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01.重要任務

一週間、お付き合いよろしくお願いいたします。

長いのこの話だけという・・・

20xx/06/10 12:00

「ふう。北海道とはいえ、あっついな」


俺、阿久津将司(あくつまさし)は今、仲間と共に北海道の山中に来ていた。

何故かと言われると返答に困る、単純に仕事だからだ。


この世界には、いや、この日本には各地にダンジョンがある。


北海道、福島、東京、大阪、香川、熊本。

これら6つの中心にそのダンジョンが突如現れたのが10年前。それからあちこちに小さなダンジョンと思われるものが出現し、そこから魔物があふれるという世界になった。


最初は東京、八王子。高尾山のふもとに何かの研究施設のあった場所に突如入り口が出現し、そしてその施設すべてを飲み込んだらしい。


そして主要6か所に同じような入り口が出現し、日本政府は別途研究されていた防衛システムによりその入り口の周りを隔離、這い出る魔物と呼ばれる怪物たちを迎撃していた。


そして海外からの援助などもあり、その翌年には能力チップと呼ばれる信じられない現象を起こすチップも開発、実用化された。

手のひらにそれを乗せると体に吸収され、その者の持っている潜在能力を引き出し、特殊なスキルを発現するという何とも非科学的なものだったが、当時の科学技術の髄を集めて作られたものらしい。なんとも凄い世界になったものだ。


阿久津将司(あくつまさし)はごく普通の家庭に生まれ、12の時にこのダンジョン出現騒動で大混乱した中、翌年のチップ吸収で【空間把握】という固有スキルが発現し、めでたく防衛隊という国の防衛に関する任務にあたる公務員となった。


ダンジョン騒動から10年。22になった俺は、防衛隊の第17班の隊長として新たな任務のために、北海道の山奥まで仲間を連れてやってきた。

防衛隊の主な仕事は不穏な輩の排除。ダンジョン産の強力な武具を使い、強盗や殺人を犯している犯罪集団の確保などとなる。


今回のターゲットは、北海道に拠点をかまえる『黒瑪瑙(オニキス)』という組織の幹部を確保するというものであった。依頼書に記載された罪状は国家転覆を企む組織とだけ記されている。

将司は今回の任務に不審なものを感じていた。


職業柄、毎日のニュースは細かくチェックしている。だが黒瑪瑙(オニキス)なんて組織名は一度たりとも聞いたことがない。そしていつもは細かく罪状が描いている依頼書には、簡素な内容・・・

この、最優先捕獲ターゲットというのが宮城由香里(みやぎゆかり)というのだが、生死は問わずと見慣れない文字も記載されていた。

そこに後ろめたい何かを感じでこの任務に臨んでいた。


「隊長!何難しいこと考えてんすか!直子ちゃんのことっすか?うまくいってないんですかねー」

「おい!冗談でもいって良いことと悪いことがあるぞ!」

「っと。そんな本気で怒らなくてもいいじゃないっすか!もー隊長はほんと愛しのフィアンセ様の事になると冗談通じないんすから。怖い怖い」

「ちっ」


周りは笑い声に包まれた。

今バカなことをほざいていたのは副長の吉田拓雄(よしだたくお)。【怪力】スキル持ちのバカ力の脳筋野郎だ。隊員服に長剣と小手を装着した武闘派である。高校の同級生でもあり、俺の婚約者、天音直子(あまねなおこ)とも知った顔だ。

今回は吉田の他に、田中と石井というベストメンバーを連れての任務となった。


「しかし・・・この黒瑪瑙(オニキス)って組織は本当につぶさなきゃいけない組織なのか?」

「何いってんっすか。国家転覆って書いてあるじゃないっすか。俺らはただこれに従ってつぶして回ればいいんっすよ」

「そりゃーそうなんだがな」


何も考えていない吉田に呆れつつも、少し考えすぎかと改めて思い直す。

まもなく本拠地に乗り込む時間だ。気合を入れなおしその足に力を入れ、ターゲットの建物に突入した。


その山小屋のような施設へ入ると、3名ほどの若い女性が待ち構えていた。

どうやらこの任務の情報は漏れていたようだ。まあそんなことはどうでもいい。そう思って俺は自分の武器である魔道石を握り締める。ダンジョン産の小さな石で、今では魔力と呼ばれるようになった気力のようなものを籠めると自由に操作することができる武器。

4つまとめて手に握る。俺の固有スキルの【空間把握】を利用することで、その魔道石はそれぞれの女の足元へ飛んで行く。まずは動きを封じたらいい。そう思って狙った太もも付近であったが、女たちは軽々と躱しながらこちらにそれぞれの武器らしい何かをこちらに向けていた。


「いきなり攻撃なんて・・・せっかちなんだね」


中央の赤髪の女が話しかけてきた。


「まあ、機動力をつぶしてから二三聞きたいこともあってな。そんな綺麗に躱されるとは思ってなかった、よっ!」


今度はその女に向けて4つまとめて飛ばしてみた。しかしそれは両端の二人が出現させた大きな盾により防がれてた。驚きを隠せない俺は、ジッと女たちを見つめていた。

この魔道石は分厚い鉄もぶち抜くほどの威力を持っていた。それがあんなに容易く弾かれるとは・・・しかし驚いてばかりもいられない。まずは行動不能にして・・・それから少し話を聞けばいい。そう思って再度魔道石を飛ばす。


またも防がれた魔道石ではあるが、今度はそれに合わせて吉田が手に持ったごつい長剣を横なぎにしていった。二人力を合わせ防ぐ女達であったが、その勢いを止められず、真横に仲良く吹っ飛んでいた。

壁に背中を打ち付け、せき込む女達。そこに田中が【俊足】で近づきナイフを突きつけ、女たちの動きを制する。しかし吉田はそれを良しとせず動き出していた。


「死ねーーー!」


気合と共に中央の女をめがけて振り下ろされる吉田の攻撃を、俺は4発全弾使った魔道石で横に反らしていく。

床に打ち付けられた長剣でガキンと大きな音がした。


「早まるなよ吉田!」

「何するっすか!今回は生死問わずって任務だったじゃないっすか!」

「それでも無駄に殺すこともないだろ!少し話をする。その後移送だ!待機してろ!」


隊長権限で吉田を下がらせる。


「じゃあ、話してもらおうか?何を企てて俺らが出張ることになったかを・・・」


窓の明かりに照らされ、座り込んだ中央の赤髪の女は、今回の最重要人物である宮城由香里(みやぎゆかり)であった。


「何も・・・」

「何もしてないなら俺らに声はかからんよ」

「悪いことは何もしてないわよ。むしろ悪いことをしてるのは・・・あなた達のボスの方・・・かしらね」

「ほお、詳しく聞きたいもんだね」


そういう俺の言葉に、目の前の女はニッと口を緩ませ話はじめようとしたのだが・・・


「ぐっ・・・お前、何を・・・」


俺は背後からの痛みにとっさに体を前に飛び振り返った。


「隊長ー余計なことは任務には不要っすよ?だまってこいつら殺して帰ればいい。そういう任務っすから・・・」


吉田は長剣に滴った俺の血を一振りして落とすとまたこちらに対して身構えた。


「そういう、ことかよ・・・」


この任務の違和感が、やはり間違っていないことを感じながら吉田を見ていた。

田中と石井は、オロオロとしながら俺と吉田を見ていた。


「まずはお前を止めなくちゃな」


俺は4発全てを発射し、吉田を集中砲火していった。前後左右から繰り出す魔道石を長剣で弾いていく吉田。弾いてはいるのだが徐々に被弾するようになってきた吉田は叫ぶ。


「おい!田中も石井も。何やってんだ!早くあいつを何とかしろ!じゃないとお前らも明日から指名手配の仲間入りだ!」

「何いってるんですか!隊長ですよ?なんで争わなきゃならないんですか!」

「そうですよ!それに隊長にかなうわけないじゃないですか!」


二人の当然の声に吉田は唾を飛ばしながら怒鳴っていた。


「うっせーな!これは国から言われた最重要任務なんだよ!ここをつぶして!俺はさらに上に行く!邪魔者は全て排除していいとお墨付きだ!うぐっ!が、わかったら石井!あれ使え!早くっ!ぐっ!」


俺の攻撃に被弾しながら石井に指示を出す吉田。

俺はそれが何なのか分からなかったが、きっと俺の知らない何かを吉田が渡していたのかもしれない。そう思った俺は石井にターゲットを絞り、魔道石への意識を緩めつつ腰のナイフを抜いて石井に迫っていった。

もちろん殺す気はないが、動きは止めておきたい。そして石井へ迫ったその時、腰のポーチから取り出されたそれは、俺と石井の間で光を放って爆発した。


「うっぐ・・・」


痛みで気絶しそうであった。

吹き飛ばされた俺は、女たちから少し離れた場所に飛ばされ這いつくばった。どうやらもうしばらくは動けそうにない。


「よくやった」


吉田はそう言って二人を見た。

至近距離で爆風で受け、半身になって倒れているた石井と、頭の一部がそがれて中身が出てしまって倒れている田中の姿を・・・


「これで・・・手柄は俺ひとりのものだ・・・」


そしてまた切りかかろうとする吉田の長剣を、俺は最後の気力で動かした魔道石で弾き飛ばした。そしてその攻撃は吉田の腕にも被弾し、貫通していく。悲鳴と共に距離をとった吉田は、憎悪に染まった眼でこちらを見ていた。


「やってくれたっすね・・・まだ動けたとはやっぱり隊長は・・・でももういいっす!今日のところはここで引き揚げます!これで隊長は今日から犯罪者の仲間入り・・・あっそうだ!直子ちゃんは俺っちがちゃんと慰めておいてあげますからね・・・」

「何いってんだ!おい!くそっ!」


吉田が舌なめずりをしながらその小屋を出ていくのを、叫びながら見逃してしまった俺は・・・薄れゆく意識の中で、直子の笑顔と、そして苦痛に歪む顔を想像していた。



その日の夜には将司は黒瑪瑙(オニキス)という名と共『に殺人、および国家反逆罪』の凶悪犯として指名手配となった。そのことは即座にニュースで告げられ、過激なまとめサイトなどには、瞬く間に犯罪者として個人情報が拡散。赤い悪魔と呼ばれた男の非日常な1週間の悪足掻きが始まる。


次回更新 06/10 16:00

お読みいただきありがとうございます。安ころもっちです。

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もちろんブクマやコメント、レビューなどもいただけると飛び上がって喜びます。


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