6.ステータス Ver. 2
タイトルを修正しました(2021/12/31)
えー、では、第二回、戦闘(笑)のリザルト確認である。
……一回目は逃走、二回目は避けたら知らないうちに決着。まともに戦闘したのが一回もねぇ……。
そんな俺の心情は置いておいて、まずは取得物から。地面に落ちていたものは、スライムの核と思われる球と、スライムだったものと思われるものだ。
ダンジョン七不思議の一つ、謎生物モンスターの遺伝子情報が入っている記録媒体。それが核の正体だと言われている。実際、パソコンと核をケーブルで繋ぐと電子データを取得できるそうだ。塩基の配列ではなく0と1で記される生物の設計図って一体……。この核をダンジョン探索者協会に持って行くと、安価だが買い取ってくれる。
どんなモンスターでも安く買いたたかれる核と違って、モンスターの強さや希少さで値段が大きく乱高下するのが、モンスターの素材だ。ゲームと違って、ダンジョン内で倒したモンスターは消えることがない。全身がそのまま残る。要はドロップアイテムが存在しない、ということだ。目の前のモノのことをドロップ品と呼んだのは、ノリである。まあ、落ちている事には変わりないが。
俺の目の前には、スライムだったモノがある。これをどうするか……。
見た目、言葉通り「地面の染み」なんだよなぁ……。乾いたら染みですらなくなるんだろうけど。
……よし、放置しよう。
取得物について確認したので、次はステータスの確認だ。この一回の戦闘でどれくらい変わったのか……。
いざ!
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ステータス
《氏名》
神宮 龍介
《ふりがな》
じんぐう りゅうすけ
《年齢》
15
《レベル》
2
《体力》
3/16
《魔力》
8/9
《能力値》
筋力 9(0)
俊敏 28(-10)
防御 9(0)
抵抗 9(0)
器用 9(0)
知力 4(0)
体力 16(0)
魔力 9(0)
運気 -100(0)
《パッシブスキル》
逃げ足 1
《アクティブスキル》
《称号》
不運な者
迷子
逃走者
《装備》
ミノタウロスの斧
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レベルと能力値が上がっている。それ以外は変化がないみたいだ。ただ、体力がとても減っている事が気になる。ゲームだとレベルが上がれば体力が全快する場合もあるが、そんな都合のいい話はないということか。魔力も最大値ではないことから、仮にレベルアップ前に残量が最大でも、レベルアップ後も最大であるというわけではない、と。なるほどな。
一応変化はあるし初レベルアップだったけど、正直戦闘(笑)だったからな……。あまり実感がない。
え? ヤツが変化していない? んなこと知るか。マイナスは永遠にマイナスなんだろうよ! ケッ!
……確認も済んだので、ブラックホール探しを再開しよう。
***
スライムと出会った細道を進むことにした。少し曲がっているが、結構まっすぐな道だ。このまま順調に探索できればいいが。
と思ったところで水音。少し進むとあのスライムがいた。だが、問題は無い。既に攻略済みの相手だ。先程と同じようにやれば……。
構える、相手の準備を待つ、跳んでくる、斧を残して脇に移動、斧にぶつかってスライムが潰れる、以上戦闘終了。楽勝だ。楽勝過ぎて本当にこれでいいのかと疑念が浮かぶが、勝ちは勝ちである。
今通っている道はスライムの住処だったらしい。二匹目を皮切りに、続々と遭遇するようになった。水音が聞こえて姿が見えたら、構えて避けて潰れて回収。その繰り返しである。
核はバッグに入れている。バッグの中は入学式ということもありほぼ空だ。掌サイズの核であれば結構な量が入るだろう。
何故探索者ではないのに核を回収しているのか?勿論協会に買い取ってもらうためである。ただただ巻き込まれて収穫はゼロ、なんて割に合わん。バッグに入れておけば邪魔にはならないし、重量もそこまでではない。だったら回収しても問題無いだろう。
出会っては潰し、出会っては潰しを行いながら進むこと……たぶん一時間半程でスライムに遭遇しなくなった。一度に二、三匹と同時に遭遇して少し危うい場面もあったが、何とか怪我無く倒せている。
気になるのはスライムに遭遇しなくなったことだ。ここまで五分から十分に一匹は遭遇していたが、それがきっぱりと無くなってしまった。かれこれ二十分は遭遇していない。気にならないはずがない。
進行速度を遅くし、何時攻撃があってもいいようにする。
進んでいくと急カーブがあり、その先には道が続いていなかった。開けた場所、見方によっては大部屋にも見えなくもない場所が広がっていた。結構離れている反対側の壁に道の続きがあることが見て取れる。
しかし、このような場所はゲームとか物語だと中ボスとかが出てきて戦闘になりそうな所だよな……。
だが、怖じ気づいて立ち止まる訳にはいかない。こちとら段々と腹が減ってきているんだ。食料のない今、空腹を回復させる手段はない。腹が減っては戦ができぬが戦をせねば腹は満ちぬ。いざ鎌倉!
俺は部屋へと足を踏み入れた。
次の瞬間、入口と出口が粘液で塞がれた。そして天井から何かが降ってきた。
艶と張りのある瑞々しい体表面に、しなやかな体。その姿は歪みがなく左右対称で均整の取れた美しさがあり、まるで一種の美術品のよう……。
――そう、スライムである。
さっきまで遭遇していた失敗作のあいつらとは大違いで、大福の様なドーム状の体を持つ、ザ・スライムである。思わず少し感動してしまった。
だが、何時までもボーッと突っ立っている訳にはいかない。俺は囚われの身だ。部屋には遮蔽物が一切無い。まさに「逃げも隠れもしない」「袋の鼠」「背水の陣」「前門の虎、後門の狼」。いや最後のは意味が違うか。
兎にも角にも、戦闘開始だ!(ガクブルしながら真っ青な顔で敵に気付かれないように心の中で威勢良く叫ぶ妄想をしているが、敵には既に気付かれているので全くもって意味が無いことをしているただただ怯えている青年の図)