17.最凶
20xx/06/16 09:00
「さて・・・行きますか・・・」
これで終わりと思うと少しだけ物寂しさを感じるが、今日で全てが終わる。まあ終わらなくても一区切りはつくだろう。
そう思って俺は車から降りると、リチャード・ハウリトンが待ち構えているというその建物に乗り込んだ。
入り口が自動で開き、一本道の通路を抜けるとそこには巨大な鉄の扉があった。
それは堅牢にみえたが、俺たちが到着してすぐに開き出すことを思えば、行く手を阻む障害ということではなかった様だ。
そしてその扉を抜けると、目の前のだだっ広い部屋の中には、メカメカしい魔物が10体。そしてその中央には男が一人、何やら物々しい外殻を装着してたたずんでいた。
「米兵でも待ち構えているかと思ったら・・・あんた一人なんだな」
「待ちくたびれましたよ。眠れる夜を過ごしたのは久しぶりです。あっ、これ、日本語翻訳機を通してしゃべってますが・・・ちゃんと通じてますかね?」
余裕のあるその態度に少しだけイラついた。
「私たちもずいぶん舐められたもんね!そのおもちゃ達でお遊びにでも興じたいってところかしら?」
「おもちゃ扱いするな!これは私が作り上げた最高傑作!私の血と涙の集大成だ!」
由香里の言葉に激怒するハウリトン。
「あんたの血と涙なんて一滴も流してないくせに!よく言うよ。ロボット大戦でもするつもり?受けて立つけど?嵌め殺ししてやるよ!」
「やだ。真澄ちゃんも嵌めるだなんて破廉恥だわ。私も混ぜてー!」
「おい!真澄も良子さんも、まじめにやってくれ!」
俺の苦言に舌を出す二人。どうやら緊張はしていないようだ。
「もう空気の読めないコントは終わったか?」
「まあ、な!」
ハウリトンの言葉に俺は間髪入れずに魔道石を飛ばしていた。そして同時に強化ワイヤーも操作し、10本の鋭い先がその目の前の男に切り裂こうと向かっていった。
しかし、その男はその場を動かず左手を前にあげるだけ。そして魔道石と強化ワイヤーは見えない壁にはじかれ俺の手元へと戻ってきた。
「これは【堅牢】と魔道盾という魔具を併合して作成された技術です。何人たりとも私のことを傷つけることはできません」
「そうかよ!」
かなり困惑したが、俺は魔道石と強化ワイヤーを操作しながら、とにかく手数で勝負しようと攻撃の手を止めないよう心掛けた。
しかし。、次の瞬間3体のメカがこちらへと襲い掛かってきたころから、慌ててその場から離脱していた。
頬からは冷や汗が噴き出てくる。その動きが早すぎるのだ。
「【俊敏】でしたっけ?便利ですよね。思わず10体とも標準装備してしまいました」
「私のまねしてんじゃねー!」
真澄は細かなステップで動きながら動き出した3体のメカ達を小銃で攻撃していた。だがそれもまた光の壁に阻まれ、真澄に向かってさらなる追撃が向けられていた。
かろうじて躱し続けている真澄。
由香里が援護射撃をするが、動いていなかった2体が由香里に向かって素早い動きで体当たりしていく。
「ここは私が!」
良子が由香里の間に入り込み、魔道盾を構えてロボからの攻撃を耐えていた。
まずはロボから順に攻略していかなければ全滅してしまう。そう思って俺は魔道石を一点集中で近くのロボの頭に飛ばした。一瞬光の壁に勢いを殺されるが、すぐにぶち抜きそのまま頭を破壊していく。そしてそいつはそのまま動きを止めた。
「なっ!なんという破壊力!その武具はかなり強力なようですね・・・せっかくの私の下部が・・・まあいいでしょう」
そう言うと、残り全てが動き出し今まで真澄と良子たちに向かっていたものもすべてが俺の方に向けて突っ込んできた。
「うわっ!ちょっ!」
叫びながら躱していく俺。こういう時は本当に【空間把握】というスキルはチートだと感じる。周りのすべてが手に取るようにわかる。僅かな動きや空気の流れ、それを感じながら強化された体を存分に動かしていく。
そして今回持ってきた新兵器を腰から引き抜くと、すれ違いざまにロボの手足を一つ、また一つと切り落としていく。
「ずるいよ!将司ばっかり!」
そう言いながら一瞬でこちらに飛び込んできたのは真澄だ。俺と同じように手には強化ブレードを持っている。超高速振動を起こして物質を切り裂く高性能なダガーであった、結局、真澄が参戦してから1分も立たない間に10体全てを活動停止に追いやることができた。
「いよっしゃー!全機撃沈!オールクリアー!」
「まだクリアじゃないわよ」
「はっ!そうだった!」
はしゃぐ真澄につっこむ由香里。
「私も燃えてきちゃったわ!」
良子はすでに背中に背負っていたはずの強化バズーカを、自分の肩にしっかりと固定して発射した。
強化された爆撃がハウリトンの元へ飛来する。
そしてそのハウリトンは、手を前に突き出すと、大きな爆音と共にその弾丸は弾けて煙を上げていた。
「なんと・・・なんということだ・・・」
バズーカ砲を光の壁で防いだハウリトンは、ぶるぶると震えながら下を向いていた。どうやら自慢のメカが全損したことに悔しさをにじませているようだ。
「すばらしい!なんという技術!そうか!【俊敏】はあそこまで制御できるものなのか!【空間把握】はあのような使い方が・・・アップデートをしなければ・・・これは革命がおこるぞ!私の中で・・・なーに、すぐに新たな可能性が!きっとこれは新たな試練!なんとしてもこの技術を磨きあげなければ!むしろここで知れたのはまさに珠玉の運命!」
何やら呟きだしたハウリトンに、どうやら悔しかったという事ではなかったのだと恐怖すら感じていた俺は、良子が放った第2射、第3射を見送っていた。
こちらを見ようとせずにぶつぶつと思考を続けながら左手を突き出し、また光の壁により完全にシャットアウトされてしまう。
「もう少し・・・もう少しだけお待ちを・・・うん、確かに【空間把握】と【解析】の組み合わせはいいですね・・・」
まったく活路を見いだせていない女性陣は顔をしかめながら隙を伺っていた。
「何かやる前に仕掛けるぞ!真澄!」
「あ、そうだな!」
二人がハウリトンに駆け出す。先にたどり着いた真澄が強化ブレードをハウリトンに振りかぶる。直後に手を上げ出現した光の壁に打ち付ける。ガチっとした音と共に光は割れ、ハウリトンに向かっていったその刃先を、しゅるりと躱していくハウリトン。
それに合わせて追撃に参加した俺の攻撃もするりするりと躱されてしまった。
「なるほど。確かにこれはいい!思ったように体が動く」
「うるせーよ!」
俺は徐々に上がってくる恐怖心を打ち消すように両手に強化ブレードを持ち躱すハウリトンを切りつけ続けた。途中から魔道石の攻撃も追加したのだがことごとく躱され続けていく。
先ほど心が折れ掛け立ち止まっていた真澄も、少し遅れて再度参戦して・・・俺はぎょっとしてしまった。真澄があの光源遮断装置・・・つまりはサングラスをしていたのだから・・・
途端に爆炎とともに激しい光が発せられる。
激しく悲鳴を上げてしまったのは、もちろん俺。そしてハウリトンであった。
そもそも照明弾と俺の【空間把握】は相性が悪い。一度使ってそれを感じていたのだが、真澄にはそのことは伝えていいなかった。それをこの場でやってのけたのはゲーマーとしての感なのか。
俺は光の中でスキルの恩恵をまったく得られなくなり背後に飛んで転がるように戦線から離脱した。
「ぎゃーーー!」
まだ回復しきっていない視界に、ハウリトンのものと思われる悲鳴が聞こえてきた。
これは?やったのか?思わずフラグになりそうなことを心に思ってしまったが、ほぼ回復した視界の先には、胸に強化ブレードが深く刺さり血を流しているハウリトンであった。
どくどくと流れ出ていく血液を眺めながら、ガッツポースでこちらに笑顔を見せる真澄を見ていた。
「おい。一言だけ言わせてもらえば、突然あれを使うとか・・・ないわ」
なんとなく悔しくて発した俺の言葉に、真澄は動きを止めて表情を硬くしていた。
「いやーまさかこんなに効果があるなんてね・・・とりあえずポケットさぐってたら出てきたからホイってね・・・」
「くっ・・・こいつは、まあ助かったのは確かだ。よくやってくれたよ」
どうやら偶然だった攻撃が功を奏してラスボスを打ち取った真澄は、褒められたことに再び笑顔で騒ぎ始めた。
「はあ・・・真澄にあれを渡しておいた私も褒めてほしいもんだわ」
そう言いながら俺の肩に頭を預けてくる由香里に、俺は「世話になったな」そう言って明後日の方を向いていた。
なんとも言えない空気の中、すでに事切れたリチャード・ハウリトンを確認するとその場を後にした。
「とりあえず一区切り・・・か」
次回更新 06/16 12:00
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