよそれ以来かな女性からの物は一切口をつけないわ」
「でも私毎日神島さんにコーヒーをお出ししてますけどその様な事は」
「貴方に気を遣っているかもね」
「えっ?」
「もしかしたらだけど」
先輩はニッコリと微笑んだ。
私に気を遣っている?それが本当なら切り口を変えてあげれば……兎に角明日神島さんに聞いてみよう
「神島さんおはようございます!」
「おはよう美和さん」
「昨日先輩から聞いたのですけど神島さんは女性からの物は口に出来ないそうですね」
一瞬彼の顔が強張って目が泳ぐのを見逃さなかった。
「済まない其れは本当だ。もっと早く伝えれば良かった申し訳ない」
神島さんは立ち上がり深く頭を下げて私に謝罪をした。
私は自分の頬が緩むのを感じたのだ。
自分でもズルい女と思ったけど口にしてしまった。
「それじゃ今度私と食事に行きましょうよ」
「……ああ分かった僕が奢るよ」
「本当ですか!約束ですよ!すっぽかしたら私本気で泣きますからね!」
「……約束する」
やったー!神島さんとお食事デートだ!
お洋服も買わなくちゃ美容院にも予約しなくちゃ
あー何から手をつければ分からないわ!
「だけど僕はその辺の事とても疎いんだよ
だから美和さんが決めてくれないかな」
「分かりました!私に任せて下さい!」
うひょ~!一気に神島さんと近くなったよ、私頑張れ!
翌朝
私、頑張り過ぎて寝不足だよ。
「おはようございます神島さん」
「美和さんおはよう」
最近は神島さんの態度が少し軟化した様な気もします!良きかな良きかな。
「美和さん今度の金曜日皆んなで呑みに行かない?」
お昼に同じ部署のイケメン先輩が誘って来た。見えすいた下心が見え見えの下衆な誘い方だ。
私が渋っていると神島さんが珍しく声を掛けて来た。
「折角だから参加して見れば美和さん」
「神島さんは行くのですか?」
「僕はそれ程呑めないからパスさせて貰うよいつもだけどね」
ハハハと笑いながら部屋を出る神島さん
思わず私も行こうとするといきなり腕を掴まれた振り返ると呑みに誘っていたイケメン先輩だった。
「何するんですか!」
「まだ返事を聞いてない」
「ふざけないでください!貴方とはどこも行きません!」
言ってしまった。
先輩に対して暴言を吐いてしまった。
コレで私もこの会社での立場は最悪になるな退職も考えないと……
「糞あの女皆んなの前でこの僕に恥をかかせやがってそのまま済むと思うなよ!」
イケメン先輩の姑息な歪んだ裏の顔が美和の後ろ姿を付け狙う。