エピローグ
ドラゴンの襲撃から約1年。
村は被害にあった家屋などが新しくなっている事以外、すっかり元通りになっていた。
これはラムールから提供された人材と資材のおかげで、襲撃から半年後には復興は終わり村は元の活気を取り戻している。
俺はラムールから派遣された職人や作業員たちと共に復興作業に従事し、それが終わると村長である師匠が兼務していた村の警備と人材育成を担当する事になった。
今は新しく設立された村の自警団の団長だ。
自警団と言っても団員は数人の小さな組織。
だが団員でなくても希望する村人や村の子供たちに、武器の扱いや鍛錬の仕方などを指導している。
かつて俺が師匠ににしてもらっていたように。
そして今日も俺は自分の鍛錬をしつつ、村人や子供たちを指導をしていた。
みんなと一緒に素振りをしながら考える。
太陽の位置からしてそろ昼を過ぎただろうか?
手を止め懐から懐中時計を取り出して見ると、時計の針は正午を少し過ぎていた。
「よし、それまで」
俺の号令で剣の素振りをしていた数人の大人と子供が動きを止める。
『ありがとうございました』
「おつかれ、気をつけて帰れよ」
「はい」
俺は帰り支度を始める人々に声をかけつつ自警団の詰め所に戻る。
そして詰め所の扉を開けると、そこには護衛のため村人と共にラムールに行っていた団員がいた。
「あ、帰ってたのか。お疲れさん」
「団長、ただいま戻りました。手紙を預かってます」
「手紙?」
俺はそれを受け取ると、早速封を開けてみる。
「レウからか……懐かしいな」
手紙にはこう書かれていた。
久しぶりだなアーム。元気でやってるか?
俺は今、ハンターを辞めて都市兵をやっている。
実はエラン村から帰ってすぐ、良い関係だった女性との間に子供ができた事がわかり俺も結婚したんだ。
ハンターの稼ぎは悪くなかったけど、女房と子供を養っていくには不安定だからな。
俺がパーティを抜けたあと、ロイとジグは二人で他のパーティの助っ人をやってたんだけど、結局パーティは解散して二人は別々の道を歩む事になったらしい。
ロイはマスターに頼まれギルドマスター候補として、ギルドマスター補佐兼新人育成担当になり、ジグは助っ人をやっていたときに知り合ったパーティに誘われ一緒に王都に移籍したそうだ。
王都に行ったジグは簡単には会えないかもしれないけど、俺とロイはラムールにいる。
女房と子供にも紹介したいから、ラムールに来る事があったら尋ねてくれ。
それじゃ、また会おう。
手紙を読み終わり俺は思う。
みんなそれぞれの道を歩み始めたんだな……と。
しかし、レウにそんな相手がいたとは……そんなそぶり見せなかったのに。
まあ、あの頃の俺は余裕がなかったから気付かなかっただけで、ロイとジグは知ってたのかもしれないけど。
ロイがギルドマスター補佐兼新人育成担当というのは合ってるかもしれない。
面倒見は良いし、将来良いギルドマスターになるだろう。
そしてジグ。
あいつが王都に移籍するとは意外だ。
まあ、ロイやレウのようにラムールにこだわる理由もなさそうだし、乗り気じゃなかったのも面倒だからって感じだったからな。
入ったパーティが移籍するならラムールに残る方が逆に面倒かもしれん。
そう考えると当然の流れだ。
手紙を封筒にしまうと俺は詰め所を出て昼食を取りに家に向う。
そして家の前まで来るとハイムと彼女に抱かれた赤ん坊――俺の子カルムが迎えてくれた。
「おかえり、アーム」
「ただいま」
「ぱー、ぱー」
俺の顔を見てカルムは一生懸命手を伸ばす。
その手を軽く握るとカルムは嬉しそうに笑った。
「この子は本当にお父さんが大好きなのね。そういえば赤ん坊の頃のアームもおじさんを見ると良く笑ったって、伯母さんが言ってたわ」
「俺は覚えてないけど……」
「ふふ、私も良く覚えてないわ」
「ぱー、ぱー」
二人の笑顔を見て俺は思う。
たくさんの人たちを守る英雄にはなれなかったけど――俺は俺のできる範囲で守って行く。
ハイムを、カルムを、この村を。この小さな村の勇者として。
小さな村の勇者 ――完――
『小さな村の勇者』はこれにて終了です。最後までお読みくださりありがとうございました。
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