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引退と帰郷 その2

 審査を受け小都市ラムールに入場した俺は、鳥から降りて徒歩でハンターギルドに向う。


 都市内で乗るのが禁止というわけでもないのでそのまま乗って行った方が早いけど、なんとなく歩きたくなったから。


 この都市に来て約5年間、何度となく歩き見た景色。


 だけど今日は見慣れたはずのその景色がなんだか少し特別なものに見えた。


 それはたぶん、もうここの住人としてこの景色を見る事はなくなるからなんだと思う。


 そういえばハンターになるためにこの都市に来た5年前のあの日……道を覚えてなくて少し街中をさまよったっけ。


 あのときは以前に一度行ったときのおぼろげな記憶を頼りにハンターギルドを見つけたけど、今はもう迷う事もない。


 俺は何度も歩き見知った道を進み、そこそこ大きな建物であるハンターギルドに到着した。


 ギルドに入るとすぐに受付嬢が挨拶してくる。


「いらっしゃ――あ、アームさん」


「やあ、どうも」


 受付嬢に挨拶を返すと、近くにいたハンター仲間が話しかけてきた。


「お、アーム。戻ってたのか。お前、ドラゴンとやりあったんだってな。活躍したって聞いたぞ?」


「はは、ちょっと時間稼ぎをしただけだよ。って言うか誰に聞いたんだ?」


「そりゃ――」


 話によると都市兵からの報告やソレイユの話をマスター経由で聞いたらしい。


 確かにできる事は精一杯やったと自負してるけど、活躍したとまで言われるとちょっと照れくさい。


 そのあとも数人から質問攻めにあったけど、依頼達成の報告とマスターへの挨拶があるからと言って断り、とりあえず受付で依頼達成の報告を終わらせた。


「はい、確かに確認しました」


「それじゃ、ロイたちが来たら食堂で待ってるように伝えてください。僕はマスターに挨拶してきますんで」


「わかりました」


 受付嬢にロイたちへの事付けを頼み、挨拶のためにマスターの執務室に向う。


 そして執務室の前で深呼吸をしたあと、俺はその扉をノックした。


「だれだ?」


「アームです。戻ったので報告に来ました」


「入れ」


「失礼します」


 俺が部屋に入るとマスターは手に持っていた書類を机の上に置く。


「良く無事に戻った。今回の活躍は都市兵とドラゴンスレイヤーから聞いている。まあ、お前はまだレベル3。これをもってすぐに昇格とはならんが……今回の件、将来レベル5の審査には――」


 そこまで言ってマスターは一旦口を閉じる。


 そして俺の表情を見て悟ったのだろう。


 再び口を開くと言った。


「村に帰るのか?」


「……はい。今回の件で気付いたんです。僕のやるべき事は村にあると」


「お前の人生はお前のものだ。お前がそうと決めたのなら俺が言う事は何も無い。今までご苦労さん。ラスターによろしくな」


 そう言うとマスターは、今まで見た事の無いような優しい笑みを浮かべた。


 これから俺の住む世界は変わる。


 マスターに会うのもたぶんこれが最後だろう。


 思い返せば今回の件に限らずこの人には色々と世話になった。


 それをどう表現すれば良いのか俺には良くわからないけど――


「ありがとうございました」


 ただ、感謝の言葉と共に俺は深く頭を下げた。




 挨拶を終え執務室を出る。


 そしてとりあえずロイたちを待とうと食堂スペースに向うと、受付嬢に声をかけられた。


「あ、アームさん。パーティの方々が食堂で待ってますよ」


「ありがとうございます」


 どうやらさっきの事付けを伝えてくれたらしい。


 そして食堂スペースに行くと俺を見つけたロイたちが手を振った。


「おー、アーム」


「よっ」


「おかえり」


「ああ、ただいま」


 席にはまだ昼間だというのに各々の席にジョッキとつまみが置いてある。


 もちろん今までいなかった俺の分は無い。


 俺は食堂のカウンターでジョッキと適当なつまみを買うと空いている席に着いた。


「お前、ドラゴンとやりあったんだって?」


 レウに言われ俺は思わず苦笑する。


「やりあったってほどじゃないけどな」


 さっき他の奴に聞かれたのと同じ事言うなぁ……まあ、マスターから同じ話を聞いたんだろうから、当然といえば当然なんだけど。


「無事で何よりだ」


「だね。ドラゴンとの戦いで活躍できたんだから、目標のレベル5もそう遠くないんじゃない?」


「いや、活躍というほどじゃ……それにもう……」


 何年も共に戦ってきた仲間たち。


 ハンターを辞めるという事は、その仲間たちを裏切る行為かも知れない。


 もう決めた事とはいえ、やっぱ言いづらい……そんな俺の気持ちを察してかロイは言った。


「何か言いたい事があるんじゃないか?」


「え?」


「何年も共に戦った仲間だ。顔を見ればわかる」


「実は――」

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