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10話 再びサーヴァリルの元へ

 現在、俺とルシェは精霊の森へ向かっている。

 森までの道は何もない田舎道といった感じだろうか。

 何もないといってもゴツゴツした岩山があったり、遠くに山が見えり、ちらほらと林や森があったりする。

 人の手が加わっていない土地といった感じだ。


 エルナとサーヴァリルに会うのは久しぶりだ。

 元気だろうか。

 レイク達に頼んだお菓子も持って来てるので、きっと喜んでくれるに違いない。

 あの2人は飴を気に入っていたからな。

 ルシェもいるので、エルナとは是非仲良くしてもらいたいところだ。


 ちなみにレイク達が持ってきてくれたお菓子は、飴と焼き菓子だ。

 なんでも商業都市プロスペリアにある有名な菓子店のものらしい。

 カラフルで大玉の飴と可愛いクッキーのような菓子だ。


 商業国家プロスペリアとはこの南西大陸にある国の1つで、自由国家リバテイル、商業国家プロスペリア、ノーレッジ魔法王国、この3つがこの大陸にある国だ。

 3国同盟を結んでいる国であり、それぞれ特色が強い国となっている。

 自由国家リバテイルは冒険者ギルドの本部があり、レイク達が活動の拠点としている国だ。

 わざわざプロスペリアまで買い付けに行ってくれたのだろうか。

 それとも、この世界にもお取り寄せみたいなものがあるのだろうか。

 

 なんにせよ、俺も少し食べてみたが有名菓子店とだけあって美味しかった。

 ドライフルーツのようなものが練りこまれて焼かれたクッキーで、味も元いた世界で食べたのと比べても遜色ない。

 これなら喜んでくれるだろう。

 飴は普通の飴だった。


 修行の方も上手くいっている。 

 極彩鳥討伐から約3ヶ月が経過したが、この3ヶ月で俺の魔術の腕はかなり上達した。

 あれで自信が付いたからなのか分からないが、1つ壁を乗り越えられたような感じだ。


 ロディーナから与えられた2年の修行期間。

 この調子なら魔女の一撃(ウィッチーズ・ブロウ)双撃魔術(デュアルマジック)もなんとか習得できそうな気がする。

 ロディーナが師として優秀だというのもあるだろうが、やはり自信というのは大事だ。


 そして、魔女の一撃(ウィッチーズ・ブロウ)を練習していた副産物で、新しい魔法を1つ覚える事ができた。

 電撃麻痺(パラライズ・ショット)という魔法だ。

 名前はロディーナが付けてくれた。


 この魔法は指向性のある弱い電撃を相手に向かって放つ技だ。

 魔女の一撃(ウィッチーズ・ブロウ)を練習している最中に、龍魔によって制御を乱され偶然できた魔法である。

 龍魔と通常魔力の混合魔法とでもいうべきか。

 よってロディーナはこの魔法を使えない。


 雷撃魔法は高威力の攻撃魔法だ。

 威力を落とし、麻痺程度に抑えて放つというのが非常に難しい。

 難しいというかロディーナすらできないのだから、恐らく不可能に近いのかもしれない。

 そこで龍魔を使う。

 最近、自分でも分かってきた事だが、通常魔力と龍魔というのは非常に相性が悪い。

 反発したり、龍魔が魔力を食ってしまうのだ。

 それを逆手に取って放つのが電撃麻痺(パラライズ・ショット)だ。

 もっと龍魔を使いこなせれば、相手の魔術を無効化したり跳ね返したりできるかもしれない。


 ちなみに同じような麻痺系統の魔法で大気振動(ショックウェーブ)というのがあるが、それよりも遥かに使い勝手が良い。

 大気振動(ショックウェーブ)はどうしても範囲攻撃になってしまうからだ。

 個に対して放つこともでき、発動スピードも速く、相手を殺さずに確実に制圧できる魔法は俺としても嬉しい。

 

 だって殺すの怖いじゃん?

 俺は元々平和主義なんだ。

 魔物ならまだしも人は殺したくない。

 冒険者になる以上、対人戦も覚悟せよとロディーナに口酸っぱく言われてるが、できれば穏便に済ませたいよね。



---



「いいなぁ。そのビリビリ」


 先ほどから、魔物に出会う度に電撃麻痺(パラライズ・ショット)で撃退していたらルシェに羨ましがられた。

 特に殺す必要もないので、1発お見舞いすると逃げていく。

 魔物も電撃は苦手らしい。

 非常に便利な魔法だ。


「まぁね。でも、ルシェは身体強化があるんだからいいじゃん」

「あたしもカッコいい魔法使いたいよ」


 ルシェは龍魔のせいで魔法が下手くそだ。

 それでも、毎日毎日文句を言わず黙々と練習をしている為、初級の魔法程度なら使えるようになってきた。

 努力の賜物だ。

 

 ルシェは魔力量が桁違いに多いとロディーナが言っていた。

 才能はあるはずなんだし、いつか使えるようになるだろう。

 魔力量に関しては俺もかなり多いようだが、桁違いというほどではない。

 ロディーナ曰く、「アタシとどっこいね」だそうだ。

 それでも、双翼の魔術師と謳われているロディーナと同程度の魔力量なんだから、恵まれているんだろう。


「ルシェ、ちょっと走ろうか。多分歩いてると半日以上かかちゃうから着くのが夜になると思う」


 前に森から監視者の塔まで歩いた時、恐らく時間にして10時間以上はかかった。

 日が登り始めてから出発して、到着したのが夜だったからな。


「いいよ!競争する?」

「えぇ・・・勝てるわけないじゃん・・・」


 単純に『走る』という事ならルシェはロディーナより速い。

 いやマジで速い。

 まるでミサイルのように疾走する。

 龍魔による身体強化がどれだけチートか分かる。


 ずっちーなぁ・・・・・・。

 なんて考えてると。


「よーーーい」

「え、マジで競争するの?」

「どん!!」


 弾丸のように駆け出すルシェ。

 クッソはぇぇ。

 慌てて追いかけるも、少しずつ離されていくのが分かる。


「ふふん♪」


 振り返り余裕の笑みを向けられる。

 こんにゃろう・・・。

 手抜いてやがるな。

 いや、本気で走られたら絶対追いつけないのでありがたいが。

 

 8歳の女児に手を抜かれてありがたがる俺・・・。


 悪いがここは背中に張り付かせてもらおう。

 そう、スリップストリームだ。

 原理とかよく分からないが、とにかくスリップストリームだ。

 後ろに張り付くと、なんかいい感じに走れるらしいアレだ。

 原理はちっとも分からないが、スリップストリームったらスリップストリームなのだ。

 更に俺には得意の風魔術がある。

 後ろに向かって思いっきりぶっ放せば、それなりに加速するだろう。

 

 あ、勝ったなこれ。


 そう思った。

 自分でも口元が釣り上がるのが分かった。

 ニヤリって感じだ。

 そして、後ろに向かって思いっきり風魔術をぶっ放した。


-ボファァァァァ-


「ハッハー!!油断したな小娘!」


 風魔術によって一気に加速された俺の体は、いとも簡単にルシェの前へと踊り出た。


「あっ!!魔法ずるいよ!!」

「バカめ!勝てばいいのだ勝てばってあれちょっと待って、ハヤスギィィィィ!!」


 盲点だった。

 スピードが出すぎて足の回転がついていかない。

 これはアレだ。

 運動会で久々に気合いを入れて走ったお父さんが転んじゃう現象だ。


 結果、俺は盛大にコケた。

 コケたというより、あまりのスピードにそのまま30mほど転げ回った。


「大丈夫?トーワ」

「うん・・・」

「痛い?」

「うん・・・」


 心がね。

 女児相手に卑怯な手を使って、結果このような醜態を晒し、あまつさえ心配される始末。

 

 くっ・・・策士策に溺れるって感じか・・・。


「よし、ルシェリィさん。普通に走ろう」

「そうだね」


 とりあえず普通に走る事にした。

 転んじゃうから。



 しばらくすると森が見えてきた。

 あの森を抜けて、湖の先にあるのが精霊の森だ。

 迷いの森、帰らずの森と言われている不可侵領域。

 冒険者が来るのはこの手前の森までだ。

 奥の森へは絶対に近づかない。


「ルシェは森に行った事はないんだよね?」

「ないよ。町にだって行ったことないもん。お師さんがまだダメだって」


 あれ?以前ロディーナが、ルシェを連れて両親が住んでいた町に行った事があると言ってたけど覚えてないんだろうか。

 まぁ幼少期の記憶なんてそんなもんか。

 俺もよく覚えてないしな。


 森に入ると以前見た大蛇がいた。

 デッドスネークという魔物らしい。

 全身が白く、双頭の大蛇だ。

 体長は10mほどだろうか。

 

 森の魔物は段違いに強い。

 B級冒険者パーティーでも遅れをとる事があるらしい。

 ビーストウィングも森に行く時は入念に準備をすると言っていたくらいだ。

 油断はできない。


「ルシェ、森の魔物と戦闘になったら俺がやるから。ルシェは下がってて」

「えぇ~」


 ルシェは強いが何かあったら困る。

 ロディーナに顔向けできない。

 そう思ってたのも束の間、デッドスネークがこちらに気付いた。

 そして、チロチロと舌を出し、巨大な双頭の鎌首をググッと持ち上げた。


-シャァァァ-


「ルシェ、一度距離を取ろう!」

「うん!」


 相手の強さが分からない以上、迂闊に近寄れない。

 きっとやられる時は一瞬だ。

 この世界では人の命など簡単に散るのだ。

 

 そう思い距離を取った瞬間、デッドスネークが双頭から真っ二つに裂けた。


「なっ!?」


 え!何が起こった!?

 別の魔物の仕業か!?

 デッドスネークを一撃で葬れる強さの魔物が他にいるって事なのか!?


「トーワ!あそこ!」


 ルシェがデッドスネークの後方を指差した。

 デカい狼のような魔物がこちらへ向かってきている。

 かなり速い。

 あいつがやったのか?

 そして、その魔物の背中から何かが飛び出し、物凄い勢いで俺に飛び込んで来た。


「うげっ・・・ってエルナ!?」


 漆黒の長い髪に真紅の瞳。

 藍色で丈の短い花柄の着物を着付けており、帯は少しくすんだ黄土色。

 まるで闇落ちした座敷わらしのような見た目・・・。

 あぁ、間違いない、エルナだ。


「エルナ!迎えに来てくれたのか!?よく分かったね!」


 エルナは俺にガッシリとしがみついている。

 しょうがないのでそのまま抱っこしてやった。


「久しぶりだね。元気にしてた?」


 コクコクと頷くエルナの頭を撫でると、嬉しそうに目を細めた。


「ルシェ、前に話した妖精のエルナだよ」

「ふ~ん、ちっちゃいんだね!あたしの方がお姉さんだ!」


 そういえば体の大きさは成長してないな。

 妖精だと大きさは成長しないんだろうか。

 相変わらず3歳程度の子供にしか見えない。


「違う」


 おや?

 今エルナ喋ったか?


「エルナ喋れるようになったの?」


 サーヴァリルが言葉を教えたのかな?

 妖精や精霊の言葉は人間の耳には聞こえないって言ってたしな。


「凄いじゃないかエルナ!頑張って勉強したのかな?で、違うって何が?」

「精霊」

「精霊?妖精じゃなくて精霊って事?」


 コクコクと頷くエルナ。

 あれ・・・。

 サーヴァリルはエルナは妖精だって言ってなかったか?

 進化でもしたんだろうか。

 というか妖精と精霊の違いが分からん。

 分かるのは、相変わらずエルナは可愛いって事だ。


「トーワトーワ!凄いよ!毛がモフモフだよ!」


 エルナに気を取られていると、先ほどこちらに向かってきていた狼のような魔物をルシェが撫で回していた。

 体長は2m強だろうか。

 金色の長い毛並みでどちらといえば狐っぽい気がする。

 エルナのペットだろうか・・・。

 背中に乗ってきたっぽいし・・・。


「エルナ、この魔物は?」

「魔物じゃない。天狐」

「テンコ?」


 コクリと頷くエルナ。

 あまりお喋りは得意じゃないんだろうか。

 言葉がまだちょっとたどたどしい感じだ。

 

 しかし、テンコとはどういう獣なんだろうか。

 魔物じゃないって事だし。テンコって天狐?

 それならなんか凄そうな獣な気がするけど・・・。

 天に狐とか・・・もしかして神獣とかじゃないよね・・・?

 そうするとサーヴァリルのペットとかかな。

 元々あの森は不可侵領域みたいだし、サーヴァリルの縄張りでもあるし、そういうのが住み着いててもおかしくないのかな?


「まぁエルナが乗ってきたっぽいし、危険はなさそうだね」

「乗れるの!?あたしも乗りたい!」


 そんなルシェの言葉に天狐はスッと体勢を低くした。


「やった!」

「人の言葉が分かるのか・・・。すごいな・・・」


 てかそんな簡単に乗せちゃうんだ。

 サーヴァリルに調教でもされてるのかな・・・。

 俺もちょっと乗ってみたいけど、俺が乗ろうとしたら噛み付かれましたとかだったら怖いのでやめとこう。


「うわぁ!すっごいふかふかで気持ちいい!」

 

 こうして手前の森を抜けた俺達3人と1匹は、湖を横目に、サーヴァリルがいる精霊の森へとやってきた。

 ルシェは天狐に跨り、俺はエルナを抱いて。

読んで頂きありがとうございます。

ルシェリィはかけっこ大好きです。

運動会ではいつも一番です。

リレーではいつもアンカーです。

そんなものはこの世界には多分ありませんが。


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