07.陰謀
20xx/06/12 12:00
遅く起きた俺は体を起こすと室内を見回した。
隣に寝ていた由香里はもういない。あんなことを言ったがあの温もりは何よりありがたかった。しかしどんな顔をしたら良いのか悩んでしまう。気恥ずかしさを感じつつ大きく伸びをした。
時刻はお昼となっていた。腹の音とともにベットから降り身支度をしたら食堂へと向かった。途中で良子と真澄につかまり、両方から腕をとられそのまま食堂へと入っていくどうやら俺は新しい遊び相手という扱いのようだと感じた。
「カツカレー一択だぜ!」
「いーえ!みそラーメンを食べるべきです!」
俺の食事をめぐってバトルが始まっているようだ。それを横目で眺めながら、券売機からサバ味噌定食を見つけ注文した。
「あっ、なんで勝手に注文してんの?」
「将司さんって結構おっさんよね」
二人に不毛な文句を言われつつも出てきた定食を平らげた。二人が頼んだそれぞれのものを見て、次はどっちか頼んでみよう。そう思っていた。
食事を終え、お腹を休ませるためにその場で黄昏ていた俺のもとに、由香里がやってきた。
「今日の予定がきまったわ」
一緒に部屋に戻ると詳しい話を聞いてみた。
「松風直樹って知ってる?」
「うーん。知らんな」
「あなたのおじい様のお知り合いなのよ。良く家にも出入りしていたとか。元々おじい様をあの研究所に引き込んだのも彼」
「ん?じいちゃんのとこに?松風・・・松風・・・ああ!いたわ。何度かあった。あの髭面の奴」
「髭面かどうかは知らないけど、その男がね、まだ生きてるのよ」
「おお。それで?」
俺の回答に「ハー」とため息をついて腰に手を当てる由香里。隣にいた真澄も真似をして腰に手をあてため息をついた。お前わかってないだろう。
「彼も施設の全容を知っていた。でもまだ生きてる。ってことは、でしょ」
「ああそうか!その松風ってやつも政府側ってことか!それで・・・どうすんだ?」
由香里はスマホを取り出し操作すると、俺に渡す。画面には松風と名前が付けてあった番号が表示されていた。
「将司くんにはこの番号にかけて、おじい様の件で詳しく聞きたいって連絡をしてほしいの。あくまでも何も知らなかったからって体でね」
「なるほどね。でも俺指名手配されてるだろ?即通報されるかもよ?」
「その時はその時よ。その場合はどのみち強行策で行くしかないし」
「なるほどね。まあ架けるだけ架けてみるか」
俺はその番号をタップして電話を掛ける。
すぐに「どちらさんかな?」と声がしたので「阿久津です」と名乗ってみた。
「あ、阿久津くん!将司くんか?」
「はい、そうです。ご無沙汰しています」
「いやー懐かしいというのは別にして・・・大変だったな」
「いえ、まあ大変になっているのはご存じなんですよね」
「ああ。でも分かってる!大丈夫だ!心配するな。今どこにいる。腹は減ってないか。安心しろかくまってやる。するに来なさい。場所はこの番号に位置情報を送ればいいのか?ちょうど隠れるのに良さそうな別荘に来ているんだ。すぐにでも来なさい」
俺は「分かりました」と伝え、夕方に伺うことを約束した。
「どう思う?」
「まああの反応なら十中八九罠かな?でも行かない選択肢はないわ。殺してでも情報を頂く。今度はこの四人で向かう。サポート班は外に待機させとくけどね」
「わかった」
乗り込むのは夕方18時。少しの高揚感を感じつつ時間が来るのを待っていた。
◆◇◆◇◆
同刻
「ええ、あの阿久津の・・・夕方に、えっ?まずは家に入れるんですか?はい。分かりました。じゃあ・・・絶対に万全の態勢で頼みますよ!」
男はスマホの通話を切ると、ため息を漏らした。
「やはり、俺のところまでたどり着けるものなんだな・・・まあいい。あとは防衛隊の精鋭たちがなんとかしてくれるだろう。精々油断させてみせよう。おい!だれか!」
「茶に薬でも入れようか」そんなことを考えながら、時間が来るをの持ちどおしく胸を高鳴らせている男が、将司を待ち構えていた。
次回更新 06/12 18:00
お読みいただきありがとうございます。安ころもっちです。
下の☆☆☆☆☆を押してい頂けると嬉しいです!
もちろんブクマやコメント、レビューなどもいただけると飛び上がって喜びます。