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08.罠と罰

20xx/06/12 18:00

アジトからポータルに乗ると、そこはもう神奈川であった。


送られてきた松風の別荘へと車で向かう。

車内は運転手の山田と俺、+3である。


「とりあえずは私と、良子、真澄と将司くんで乗り込むわ。私たちは・・・そうね、将司くんの嫁と愛人ってことで」

「なんでだよ!」

「まあ大事な人ってことで出来れば一緒に匿ってほしいって感じで色々しゃべらせたら儲けもんよ」

「へいへい」


そして目的地まで到着すると、車から降りた俺はデカイ門に設置してあるインターフォンを押した。

暫く待っていると、スーツを着た年配の男性がその別荘の玄関を開けこちらへ向かってきた。


「お待ちしておりました。どうぞこちらへ」


促されるままに四人はその屋敷へと入っていく。途中、その男が他の3人をちらりと見ていたが、特に何かを言うわけではなかった。

そして、目的の部屋と思われるドアの前までたどり着くと「お連れしました」という声と共にノックをする。


「入れ」


男はドアを開け、4人を室内へと案内する。

部屋の中を埋め尽くす本棚と、目の前には松風という男。以前あった時とは幾分老け込んでいる印象があるのは仕方のない事であろう。実際にそれだけ年数があいているのだから。


「ご無沙汰しております」

「大きくなったな・・・まあ、掛けなさい」


松風もちらりと女たちを見たが、さほど気にする様子はなかった。


「ゆっくりしていきなさい。ここは安全だ。後ろの娘さんたちも・・・誰かは尋ねんよ」

「ありがとうございます」


背後からメイド服を着た女性がお茶の準備をしている。

由香里が背後から俺に「睡眠薬」と耳打ちをする。車内で【解析】というスキルの話を聞いていたので、きっとそのお茶にについてであろうと予想できた。


「まあ、のども乾いただろう。さあ飲みなさい」

「あ、ありがとうございます」

「いやー今日も熱い。さささ、遠慮はいらんよ」


その中身を知っているからかもしれないが、本当にこのおっさんは大根だなとため息がでてしまった。


「ところで、おじさんは八王子の研究施設の顧問をしていたとか・・・」

「なっ・・・なんのことかわからんな。まあ、私ぐらいになるとな、様々な研究施設に名前を貸したりしているからな。ちょっと心当たりがないようだ。すまんな」

「ダンジョンに飲まれ・・・そして俺のじいちゃんの死んだ研究所に・・・心当たりがないと?」

「ひっ!どこでそれを!あっ・・・」


思わず反応してしまった松風は口元を押さえてこちらを怯えた顔で見ていた。


「どうした?そんなに怯えて、きょろきょろとしているが何か待っているのか?」

「な、なんのことだか・・・」

「救助は来ない。じっくり話が聞きたいな。聞かせてくれないか?松風のおじちゃん」

「お、俺は悪くない!俺のせいじゃ、ひっ・・・ないんだ、お願いだ!ひゃー!し、信じてくれ!」


事前に配備されていた黒瑪瑙(オニキス)の別動隊が、突入するために待機していた集団を制圧していることは車内で聞いていた。

膝をすりながら俺に縋り付き、体を震わせている松風という男は怯えていた。きっとその目には、俺の背後で女性陣に叩きのめされている、先ほど案内してくれていた男を含む護衛達がなぎ倒される光景でもみているのだろう。


「知っていることを話してくれるかな?」

「わ、わかった!全部話す!協力は惜しまない!何でもする!悪いのは全て政府なんだ!俺は、俺は悪くないんだー!」


その場で殴り倒したい気持ちを押さえ、松風から知っていることを全て聞いた。


各地からその豊富な人脈を使い研究者たちを集めていた松風。日本政府、それも総理、防衛大臣、その他、関係官僚とごく一部の人間で進められたプロジェクト。

ダンジョンを生成し、永遠の資源としての魔物やアイテムを地脈の力を使って作り続ける。そして人知を超えた人の能力アップで国力を上げる。そんなバカみたいな空想上の夢物語が、実際に今起こっているのだらか信じるしかなかった。


「地脈の力とか・・・おとぎ話か!」

「俺も実際そんなバカなと思ったよ。あんたのじいさんの話を聞くまではな」

「じいちゃんが?」

「そうだ。物理学の権威として地脈の力を使えば豊かな世界が作り出せる!そう聞いた時にはついにボケたかと心配したさ」


松風がヘヘヘと苦笑いしていた。


「じゃあ、じいちゃんがこのバカみたいな施設の発案者っていいたいのか?」

「だったら良かったんだけどな。あいつはそれを平和利用しようとしか考えてなかった・・・それを今のように改悪したのは政府だよ」

「で、それを知って生きているお前は、どういう立ち位置だったんだ?」

「お、俺はなにもやってねー!むしろ被害者だ!事故の責任を取って受けてた全ての顧問契約を破棄されたんだ!その損害はとんでもないもんだ!」

「そのわりには・・・良い生活をしているようだが・・・」


空気が変わった俺にビクリとする松風。


「そ、それで全部だ・・・もう何も知らん。なんならここにずっといてもいい!支援も惜しまんよ!だからな、いいだろ。良い関係を作ろうじゃない・・・」


俺は松風の戯言をこれ以上聞く気もなく、脳天に魔道石を飛ばしていた。


「まあこんなとこかしらね」

「ああ。やっぱ日本政府か・・・」

「予想はしてたけどね。じゃあ次は・・・当時の総理大臣、中尾みどり・・・」


アジトに戻った俺は、寝付けぬ頭を無理やり停止させ、眠りについた。

次回更新 06/13 16:00

お読みいただきありがとうございます。安ころもっちです。

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