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涙の為に頑張ることを決めます!


すう すう


俺の背中から小さな寝息が聞こえる。

その度に、俺自身しっかりしないとと気持ちが芽生えてくる。

ご飯を食べた後にアパートに帰る途中、眠くなったのか瞼をこすり、足元がおぼつかなくなってしまったので背負ったのだ。

そして、すぐに寝てしまったのだ。


「変なことになったな」


まさか、結婚はおろか恋人すらいない俺が父親になるとは。

まあ、一週間だけだが。

でも、この半日だけでもリリちゃんなら娘として育ててもいいかな、程度には思うようになっていた。

もし、ロアーナさんが迎えに来なかったら、俺が育てても。


「……。パパか」


リリちゃんのこと自体はこの半日でなんとなく分かった。

どこに行ってもずっと俺の近くから離れない姿や、歯医者で処置前に泣き出してしまう姿からすごく怖がりなんだろう。

でも、しっかりとした教育を受けていたのか、食事の食べ方や、歩き方一つだって軸が揺れないしっかりとしたように見える。

こんなにしっかり育てたのになぜ手放したのか?

なぜ俺なのだろうか?

もっと、父親役を頼むなら他にいい人がいただろうに。

沢山の疑問が頭の中を渦巻く。

それに。


「さて、どうしたものか」


育てること自体は気持ちの面では何ら問題ない。

でも、経済面や生活面で大きな問題がある。

まず、貯蓄があると言っても大学生だからそれほどでもない。

子供を育て上げるには一人二千万は必要だと聞く。

養育費を考えれば、まず大学は止めないとな。

そして、片親になる場合この子と一緒にいれる時間がそれほど取ってあげれない。

見たところ、まだ小学生にも上がっていないだろう。

そんな多感な時期に出来れば保護者と一緒にいさせてあげたい。

それに、保育園に入れるとしてもまたお金の問題が出てくる。


「一週間限りの父親が、俺の限界、か」


どんな理由があるか分からない。

リリちゃんが俺を親として慕ってくれているのは嬉しい。

でも、一時の感情だけで彼女を不幸にするようなことはしたくない。


「パパ」


その声と共にリリちゃんは俺の服を掴む。


すう すう


そして、すぐにまた寝息が聞こえてきたのだった。

ただの寝言だったようだ。


ああ、前で抱っこしてあげればよかった。

腕に負担はあるだろうが、何よりリリちゃんの寝顔が見れる。

それと比べれば、腕が疲れることなど些細な問題だ。


「失敗したなあ」


後一週間しかないのだ。

少しでも多くの思い出を残していかないとな。


「……。実家に帰ってみるか」


実家には妹のお古の洋服とかもあるし、なにより父さんのカメラがある。

父さんは写真が大好きで、よく景色を撮りに行くのだ。

そんな父さんが先月カメラを買い替えたと話していた。

前のカメラをもらっても構わないだろう。


「明日、さっそく行ってみるか」


「……」



~~~



「お家に着いたぞ~」


俺がそう言うとリリちゃんは背中から降りる。

その表情は少し曇っているように見える。

眠いからだろうか?


「パパ」


「どうした?」


「……。ううん、なんでもない、です」


今の言葉、なぜか距離があるような。

何かあっただろうか?

まあ、でも。


「疲れただろ? もう寝ようか」


「うん」


俺としても今日は色々あったが、それ以上にリリちゃんの方がずっと色々あっただろう。

母親から離れ、知らない土地に一人来て、初めて父親に会う。

その上、警察署にも行ったんだ。

もう少し、この子の体力面を考えて上げればよかった。


「あ」


俺の部屋にはベッドが一つしかない。

あまり、布団を干したりしないので、少々匂うかもしれないが、リリちゃんの方が疲れているだろう。

臭いから嫌と言われるかもしれないが、リリちゃんはベッドで寝た方がいい。


「リリちゃんがベッド使って」


「でも、パパの、ですよね」


「気にしなくていい。ベットで寝なさい」


「はい」


やばい、もしかして部屋に入った時点で臭かった?

ファブっておけばよかった!


「お休み、なさい」


目に見えて落ち込んでいる!

い、いまからでも布団で寝るように言うか?

でも、客用の布団はここ最近使っていないので埃にかぶっているだろう。

俺臭いか、埃っぽいか。

どちらも。


「うーん」


「パパは、寝ないの?」


おっと、考え込み過ぎたようだ。

心配そうにリリちゃんが俺を見てくる。

俺も寝る支度を。


「そうだ、リリちゃんは着替えとかは、ってあれ?」


「大丈夫です」


そう言うリリちゃんは先ほどまでのワンピース姿から、胸元に小さなリボンがついた可愛らしいパジャマに代わっていた。

いつの間に着替えたのだろうか?

考え込んだ時間なんてほんの数秒くらいだと思っていたのだが。


「考えすぎか」


俺は布団を用意する。

その間にリリちゃんがベッドの中に入っていくのを見て、臭いと言われなかったことに少しほっとしたのだった。

俺は客用の布団がやはり、埃っぽかったのでベランダで軽くはたいてから床に敷く。

そして、俺が布団の中に入る頃にはリリちゃんは目を閉じていた。


「俺も寝るか」


色々あって俺も疲れていたようだ。

すぐに眠気がやって来る。

その感覚に身を任せるのだった。


「……。ヒック、グスッ、……。」


なにか、音が聞こえる。

それに腰辺りが温かい?

重い瞼を開ける。


「グスッ」


やはり、泣き声が聞こえる。

俺は布団を開けると、俺の身体にピタリとくっついたリリちゃんが泣いていたのだ。


「ど、どうした!?」


もしかして、怖い夢でも見たのか?

それとも家が恋しくて?

それとも、やはり臭くて眠れなかった!?


「パパ、リリのこと、きらい?」


え?

そんなこと。


「そんなことない! 嫌いなんて」


「でも、パパ。しっぱいしたって、いって」


もしかして、帰りのつぶやきを聞かれてた?

それを勘違いして。


「あれは別のことについて呟いただけで」


「でも! でも、リリをケイサツにおいてこうとした」


そ、それは!

そうだな、最低なことをしようとした。

まずは、リリちゃんのことを考えて上げるべきだった。

父親だと思って、期待してきたのに、急に警察に連れて、置いていかれようとしたんだ。

不安だったんだろう。

それが、帰りの俺の言葉で爆発してしまったか。

だから、急に敬語になったのか。


「……。ごめん。急に俺に子供がいるって言われて、信じられなくて、間違ったんだ」


「リリ、パパと、グスッ、いっしょは、ダメ?」


「それは」


俺と一緒にいては幸せには。


「リリ、パパと、いっしょが、いい」


「……」


「ずっと、パパいなくて、ヒック。でも、みんな、パパがいて、ヒック、さみしく、て」


悲痛な訴えに思わず胸が痛くなった。

確かに、俺が父親だって送り出したくらいだ。

ロアーナさん自身が結婚や、父親の代わりになる人がいたとは考えずらい。

片親の寂しさをずっと抱えてきたのか。


「パパ、リリきらい?」


思わずリリちゃんの事を抱きしめていた。


「嫌いなわけあるか!」


「パパ」


お金が何だ!

片親が何だ!

こんなにもいい子が俺を求めてくれているんだ!

それに、大学だっていいとこに就職しやすかったり、なにより働くまでの猶予ができるくらいの気持ちで行っていた。

そこに、何かの強い意志があったわけじゃない。


「リリ」


そこまで分かっているならここで決意しないと。


「俺、いや。パパ、リリのパパになっていいか?」


「うん!」


リリは涙でぐしゃぐしゃになった顔で笑顔を向けてきたのだった。

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