少年の旅立ち その2
ハンターギルドの建物に入ると、すぐに受付がありその後ろには階段、右側には酒場兼食堂といった感じのスペースがある。
受付にいた二人の女性は会話をしていたが、俺を見るとそれをやめて挨拶してきた。
「いらっしゃいませ」
「あ、どうも」
俺はとりあえず軽く会釈して挨拶を返す。
さて、師匠はギルドについたらスタウトという人物を探せと言ってたな。
師匠の言葉を思い出し、早速受付の人に聞いてみた。
「すみません、スタウトさんという方を探しているんですが」
「スタウトさん?」
「はい」
「スタウトって、もしかしてギルドの……」
「ええ、たぶん……」
受付の女性たちがひそひそと話し始める。
何かまずい事を聞いたのだろうか?
「ちょっと、こちらでお待ちください」
酒場スペースに案内され席に着くと、テーブルに水の入ったコップが置かれた。
そのあとも彼女たちはなにやらひそひそと話しをし、一人が階段を上って行く。
このまま待っていて大丈夫だろうか……。
周りを見るといかつい男や怪しげな女が昼間から酒を飲んでいるのが見える。
そういえば師匠や叔父さんが、ハンターは腕自慢のならず者も多いから気をつけろって言ってたっけ。
例のスタウトって人が何か問題のある人だった場合とばっちりを受けたりしないだろうか?
ハンターは情報収集も大切な仕事だって言ってたけど、何も調べずにいきなりギルドで聞いたのはまずかったか?
そんな事を考えていると不意に声をかけられた。
「おう、兄ちゃん。見ない顔だが新入りか?」
「あ、はい。その予定です……」
大柄で筋肉質、ごつい顔で額には傷というハンターを絵に書いたような男。
村からほとんど出た事がなく、知らない人と係わる事が少なかった俺は自分が人見知りかどうかは良くわからないけど、こういう人と初めて話しをするとなると正直ちょっとびびってしまう。
「ほー。若いねぇ」
長い槍を持った男も話しかけてくる。こっちは長身で均整の取れた体つきだ。
「は、はぁ……」
二人の威圧感に喉が渇いてうまく声が出ない。
しかし、向こうから声をかけてきてくれたこの状況はチャンスだ。
スタウトという人物について何か情報を得られるかもしれない。
俺はコップの水を一気に飲み干すと、思い切って聞いてみた。
「あの、スタウトという人を知っていますか?」
その名を聞くと二人は顔を見合わせる。
「スタウトってあの?」
「だよな?」
あの? やはり何か問題のある人物なのか?
場合によってはここにいるのは危険なのかもしれない。
そう思ってすぐに逃げ出せるように腰を浮かしかけた瞬間、受付の方から良く通る声が聞こえてきた。
「誰だ! 俺の噂をしている奴は」
俺とその場に居た二人だけでなく、酒場スペースにいた全員がその声の主を見る。
歴戦のつわものを思わせる大柄で筋肉質な体躯、この男が――
『マスター!』
数人の声が重なる。
え? マスター?