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1章 17話 ロディー・アフロディアの出発

第一章エピローグになります。



二人が旅に出発した後、アタシは半壊した家で必要なものを整理し、ショルダーバッグに詰め込んだ。

魔術ギルドの紋章が入ったショルダーバッグ、空間魔法が施されていて、見た目以上に何でも入るギルド支給品のバッグだ。


「これと、これも。これも必要ね」


このバッグはルシェにあげたかったんだけど、流石に支給品をあげるわけにはいかない。

双翼の聖魔杖(ラプンツェル)は統和ちゃんにあげちゃったけど、ルシェにはそれ以上に色々なものをあげれたと思うし、色々なものをもらった。


「可愛い子には旅をさせろ・・・」


ふと言葉を呟くと、二人の笑った顔が思い浮かんだ。


「さてと!」


荷造りを終えたアタシは、半壊した家を眺めた。

色々な思い出が蘇ってくる。


「ふふふ」


思わず笑いが込み上げてきてた。


「アタシが思い出し笑いなんてね」


そして、アタシは思い出の家に手を掲げた。


炎柱フレイムピラー


チロチロと小さな炎が掌から離れていき、家の中に吸い込まれていく。

ゴウゥゥゥッ!!!と音を立てて、巨大な火柱が上がった。

バチバチと音を立てながら崩れていく家を見た瞬間、走馬灯のように様々な思い出が頭を駆け巡った。


眠ったままのルシェがここに連れてこられたあの日、そして眠りから覚めた日。

子育てなんてしたことのないアタシが、「なんでこんなことを?」と思いながらも、「これも研究の為」と自分に言い聞かし必死に育てた。

まるで娘のように思うようになったのはいつからだろう。

そして、異世界から来たという謎の少年、天狐のテン。


「色々あったわね」


気が付くと、アタシ達の家は灰になっていた。

その瞬間、風が吹いた。

風は灰を天に巻き上げ、キラキラと空に霧散していき、聞き覚えのあるような声が響いた。

幻聴かもしれないけど、それは確かに聞こえた気がしたわ。



----ありがとう----



その声はルシェとそっくりな声だった。

聞きなれたルシェの声、でもどこか違う。

落ち着いていて、優しい声。

一体、誰の声かしらね。


「どういたしまして」


アタシは空に向かってそう呟き、迷いの森へと足を運んだ。





身体強化などは使わず、えっちらおっちらとゆっくり歩いて来たもんだから時間がかかってしまったわ。

辺りはもう闇一面、目の前にはいつか見た迷いの森の光景。

ここの精霊に喧嘩を売るような真似をして、それでもアタシは見逃され、今に至る。

一歩踏み出した瞬間、目の前にはいつぞやの精霊が音もなく現れた。


「相変わらずとんでもない美しさね。嫉妬するわ」


「いつぞやのハールエルフ。また森で暴れようとでも?」


目の前の精霊はそう言うと、フワリと笑った。


「まさか。報告よ報告」


そう言ってアタシはパタパタと手を揺らした。


「相変わらず、精霊に対しての物言いじゃないですね。殺されたいのですか?」


「トーワちゃんからこの森の立ち入りを許すって伝言を聞いてるけど?」


そう言うと、精霊は音もなくスゥゥーと近寄ってきた。


「・・・・」


精霊は無言でアタシを見つめてきた。

表情はない。

アタシはため息を吐きながら、膝を付こうとした。


「よいです」


精霊は膝を付こうとしたアタシを手で制し、深々と頭を下げた。


「ルシェリィ様を守って頂き、本当にありがとうございました」


そう礼を言い、深々と頭を下げたのだった。


「ちょ!ちょっとタンマ!精霊様が何エルフに頭を下げてるのよ!しかもアタシはハーフエルフ!極めつけにはオカマよ!?」


思わずを面を食らって素が出てしまった。

今のは流石に失礼だったかしら・・・。

そうなことを思うと精霊は楽しそうに笑った。


「ふふふ、オカマは関係ないのでは?」


「へぇ、精霊もそんな風に笑うのね」


「あなたは精霊をなんだと思ってるのですか?と、それより、ルシェリィ様、トーワ様、あとテンの姿が見えませんが?」


「トーワとルシェなら冒険者になって世界を見て回る為に旅に出たわ。勿論、テンも一緒にね。アタシの元からは卒業といった所かしら。だから報告に来たのよ」


そう伝えると、精霊はまた静かに笑った。


「そうですか。では手を」


「手?」


そう思いながらも目の前の精霊に手を差し出すと、精霊はアタシの手に触れて、聞いたこともないような言葉で何かを呟いた。

そしてその瞬間、アタシと精霊は森の中にいた。

まるで、巨大な生き物の胃袋の中のような、鬱蒼とした森だ。


「転移・・・魔法・・・」


この世界では禁忌とされている魔法。

そして、魔術ギルドが安全に使用できるように、何百年も研究している魔法。

まさか、目の当たりにし、実際に体験できるとはね。

地中に吸い込まれ、別の空間を移動しているかのような感覚だったわ。


「ええ、そうです」


やはりこの精霊の力はデタラメね。

あの時、喧嘩を吹っかけなくてよかったわ。

この精霊は、どうあがいても人が勝てる存在ではないわね。

そして、もう一つ違和感を感じた。

周りの木々達から微量な魔力が発せられている。


「まさか、この森の木々って・・・。トレント?しかもかなり高位なトレントね」


そう尋ねると、精霊は嬉しそうに答えてくれた。


「その通りです。慧眼、というべきか。良い目を持ってますね。アナタを監視者にして正解でした。ルシェリィ様やトーワ様と出会ったのも偶然ではなく必然だったのでしょう」


精霊は、髪の毛を1本抜くとスゥっと地面に落とした。

髪の毛はトレントの根が張り廻った地面に吸い込まれると、ボコボコと隆起し、形を成していき、あっという間に大きな丸テーブルと3つの椅子が出来上がった。


「さぁ、どうぞ」


「あ、ありがとう。凄い魔法ね。とても便利そうだわ」


「魔法ではないですよ。私の髪を養分にし、トレントが用意してるのです。可愛い子たちでしょ?」


精霊はこんな事もできるのね。

当然といえば当然よね。

精霊は自然と共に生きる存在。

そして、エルフも自然と共に、森と共に生きる種族。

こんなトレント達だったら可愛いというのも頷けるわ。


「えぇ、とっても可愛いわね。とこで椅子が3つあるのだけれど、もう一人誰かいるのかしら?」


ここにいるのはアタシと精霊のみ、なのに椅子が3つ・・・。

精霊がもう一人いる?


「そうですね、紹介しなくてはですね。エルナ」


エルナ、そう名前を呼ぶと丸テーブルの上に魔力が集まり、3~4歳児くらいの小さな女の子が姿を現した。

独特な暗い藍色の民族衣装を身を纏い、長く美しい黒髪、紅色の目、そして背中にはドラゴンのような翼が生えていた。

この民族衣装は極東の国の衣装に似ているわね。

そして内包する魔力がとんでもない。

この子も精霊か。


「もう!エルナ!机の上に乗ってはいけません!」


小さな精霊は「めんどくさ・・・」という表情で不満そうな顔をしながら椅子に座った。


「さぁ、エルナ。自己紹介を」


そう告げられると、小さな精霊は椅子に立ち上がり、ジトッとした目をこちらに向けてきた。


どんなに小さくても精霊だわ。

一応、こちらから名乗りましょう。


「こんにちは。アタシはハーフエルフ。名をロディー・アフロディア。ロディーナて呼んでくれると嬉しいわ」


小さな精霊はコクリと偉そうに頷くと、アタシの鞄を指さして言った。


「まずその鞄の中に入ってるお菓子を・・・」



スパァァァァン!!!



精霊が小さな精霊の頭を引っぱたいたのだ。

しかし、小さな精霊は意にも返していない。

叩かれた衝撃で頭は傾いているが・・・。


せ、精霊ってこんなふざけたような事するのね・・・。

意外だわ・・・。


「エルナ、自己紹介です。はぁ・・・そうですね。まずは私からですね」


精霊はスッと立ち上がり、脳を痺れさせ、聞き惚れてしまうな美しい声で告げた。


「精霊サーヴァリルと申します。過去、ルシェリィ様のお母さま、ルアシェイア様の家臣を務めていました。今はこの森の守護精霊です。ふふ、リルと呼ぶことを許します」


あっけに取られてしまった。

開いた口が塞がらないとはこの事だわ・・・。

精霊に名を名乗られ、ましてや愛称呼びを許される。

これは相手を対等と認めた場合、もしくは格上、要するに契約者のみに許される事。

頭が真っ白になった。


「さぁ、エルナ」


小さな精霊は面倒くさそうに自己紹介を始めた。


「エルナ。トーワの契約精霊。トーワは私のもの」


エルナという精霊は再度頭を叩かれていた。

精霊がこんなにあたたかい存在だったなんて、この年まで知らなかったわ。

いいえ、普通のエルフなら生涯知ることなく、その命を終えるでしょうね。

これも、ルシェとトーワのおかげね。

アタシは大きく息を吸い込んだ。


「全く人生っていうものは何が起こるか分からないものだわ!白龍の娘に龍族の少年!?そして今アタシは精霊に名の名乗られ、愛称呼びまで許可される!!人生っていうのはなんて面白おかしくて素晴らしいのかしら!!」


気づいたらアタシは大声で笑っていた。

お腹がよじれる程笑ったわ。

リルとエルナはそんなアタシをポカンとした顔で見つめてた。

そしてアタシはバッグからお菓子やおつまみ、酒や果実水などを取り出し、丸テーブルにどんどん並べていった。


「そう、アタシはこの為にここへ来た。弟子達が巣立ち、アナタから得た役目も終えた。森へ立ち入る許可も貰えたと聞いたし、最後にやることは1つだわ」


そういうとアタシは最後の酒瓶を「ドンッ!」と置いた。


「今日は飲むわよ!リル!エルナ!」


その日の迷いの森は、笑い声、泣き声が朝まで響き渡った。


「最高の夜ね!!」





翌朝、アタシは迷いの森の入口で二人の精霊に見送られていた。



「楽しかったわ!リル!エルナ!」


「ええ、本当に!ロディーナ!」


二人は意気投合をしたのか、がっしりと握手を交わしていた。


「これからどうするの?例の魔術ギルドに戻るわけ?」


「んなバカな。アタシね、オカマバーを開こうと思って」


「オカマバー?」


「ええ。なんでも、トーワちゃんの世界には店員がオカマで、お酒を飲む酒場があったらしいわ。一部ではとても人気があったらしいわよ。オカマ達の居場所を作ろうと思ってね」


「いいわね、それ。ロディーナと飲むお酒は最高に楽しいわ。自信を持っていいわよ!精霊様が太鼓判を教えあげるわ!」


「なら成功間違いなしね!」


まだ酔っている二人はそんなやり取りをして、再度硬い握手を交わした。

ちなみにエルナはサーヴァリルに抱っこされ寝ている。


「じゃあ、またね!リル!」


「ええ、また!ロディーナ!」



こうしてロディー・アフロディアは迷いの森を後にし、自由都市リバテイルへと向かったのだった。

そして、とある名のあるハーフエルフが魔術ギルドから姿を消し、オカマバーなるオカマだらけの酒場を開き、オカマの星と呼ばれるのはまだ先のお話・・・。



1章 完

これにて、第一章は完結です。


ここまでお付き合いくださり、本当にありがとうございました。


二章からは、物語が大きく動き出します。

第一章で積み重ねてきたものが、ようやく形になっていく章です。


二章も引き続き書いていきますので、

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