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9話 極彩鳥

 一年が過ぎた。

 

 この一年で魔女の一撃(ウィッチーズ・ブロウ)双撃魔術(デュアルマジック)を習得するはずだったのだが、実は未だにできない。

 理由は分かっている。

 龍族が持っているもう一つの魔力、龍魔が原因だ。

 この魔力のせいで、制御が乱されてしまう。

 双撃魔術(デュアルマジック)魔女の一撃(ウィッチーズ・ブロウ)も、魔力制御が非常に難しい。

 ただでさえ難しい魔力制御を、ハンデを背負って習得しようとしているのだ。

 これは生半可な事ではない。


 身体強化に関してはロディーナから太鼓判をもらった。

 ルシェも身体強化は得意だし、これも龍族というのが関係しているのだろうか。

 ただし、ルシェのように物理法則を無視したような動きはできない。

 きっと、あれは天才なんだろう・・・。

 ルシェは誰にも教わらず、当たり前のように龍魔による身体強化を使う。

 俺の場合は、龍魔による身体強化ではなく通常魔力での身体強化だ。

 もしあれが龍族として当然の事なら、俺は凹む。

 落ちこぼれじゃん・・・。




「トーワ!」


 このままだと、ちょっと身体強化ができてちょっと魔術が使える程度の、中途半端な奴になってしまう気がする。

 ロディーナのように魔力を完璧に操れるわけでもなく、ルシェのように龍魔を活かした身体強化もできない。

 というか、龍魔が足かせにしかなっていない。

 どう使っていいのか分からない。

 非常にまずい・・・。


「トーワ!!」


 まだ弟子入りして1年しか経っていないと言い訳する事もできるが、それでも2人を見ていると自信を失くす。

 特にルシェ。

 魔術は下手なものの、ロディーナのお墨付きだ。

 どうしても自分と比べてしまう・・・。

 同じ龍族だと特に・・・。


「ヘコむなぁ・・・」

「トーワ!!!」

「うぇ!?あぁ、ごめんごめん、考え事してた。なに?」


 最近、どうも思考がマイナス方向へ向かいやすい気がする。

 壁にぶち当たってるからだろうか。

 これもあまり良くないな・・・。


「極彩鳥!ほらほら!」

「えっ!?マジで!?」


 ルシェが指をさす上空を見てみると、確かに鳥のようなものが飛んでる。

 かなりの高度だ。

 正直、あれが極彩鳥かどうか俺には分からない。

 見るのは初めてだし、そもそもこれだけ離れているとはっきり言って豆粒にしか見えない。

 ルシェは目も良いのか?

 羨ましいぜ・・・。


「トーワ!早く!」


 そう言いながら腕を引っ張ってくる。

 まさか狩ろうとか言うんじゃないだろうね?この子は。


「ちょ、マジで言ってるの?」


 極彩鳥とは。

 極彩色の羽を持つ大型の鳥獣で、高高度を飛行し地上へは降りてこない。

 その色鮮やかな羽は魔法を無効化し、基本狩る事はできないとされている。

 狩る術がないのだ。

 極稀に、竜などに襲われ弱った固体が地に落ちてくる為、その時に狩られる事が多い。

 戦闘力はほぼないに等しい魔物だが、魔法が一切通じない。

 故に、地上からの攻撃手段がない為、狩る事ができないのだ。

 魔法を無効化する羽は高値で取引され、その肉は極上とされている。

 生態はほぼ明らかになっていない。

 ルシェ曰く、「超美味しい鳥!ほっぺた落ちる!」だそうだ。

 

 ロディーナとルシェは、過去に1度だけ極彩鳥を狩っているらしい。

 以前、ルシェが話してくれた。

 ただ・・・狩り方があまりにも特殊過ぎる・・・。

 恐らくこの狩り方はルシェとロディーナのコンビにしかできない。

 俺には自信がない。


「早く!ほら!逃げちゃうよ!」

 

 ぴょんぴょんと跳ねながら極彩鳥を指差すルシェ。

 もう狩る気マンマンだ。

 

「し、師匠呼んできた方がいいんじゃない?」

「間に合わないよ!逃げちゃうって!」


 そんな俺とルシェのわちゃわちゃを聞きつけて、ロディーナが家の中から顔出した。

 右手には愛用の短杖を持っている。


 おぉ師匠!出番すよ!


「師匠!極彩鳥です!」

「分かってるわ。家の中まで声が聞こえたわよ。じゃ、これ」


 すると、綺麗な弧を描きながらロディーナの短杖が俺の手元に飛んできた。


「え・・・」

「特別に貸してあげあるわ。逃がすんじゃないわよ」


 パチン!とウィンクをするロディーナ。

 おぉぉ・・・マジかよ・・・!

 いくらなんでも無茶振り過ぎるでしょ!

 

「いこう!トーワ!!」


 ぐぬぬ・・・。

 いこう!って・・・。簡単に言ってくれやがる。

 クソ・・・。

 ・・・・・・・・。

 あぁ・・・もう・・・。

 こうなったらやるっきゃねぇ・・・!


「ルシェ!」

「うん!」


 身体強化を発動させて、一気に駆け出し極彩鳥を追う。

 結構距離が離れてしまったが、このスピードならすぐに追いつくだろう。

 相変わらずルシェのスピードは速い。

 銀色で長い髪をなびかせながら、まるで弾丸のように駆けている。


 よし!追いついてきた!

 俺達に気付いてる様子は・・・ないな。

 暢気に飛んでやがる。

 見てろよ・・・。

 やってやんよ!


「ルシェ!ここから!」

「分かった!」


 杖を突き出し、目の前の空中に氷塊を作り出す。

 パキパキッ!パキン!という音と共に、魔術でこぶし大の氷が作られていく。


 まだ・・・まだだ・・・。


 更に魔力を込めて氷を大きくする。

 魔術で大きな氷や岩を作りあげるには、細かい魔力操作が必要だ。

 失敗すると砕け散ってしまう。

 集中だ。


 もっと・・・もっと・・・。


 バキッ!バキンッ!という音が鳴り響き、氷塊はどんどん大きくなっていく。

 そして、直径2mほどの氷塊が完成した。

 日の光が反射し、キラキラと輝いてる。


「よしできた!」


 氷塊を作り上げる時点で少し不安だったが、なんとかできた。

 ロディーナの杖の効果もあるだろう。

 この杖は凄い。

 魔力を増幅してくれて、細かい操作もしやすくなる。

 そして、俺の合図と同時にルシェが氷塊に飛び乗った。


「いいよ!トーワ!」


 目標までの距離、射出角度、スピード・・・。

 調整完了。


「じゃあいくよ!」

「任せて!絶対仕留めてくる!」


 

 3・・・2・・・1・・・ 



氷弾(アイスバレッド)!!」


 ルシェを乗せた巨大な氷塊が、空気を切り裂き、高速で撃ち出された。

 遥か上空に向かいグングンとスピードを上げ、瞬く間に極彩鳥へと追いついていく。


 よしっ・・・!

 そのままいけ・・・!


 スピードも射出角度も申し分ない。

 後は氷塊に回転がかからないように、このまま制御を続けるだけ。

 これならいける!そう思った瞬間・・・

 それに気付いた極彩鳥が、自らに迫りくる巨大な氷塊に向かって鳴いた。


 

-クエェェェェ!!-


 

 カシャァァという甲高い音と共に砕け散る氷塊。


「なっ!?ルシェ!」


 が、ルシェの姿はもう氷塊の上にはなかった。

 極彩鳥の更に上だ。


 ルシェの龍魔による身体強化は、空気の流れを味方につける。

 羽?鳥?そんなものは関係ない。

 大気は全てルシェの味方だ。

 

 滑るように軌道を変えながら極彩鳥に迫るルシェ。

 まるで戦闘機だ。

 そして・・・。


「お肉ぅぅぅぅぅ!!」


 そう叫び、クルクルと回転しながら極彩鳥の脳天目掛け、かかと落としを炸裂させた。

 俺もくらった。

 ロディーナもくらった。

 そう、あのかかと落としだ。

 技名は「お肉」らしい。


 完全に決まった。

 ジャストミートだ。

 お肉だけに。

 上空からルシェと極彩鳥が落ちてくる。

 風魔術で上昇気流を発生させて落下スピードを調節。

 ルシェは手足を広げ、喜びながら地上へ降りてきた。


「うおぉぉ!やったぜ!」

「やったぁー!」


 俺はルシェに駆け寄り、両手で持ち上げクルクルと回って喜んだ。

 ルシェも大はしゃぎだ。


「すごいじゃない。なかなか鮮やかだったわよ」


 後から駆け寄ってきたロディーナも褒めてくれた。

 俺からしてみればルシェが凄いだけに思えるが、それでも嬉しい。


「やりましたよ師匠!」

「やったよ!お師さん!」

「2人とも上出来よ。それにしても中々の大物ね」


 落ちてきた極彩鳥に視線を移すと、そこには体長3mは超えるであろう色鮮やかな怪鳥が横たわっていた。


「すごいデカいんですね」

「やったね!前のやつより大きいよこれ!」

「ここまで大きいのは滅多にお目にかかれないわよ。これは解体も大変そうね」


 極彩鳥自体、滅多にお目にかかれない魔物だが、この個体はかなり大きいらしい。

 ロディーナが巨大な氷の板を作り、家までの地面を直線に凍らせ始めた。


「これに乗せて滑らせて運びましょう」

「へぇ、こんな運搬方法もあるんですね」

「普通やらないわよ。魔力の無駄だもの」


 家も近いし、面倒だからといったところか。

 それにしても本当に綺麗な鳥だ。

 極彩鳥と言われるだけあって羽は極彩色に彩られ、実に鮮やかだ。

 ルシェと氷を押して家の近くまで運び、さっそく解体を始めた。


「羽根は一枚一枚丁寧にね。傷を付けたら価値が下がってしまうわ」

「分かりました」


 まずは羽根を毟っていく作業だ。

 1枚1枚が大きい為取りやすいが、なんせ体長が3m以上あるもんだからとにかく羽根の量が多い。

 これは時間がかかるかもしれない。


「あっ!レイクだ!おーい!」


 極彩鳥の解体をしていると、ルシェが声を上げ手を振り始めた。

 視線を移すと、馬車がこちらに向かってきている。

 定期的に食料や物資を運んでくれている冒険者パーティー、ビーストウィングだ。

 ビーストウィングはB級の冒険者パーティーで、ここへ来てから何度か顔を合わせた事がある。

 剣士1人、戦士1人、魔術師2人の4人パーティーだ。


 リーダーは剣士のレイク、個人では唯一のA級でそこそこ有名な冒険者らしい。

 戦士で髭を生やした巨体のフレッド。

 前髪で目が隠れている大人しそうなのが治癒魔術師のパーラ。

 そしてもう一人の魔術師がアリア、巨乳で金髪、姉御肌といった感じでサブリーダーだ。

 巨大クラン、アイアン・メイデンに所属するベテラン冒険者パーティーで、リーダーのレイクは昔からロディーナと懇意らしい。 


「おいマジかよ!極彩鳥じゃねぇか!!」

「うわっ!本当!どうしたの!?」


 レイクとアリアが極彩鳥に気付いて驚きの声を上げ、他の2人もそれに気付いた。


「おいおいマジかよ・・・運よく落ちてきたのか?」

「すごいですね。私初めて見ました。」

「こんにちは。さっきルシェが飛んでるのを見つけて狩ったんです」

「ふふ~ん!あたしが仕留めた!」


 ルシェが自慢げに胸を張った。


「はぁ!?飛んでる極彩鳥を狩れるわけないだろ!おいおいロディーナさん、弟子2人がとんでもない事言ってるぜ?」


 レイクがまさかといった感じで、ケラケラと笑う。

 しかし、ロディーナはニヤニヤとした笑みを浮かべるだけで何も言わなかった。


「え?冗談だろ?」


 レイクから笑顔が消えた。


「本当ですよ。ルシェが狩ったというのも本当です」


 そこからは、どうやって飛んでる極彩鳥を狩ったのかと質問責めにあった。

 ちなみに、巨大な氷塊と一緒にルシェを上空に飛ばしたと説明したら、完全に呆れられた。


「やっぱりトーワとルシェは私達のチームに入るべきよね!将来有望だわ!」


 そんな事を言われながら、背中からアリアに抱きつかれる。

 アリアはおっぱいがボインボインなので背中が幸せだ。


「ロディーナさん、あんまりとんでもないルーキーを育てるのはやめてくれよ?先輩面できなくなっちまう・・・」


 フレッドが髭をさすりながら苦笑した。


「ルシェはともかく・・・俺は普通ですよ。ルシェを見て凹んでるくらいですし・・・」

「はぁ・・・並の魔術師は直径2mの氷弾(アイスバレッド)を、極彩鳥が飛んでる高度まで撃ち出す事なんてできませんよ・・・。アリア姉さんできます?」


 パーラはアリアの事をアリア姉さんと呼ぶ。

 姉御肌のアリアにぴったりだ。


「で、できるわよ・・・。でもやらないわね、普通」


 普通の冒険者は、人を乗せた氷塊を遥か上空まで撃ち出す、なんて事は絶対にしない。

 仲間を殺すようなものだ。

 それを最初にルシェにやらせたロディーナもロディーナだが、やるルシェもルシェだ。

 この2人は色々とぶっ飛んでいる。

 俺なんて・・・それに比べれば可愛いもんだ・・・。


「ちょっとアンタ達も手伝いなさい。極彩鳥の肉、食べたいでしょ?羽根もちょっとなら持っていっていいわよ」


 そんなロディーナの声に4人は湧いた。


「いやっほう!さすがロディーナさんだ!」

「じゃあ解体は私達でやるわ」

「いいんですか?私食べるの初めてです」

「パーラ、極彩鳥の肉はマジで美味いぜ」


 そんな事を口々にしながら、ビーストウィングの4人が解体をしてくれる事になった。

 ただ、解体は俺も覚えたい。

 これから冒険者になるなら必要になるスキルだろう。


「解体は俺もやりたいです。覚えておきたいので」

「んじゃ、5人でサクっとやっちまうか。あとはこっちに任せて2人は休んでてくれ」


 こうして解体は5人で行う事になった。

 ベテラン冒険者パーティーとあって、極彩鳥はあっという間に素材と部位ごとに解体されていった。

 



 そして夜、極彩鳥の肉を使ったロディーナの手料理が並べられ、ささやかな宴会が行われた。




「しかしまぁ、さすが双翼の魔術師の弟子2人というべきか。飛んでる極彩鳥を狩るなんてよ」

「双翼の魔術師?」


 ロディーナの二つ名だろうか。

 短杖に翼の装飾があるから双翼なのかな?

 レイクの言葉に聞き返すと、アリアがちょっと呆れたように教えてくれた。


「自分のお師匠様の異名も知らないの?双撃魔術(デュアルマジック)の使い手で近接戦闘も遠隔戦闘も超一流、杖に装飾された翼、それで双翼の魔術師よ。この世界の魔術師であたなのお師匠様を知らない人間なんていないわ」


 マジかよ。

 師匠・・・そんなに凄い人だったのか・・・。

 いや凄い人だとは思ってたけど。


「そういうの師匠は教えてくれないんですよ」

「教えてくれないって・・・。トーワはロディーナさんに弟子入りしたんでしょ?どうして知らないのよ」

「あ、いや・・・」


 しまった・・・。

 アリアの鋭い突っ込みに思わず言葉が詰まってしまった。

 異世界から来ました、なんて言える筈がない。

 まぁ、言ったところで信じてもらえないと思うが。

  

「アタシが拾ったのよ。別に弟子にしてくれなんて言われた覚えはないわ」


 すかさずロディーナのフォローが入った。


「拾ったって・・・。こんなとこに住んでてどこで拾うんだよ」


 レイクが呆れたように聞き返す。


「どこってその辺よ。その辺」


 そう言ってロディーナはケラケラと笑った。

 こうして何かを誤魔化したい時にロディーナがとる飄々とした態度は本当に上手い。

 これ以上聞いても無駄だというのが、すぐに分かるのだ。


 と思ったら、なんだかちょっと可哀想な目で見られた。

 大方親に捨てられたとか家族を失ったとか、そう思われたのかもしれない。

 それはそれで都合が良いので、聞かれたらとりあえずそういう事にしておこう。 


 ただ、この世界では15歳で成人になるから俺はもう大人って事になるんだよな。

 本来であれば働いて自立していないといけない年齢だ。

 学校に通ったりとなるとまた違ったりもするみたいだが。


「ま、それにしても今まで弟子なんか取らなかったのに、今や2人も愛弟子がいるとわねぇ。なんか心境の変化でもあったのかい?ロディーナさん」


 肉を切り分けながらフレッドはそう笑った。

 フレッドは先ほどからルシェの為にずっと肉を切り分けている。

 もうずっとだ。

 ルシェの食欲が止まらない。


「フレッド!もっと切って!」

「ってもう食ったのか・・・。はいはいお姫様」


 今日の主役は極彩鳥を狩ったルシェなので、お姫様扱いは当然だ。

 というか、ルシェはこの4人に非常に可愛がられている。

 特にフレッドには同じ年の娘がいるらしいから、娘のように可愛いんだろう。


「別に心境の変化というわけじゃないわ。なるようになっただけよ」

「はぁ・・・羨ましいです。双翼の魔術師に指導してもらえるなんて。私なんてノーレッジ魔法学校中退ですから」


 ノーレッジ魔法学校とは、ここ南西大陸の魔法王国ノーレッジにある魔術学校だ。

 入学資格は特例を除き12歳以上、選抜試験があり毎年300名にしかその門を開かない。

 5年制の学校ではあるが、卒業する生徒は少ない。

 学費が高い為、通常は3年で中退する生徒が多いのだ。


「ノーレッジ魔法学校って確か有名な学校ですよね?パーラさん凄いじゃないですか」

「凄いのはアリア姉さんです。魔法騎士科卒業ですから」

「魔法騎士科?」

「魔法騎士団の団員を養成する特別コースがあるのよ。私は結局入れなかったけどね」

「養成コースなのに入れないんですか?」

「卒業しても入団できるのは良くて2、3人ってとこよ。入団人数0人なんて年もあるくらいだもの」

「それはまた狭き門なんですね」


 専門コースがあるにも関わらず入れないとか・・・。

 一体どれだけの難関なんだろう。


「ま、アリアには魔法騎士団なんかより冒険者が似合ってるぜ。冒険者は最高だぜぇ?そう思うだろ?ルシェ」


 すっかり酔っ払って出来上がっているレイクがルシェの頭をガシガシと撫でた。


「あたしも冒険者になる!」

「おーそうかそうか!いいぞぉ、冒険者は。なんたって自由だ!」


 ルシェも冒険者になりたいのか。

 そりゃそうか。

 元S級冒険者のロディーナに育てられて、こうして現役冒険者の武勇伝を聞かせられてきたらそうなるわな。


「冒険者なんて野蛮よ野蛮」

「あの師匠、元S級冒険者が言っても説得力皆無ですよ?」

「アタシはね、元々戦いが嫌いなのよ。冒険者だって生きていく為になったようなものだもの」


 確かに魔術ギルドで治癒魔術の研究をしてたって言ってたしな。

 冒険者時代の武勇伝もほとんどしてくれない。

 こちらから聞いても嫌がるのだ。

 勿論、知識として必要な事は教えてくれるが。


 こうして夜もすっかり深け込み、ささやかな宴会は幕を閉じていった。



---



「ふぅ・・・。騒々しい奴らはやっと寝たのね」

「たまにはこういうのも賑やかで楽しいですね」

「そうね」


 ルシェとビーストウィングの面々は酔いつぶれるように寝てしまった。

 ルシェに関しては酔いつぶれるではなく、食い倒れといった感じだったが。


「ねぇ、トーワちゃん。もしトーワちゃんがここから出て行く時、一悶着あるかもしれないわ」

「一悶着?」

「ええ、ルシェの事よ。あの子は冒険者になりたがってるの」

「あぁ、そんな事言ってましたね。師匠に育てられたんですから、血は争えないって感じですね」


 勿論、血は繋がっていない。

 ただ、ルシェとロディーナには血よりも濃い絆がある。

 2人を見ていれば分かる。

 この2人は家族同然なのだ。


「血ね・・・。ふふ、そうね」


 ロディーナは少し嬉しそうに笑った。


「もしアタシとルシェの間に何かあっても、その時は口を出さずに黙って見ていてくれるかしら?」


 どういう事だろう。

 ロディーナはルシェが冒険者になるのを反対しているのだろうか。

 まぁ、本人が冒険者という職業をあまりよく思ってないみたいだし。

 娘同然のルシェがその道へ進もうとしたら反対するのは当然か。

 俺だって、娘がいてその娘が冒険者のような危険な職業に進もうとしたら止めるかもしれない。

 親子関係に口を出すのはよろしくないしね。


「わかりました」

「約束よ?」

「はい」



---



 翌日、ビーストウィングの面々は町に帰っていった。

 極彩鳥の羽根ももらってウハウハの様子だった。

 なので、次に来る時に何かお菓子を買ってきて欲しいと頼んでおいた。

 もちろん、快く引き受けてくれた。


 そろそろ一度、サーヴァリルの元へ行きたい。

 そのお土産にお菓子でも持っていけば喜んでくれるだろう。

 サーバリルの元へ行く理由は2つだ。

 

 エルナに会いたい。

 元気にしてるだろうか。

 きっとあげた飴はもう無くなってしまってるだろう。

 お菓子でも持っていけば喜ぶに違いない。

 もちろん、サーヴァリルにも会いたい。

 ロディーナを紹介してくれたのはサーヴァリルだ。

 近況報告も兼ねて行くべきだと思う。


 もう1つの理由はルシェだ。

 ルシェは龍族だ。

 龍神に仕えていたサーヴァリルには紹介しておきたい。

 これはロディーナにも頼まれた事だ。

 一度ルシェを連れて行って欲しいと。

 

 あと、これはついでだが龍魔の事についても聞きたい。

 サーヴァリルなら何か知ってるかもしれないしな。




 そして、極彩鳥討伐から3ヶ月が過ぎた。

読んで頂きありがとうございます。

ルシェの力の片鱗が見えてきました。

強い少女っていいですよね。

B級冒険者パーティーというのはこの世界では相当な実力がある冒険者達です。

努力のみで到達できる限界といったところでしょうか。


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