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サバイバル・イン・ダンジョン  作者: 古賀エイ
第1章 ファーストダンジョン
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2.チューブという名のハイテク機器

 事の始まりは今朝である。


 今日は高校の入学式だった。


 親の仕事の都合で引っ越しをしたばかりの俺にとっては、この新天地で友達ができるかできないかが決まる、とても、すごく、ひじょーに、大切な日である。……日であった。


 俺たち家族が引っ越してきたマンションは、エントランスと一般道の間に私道があるのだが、そこにダンジョンができた。


 俺が歩いている時に。


 ……。


 巻き込まれたよ畜生!!!


 折角の高校デビュー計画が台無しじゃねぇーか!!!


 って、高校デビューとかそんな場合じゃない。生きるか死ぬかの瀬戸際だった。


 ダンジョン発生時に巻き込まれた人の生還率は五十パーセントを切っている。後日調査に入った探索者が死体を見つけるなんてことはよく聞く話だ。そのパーセンテージのどちらかに含まれることになるとは夢にも思っていなかった。因みにこの割合は昔よりも良くなった方で、十年前はほぼゼロに近かったらしい。


 その割合の向上に貢献しているのがダンジョン産の素材から作られた物なのだから、何とも言えない。


 ダンジョン産の素材を使って国が作り出した生体内蔵型端末、通称『チューブ』。確か、Terminal Built into BodyがTBBになってTWBになってTwo B(チューブ)って呼ばれるようになったとか。この間見たネット記事に書かれていた。嘘か本当かは知らないけど。


 チューブには通話機能、チャット機能、インターネット機能、電子決済機能などの機能がわんさか付いているが、それらはついでの機能だ。メインは別である。


「例えば誘拐されたとしよう。でも、チューブがあれば安心! チューブが常に位置情報を発信しているから常に追えるよ! 電波の届かない所に連れて行かれたら? そんな場所は地球上の何処にもないから大丈夫! 犯罪者がナイフを持っていたら? チューブでガードしよう! チューブはどんなに頑張っても人間が破壊できるものじゃないからね!」(ダンジョン研究所『チューブって何?』より一部抜粋)


 なーんて売り文句で国が売り始めた。正直、「如何にもうさんくさいです」と自白しているような宣伝だ。だが、いざ購入して体に埋め込んだら、なんとビックリ使い勝手が良いではないか。ネット上では高評価のコメントで溢れかえり、何時しか日本の人口の約六割が身につけるようになった。たったの二年で。残りの四割は未だに怖くて付けていないらしい。


 チューブの目玉機能は、「常時位置情報発信機能」「破壊不可能設計」「生体エネルギー変換型電気使用」の三つである。常時位置情報発信機能は、その名の通り位置情報を常に発信し続ける機能である。スマホと同じでは? と思うかもしれないが、後の二つがプラスされることでスマホとは全くの別物となる。


 破壊不可能設計、これまたその名の通りになるが、破壊ができない。人間の力では壊すことが不可能である。有名なアスリート達を呼び、彼ら彼女らに破壊実験をお願いしている動画がネットの動画サイトに上がっているが、傷一つ付かなかったらしい。ついでに自衛隊も呼んできて多種多様な銃で弾丸を浴びせたが、これまた傷一つ付かなかったそうだ。……丈夫すぎないか?


 次に生体エネルギー変換型電気使用というやつだが、これまたすごい。充電無し、バッテリー切れ無しの優れものだ。埋め込んだ本体(人間)の生体エネルギーをほんの少し貰い、それをどうやってか電気に変換することで稼働している。


 以上三つの機能により、絶対に破壊できない、絶対に切れることの無い位置情報電波を飛ばし続ける生体内蔵型端末(携帯電話)が完成した。


 何故ここまでして位置情報を飛ばしたがるのか。宣伝にもあった誘拐対策も一つの理由だ。チューブのおかげで犯罪件数は結構減った。「これを盾にして暴漢から身を守れました」なんてこともあったみたいで、ニュースで大々的に取り上げていた。やらせでは無いと信じたい。


 ただ、犯罪件数云々はオマケだ。この機能の本当の目的は別にある。


 チューブは特殊な電波で通信を行っているらしい。その電波は地球上であれば如何なる場所にも届くというもの。それこそ従来型の電波妨害がコピー用紙で妨害しようとするのと同レベルに見えてしまう程のものだ。しかし、その電波が唯一届かない場所がある。


 それは、ダンジョン内部だ。


 ダンジョン内部には電波が届かない。原因は不明。しかし、この性質を逆に利用して、ダンジョンの発生位置、発生に巻き込まれた人の有無と身元、この二つを迅速に確認できるようになった。それにより、捜索隊を速やかに編制して現場に向かわせ、発生に巻き込まれた人々の救出を行う、そんなシステムが完成した。これが生還率が向上したカラクリである。


 さて、そのチューブだが、俺の左腕にも付いている。前腕部をタップすると皮膚に画面が表示される。ホーム画面はカレンダーにしている。今日の日付は桜色に塗られていて――……


 ……次の装備を確認しよう。


 スクールバッグの中身を確認する。メモ帳、筆記用具、ファイル、学生手帳、麦茶の入った水筒、以上。入学式に出るには十分な装備である。ダンジョンを出るには十分な装備ではないが。


 一番の問題は、食料がないことである。弁当無しでいいって書いてあったし。


「……はぁ~……」


 ダンジョンに巣くうモンスターの中には食べられるものもいると聞くが、倒せるか?今の所持品で?


 筆記具の中からカッターナイフを見つけた。やったー(棒)


 これでモンスターを殺せと? 無茶言うな。


 そもそも日常というぬるま湯に浸かっていた一般人にモンスターを殺す度胸と力があるわけない。運動が得意なわけでも、中学の時も運動部に所属していたわけでもない。


 結論。モンスターから食材を得るのは不可能である。


 そんじゃ、とりあえず……


 草探そ。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 生体内蔵型端末というのは、本体はどのような形、大きさ、あと体のどこに埋め込むの? ナイフで襲われた時にそれで身を守れる? 手の甲とか腕にでも埋め込んでるの? 作者さんの脳内補完されてる…
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