16.決戦前夜
20xx/06/15 22:00
「なぜこない・・・」
科学の髄を尽くした堅牢な一室。
米国防総省長官・リチャード・ハウリトンはがっかりとため息をついた。
衛星からの防衛システムにより、黒瑪瑙のメンバーの居場所は把握していた。
てっきり国防総省を落とした後は、そのままこちらに向かってくるものと予想していた。しかし奴らはそのまま近くに停留しているようだった。なんとも残念極まりない。
こうも自信たっぷりなのは、もちろん万全の準備で迎えているからに他ならない。
日本での膨大な魔物から送られる実践データの数々。生成された武具の能力。・・・そしてスキルを持った全員分の戦闘データまでもが全て本部経由でここに送り込まれている。
これこそが、リチャード・ハウリトンの悲願。このデータをもってして世界を統べる。それがこの男の夢であった。
魔物から送られるデータにより最適化されていくAIによるオートメーションな戦闘行動。それを刷り込み、さらにはその動きに合わせた体躯にカスタマイズする。当然武具についても最適なものを作り出し惜しみなく装備させた。
そこにスキルによる能力値データも上乗せさせた。そんな最強無敵のAIロボが10体。この広いスペースに並べられている。
そして、自らもスキルデータを反映させ、あらゆる行動も可能とした体を手に入れた。もちろんそんな動きに体がついていくはずがない。そこはパワードスーツのような外殻を着込んでいたのだ。
他ならぬ黒瑪瑙で研究開発された戦闘服。それを元にさらに強化した一点物の外装を・・・
自分は無敵だ。やつらはまた4人でつっこんでくるだろう。特にその中の三人は最強の能力の持ち主だ!そして乗り込んできた4人を全て完璧に打ち滅ぼせば、もう憂いはない。洗練されたスキル保持者に完勝する。これこそが自らの夢のスタートラインだ!
そう思って心を躍らせ待ち望んでいた彼は・・・一向に訪れないその待ち人に失意に枯れ、枕を濡らすのであった。
「早く実践テストがしたい・・・」
◆◇◆◇◆
同刻
「明日が8時を過ぎたらここを出るわ。今日はゆっくり体を休めておいて」
由香里の言葉に俺は軽く返事をしてベットへと潜り込んでいた。
狭い一室には俺と由香里、そして真澄に良子までいる。拠点の一室ということでスペースがないのはわかるのだが、やはり少し気まずい。
女性陣のベットに背を向け、目をつぶる。
ベットがきしみ既視感を覚え、振り返る。
「おい・・・何をやっている」
「あら。緊張をほぐそうと思ったのよ」
「ふざけてる場合か。真澄たちもいるのに」
「そうね。だから・・・」
そっと俺の口元に柔らかいものが触れる。
すぐに離れた唇に、温かい吐息がかかる。すぐにまた唇を合わせれる位置にある由香里の顔を、少しだけ戸惑いながら見つめていた。
「あら、意外と動じないのね」
「いや、結構動揺している俺は・・・まあなんだ。早く寝ろ」
少しだけ上気する顔を隠すように再び背を向け布団にくるまる。
「全部終わったら・・・真剣に考えてくれるかしら・・・」
「終わったらな・・・」
俺は耳元に呟かれた言葉にドキリとしてしまうが、悟られないように小さく返答した。
次回更新 06/16 09:00
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