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09.元総理

20xx/06/13 16:00

「ここが、今の中尾の居場所よ。監視が張り付いてるからいつでも乗り込めるわ」


元顧問を訪問した翌日、トレーニングルームで汗をかいていた俺は由香里の知らせを聞いていた。


「直接乗り込むのかよ。松風のところとくらべて随分強引なんだな」

「そらそうよ。元総理への伝手はないし。何より松風の死亡、将司くんを捕らえようとしていた包囲網は制圧され逃げられた。それによって防衛庁は激おこ。もうね、どんどん突き進むしかないって状況よ」

「なるほどね」


タオルで汗を拭きながらそのままシャワー室まで足を向ける。


「おい。ついてきてんじゃねーよ」

「あら、背中でも流してあげるわ」

「風呂じゃねんだよ。まったく・・・すぐに戻る。行くんだろ?」

「まあね」


ため息をつきながら手早くシャワーで汗を落とし、戦闘服に袖を通していく。

乗り込むのは鹿児島県の別荘地だとか。そんなところもポータルで一瞬だっていうだから科学の発展は目覚ましいもんだ。防衛隊にいた時は何も思っていなかったが、さすがにこれを、公的でもない組織が各地に持っているのに呆れてしまう。


次々に出現した各地のダンジョン。大小含めれば相当数あった。

その中には、誰もいない山奥のものもあれば、都市部で出現して犠牲者も少なくない。それらの遺族と面会して、引き込めそうな面々は引き込んでいったという。相当数の能力者を仲間に、今の設備を作り出したという。

アジトは各地のポータルにつながっているだけで、どこにあるかは一部の人間しか知らないようだ。どっかの山奥の地中なのかもしれない。まあそんなことはどうでも良いことだ。


そう思いながらもいつもの4人と運転手の山田の車に乗り込んだ。


高速道路を少し走れば目的となった霧島の別荘へ到着した。今回は包囲網などもなかった様だ。当時の顧問が殺されたというのに、危機感が薄いようだと呆れていた。

大きく開いた窓からは、元総理大臣、中尾みどりの他に、息子夫婦と思われる男女そして子供たちが走り回っていた。


「いきましょう!」


由香里の合図とともに車を降り、玄関から中に入っていく4人。


その別荘の持ち主たちは、突然入ってきた武装集団に驚き悲鳴を上げていた。


「中尾みどり・・・こっちへ来なさい」

「はやく!じゃないと無関係な人が傷つくわ!」


分かりやすい暴力装置である小銃を向け、由香里と良子が威嚇していた。

一歩も動けなくなる面々に、仕方なく小銃を上に向け一発発射する良子。なかなか過激なことをする元OLだ。


「ひい!お義母さん呼ばれてますよ!」

「何よ!私に死ねっていうの!」


女同士の醜い争いが始まる。


「か、母さん!穏便に!穏便に済ませてくれるようにお願いしよう!あ、あなた達もそんな乱暴なことはやめましょう、ねっ。話なら聞くから・・・」


息子と思われる中年男がこちらにも言葉を投げかけてくる。

3人の子供達は母親の後ろに隠れるようにして泣きだした。

その子供達の泣き声を聞いて、その母親は義母を力強く引っ張り出すと、こちらへ突き飛ばした。


「この!鬼嫁が!」

「うっさい!散々悪いことをしてきたんだろう!その報いだ!」

「か、母さん!恵美子も!なんてことを・・・」


恵美子とよばれたその女性は、子供たちをしっかりと包み込み、もはやその息子と思われる男も敵認定して睨みつけた。


「恵美子さん、良いわね。ママさんの鏡よ。子供のためなら強くなれるものよ」


良子さんはものすごい笑顔だった。

その言葉に、恵美子さんの顔を少し和らいだようだ。

そして俺は、倒れ込んで放心している中尾みどりを引きずるように外へ連れ出し、地べたに投げ飛ばした。


「さて、もう察してるといいんだが、10年前のダンジョンの事故について知ってることを全て話せ。大事な息子を死なせたくないだろ?」

「ひっ!私は何も!何もしらない!全部アメリカが・・・リチャードがやれって言ったから!私は仕方なく・・・そう!しかたなかったのよー」


目の前の元総理にすがりつかれた俺は、松風のことを思い出しどうしてこいつらは・・・と吐き気を感じた。


時間をかけて聞き出したが、結局は当時の防衛大臣、防衛省長官などに丸投げしたため詳しくは知らないという結果に終わった。ただ、現在のダンジョン計画の本部の場所、そして黒幕はアメリカ、当時の米国防総省長官、リチャード・ハウリトンであることは分かった。


そのハウリトン、という男は俺でも知っている人物であった。なんせ現職である。最終のターゲットが決まった。が、その前に国内でやり残したことをやろう。

まずは現在の本部を消し去る。今更何をどう運営しているかは知らないが、その辺も知りたいところではあるので、このまま一気に乗り込もうと思っていたのだが、由香里がその前にすることがある、と言われ一度アジトへと戻ることになった。

結局、中尾は操り人形であったようなので、その場は見逃した。だが、当然報いは受けてもらう。それはそのうち・・・そう思いながら、車内で少しだけ眠りについた。

次回更新 06/13 21:00

お読みいただきありがとうございます。安ころもっちです。

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