表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/4

レストランでパパ、頑張ります


「パパ、きらい!」


早速俺はリリちゃんに嫌われたのだった。

それも全部歯医者さんのせいだ。

虫歯の存在に気づき、悪くなる前に治療するべきだと思い連れて行ったのだ

最初はたくさんのおもちゃやアニメを見て楽しそうにしていた。

だが、いざ順番になって治療を受ける時になると怖くなってしまったのか泣き叫んでいやがったのだ。

だからといって治療しないわけにもいかず。

泣きながら嫌がるリリちゃんの治療を見守ることしかできなかったのだ。


「ほら、何か美味しいもの食べよう。ね」


「ぶう」


背中に負ぶっているので、顔は見えないがたぶんまだ怒っているのだろう。

泣きながら怒っている顔も、またかわいいのだ。

リリちゃんは天使だ。


「そうだ、デザート食べに行こうか」


「デザート?」


「おう、ケーキでも、パフェでもなんでも頼んでいいぞ」


「ほんと!?」


リリちゃんの声が嬉しそうに跳ねる。

まあ、子供は甘いものか、おもちゃで機嫌が直るからな。

それにしっかり食べて、大きくなってもらわないと。

背負って気づいたが、ずいぶんと軽いように思える。

もうちょっとふっくらしてもいいと俺は思う。


「じゃあ、ジュナサンいくか」


「じゅなさん?」


「レストランだよ。安くておいしいんだ」


「たのしみ」


「そうか」


嬉しそうにしているところを見ると、あまり外食とかはしたことが無いのかな?

格安ファミリーレストランで悪いが、リリちゃんの保険証が無かったせいで歯医者の費用が満額払わらされたのだ。

懐が痛い。


「バイト増やさないとな」


「ばいと?」


「気にしなくていいぞ」


DNA鑑定の結果が出るのが一週間も後なのだ。

その為、その間は俺がリリちゃんの面倒を見ることになったのだ。

まだ、学生であるが一様バイトで貯めたお金があるのですぐにどうこうなることは無い。

でも、所詮学生の貯蓄だ。

子供を一週間とはいえ、養うには心もとない。


それに、最初こそ誰かに任せてしまおうと思っていたが、今は。


「パパ」


「どうした?」


「だいすき」


幸せだなと、思ってしまう、俺がいるんだよな。


「走るぞ」


「きゃきゃきゃきゃっ!!」


いつぶりにか、足取りも軽く走り出していた。

楽しそうな笑い声が背中から聞こえる。

それだけで、馬鹿な俺は更に加速するのだった。


時間的に夕食前のジュナサンは思いの外閑散としていた。

俺は水をとってくると、リリちゃんはカラフルなメニューを見ながら目を輝かせていた。

特にパフェの煌びやかなページを先ほどから何度も見返している。


「リリちゃん」


「パパ、これがいい!!」


俺の声掛けに気づいたリリちゃんはイチゴのパフェを指さした。


「うん、いいよ。でも、デザートより先にご飯食べてからな。全部食べたら頼んであげるから」


「でも、なくなっちゃう」


うん。

こういったお店ではなくなることはほとんどないのだが。

そうだな。


「じゃあ、取り置きしといてもらおうか」


「ほんと!?」


「本当だよ。だから、先にご飯選んじゃいなさい」


「はい!!」


リリちゃんはまたメニューに視線をくぎ付けにさせて選び始めるのだった。

結局さらに十五分も選ぶのに時間がかかっていた。

そして、選んだのはジュナサンの看板メニューのドリアだった。

早速店員を呼ぼうとボタンを押す。


ピロリロリ~ン


「あ!」


「ど、どうした?」


急にリリちゃんが声を上げる。

その視線はボタンを捉えていた。


「押したかった?」


「うん」


なるほど。

確かに、俺も小さなころはこういうのを押したがったな。

……。


「押していいよ」


「いいの?」


「まあ、あと一回くらいは」


「うん!」


ピロリロリ~ン


リリちゃんがボタンを押すと再度独特なメロディが流れる。

満足そうな笑顔を向けてくる。

こんな事で笑ってくれるなら、安いもんだな。


「ご注文お伺いします」


「いちごのぱふぇ、のこしておいてください!」


俺が注文する前にリリちゃんが店員に大声で注文する。

その光景に思わず笑みがこぼれてしまった。

店員のお姉さんも優しく微笑んでいる。


そうだね。

それが一番大事だもんね。


「すみません。食後にお願いしてもいいですか?」


「はい、かしこまりました」


「それと、ドリアとハンバーグセットを」


「では、繰り返しますね。――


店員のお姉さんは注文を取り終えるとバックの方に戻っていくのだった。

リリちゃんはメニューを再度取り出して表紙と裏表紙を見比べている。


「ぱぱ、このえちょっとちがうよ」


「ああ、間違い探しになってるんだ。全部で十個あるらしいから、探してごらん」


「うん」


そして、リリちゃんは視線を落としてしまう。

その時だった。


「ママ、はやく!!」


子連れのお母さんたちが入ってくる。

席はまだ空いているので、すぐに誘導される。

だが、元気が有り余っているのか、子供たちは席でじっとできないようだ。

お母さんたちも注意するが、ついには数人が走り出してしまう。


「うるさいな」


つい、俺は言葉をこぼしていた。

その時ふと思い出した。


俺って子供好きだったか?

いや、そんなことは無い。

うるさいのは嫌いだし、元気すぎて、一緒にいるだけで気疲れしてしまう。

でも、リリちゃんは。


「パパ?」


いつの間にか見つめすぎていたようだ。

リリちゃんが心配そうに俺を見つめてきた。


「リリちゃんはかわいいなあって」


「パパはかっこいいよ!」


うん。

反撃されてしまった。

俺のライフはゼロだ。

もう、死んでもいい。


「リリちゃんは天使だよう」


もう、にやけてしまって、こんな顔リリちゃんには見せられない。

思わず、手で顔を隠してしまうのだった。


「お待たせしました、こちらドリアと。……、お客様大丈夫ですか?」


「だいじょばないかもしれません」


「はあ」


店員さんは白い目で俺を見ながらも、注文した食べ物がテーブルに置かれていく。

そして、さっそく食べるのだが。

リリちゃんが食べようとしない。

どうしたのだろうか?


「スプーンがひとつ?」


「そうだけど、どうしたの?」


「スープのスプーンとか、スプーンが少ない」


え、あ、ああ。

もしかして、フランス料理とかのマナーのことを言っているのだろうか。

でも、ここはそんな格式があるような場所ではないわけで。


「ここは庶民派レストランだから」


「マナー、しなくていい?」


「うん。そういう場所じゃないから」


「うん」


戸惑っているようではあるが、小さな手で大きなスプーンを掴み食事を進めていく。

本当はそういったレストランに行きたかったのかな。

レストランに来たことが無さそうだし、そういうのを望んでいたのなら、期待させたなら申し訳ない。

でも、楽しそうに食事を口に入れていく姿を見て少しほっとした。


「おいしい」


「そうか」


小さな口にドリアを入れていく姿は、もうかわいかった。

ドリアを一口入れるが熱かったのか、涙目になって、でも我慢して、飲み込む。

二口目を入れる時は、よく息を吹きかけ、冷ましてから口に入れる。

今度はちょうどよかったのか、満面の笑みを浮かべた。


「パパ、たべないの?」


「え? た、たべるよ」


おっと、リリちゃんの姿に釘付けになって手が止まっていたようだ。

早速食べ始める、のだが、視線が。


「リリちゃん、どうした?」


「な、なんでもない」


でも、分かりやすいくらいにその視線は俺のハンバーグに。

俺はハンバーグを小さくカットする。

そして、フォークに刺し。


「リリちゃん、あーん」


「え!? ぱ、パパ。それはマナーわるいよ」


「いらない?」


リリちゃんは少し悩んだ後に、小さな口を開けるので、ハンバーグを入れて上げる。


「どう?」


「おい、しい」


恥ずかしかったのか、少し語尾が弱弱しかった。

うん、満足だ。


リリちゃんがドリアを食べ終わったころ、待望のイチゴのパフェがテーブルに運ばれた。

だが、その大きさは。


「大きくない?」


メニュー表よりも二回りは大きいような。

これはリリちゃん食べきれるのか。


「あま~い!!」


リリちゃんは俺の心配をよそに早速食べ始めていた。

その姿は美味しそうに食べてはいるが、少し違和感が。


「ちゃんと座って食べなさい!」


「うー!」


先程のうるさい子供たちが目に入った。

マナーはもちろんの事、その口周りはソースなどでべたべたになっていた。

そして、リリちゃんに視線を戻す。

汚れなど一つもない。

しかも、綺麗に次々にパフェを口に入れていく。


親の教育か。


先程、マナーがとリリちゃんは言っていた。

ロアーナさんはどんなふうにこの子を育てていたのか。

少しわかったような気がした。


「パパ、あーん」


リリちゃんが俺にイチゴの乗ったスプーンを突き出してくる。

今度は俺が乗ってあげないとな。

口に入れると、中に甘みが広がってくる。


「おいしい?」


「おいしいよ」


後、一週間だけだが。


「甘やかしてもいいよな」


パパ、やってもいいかもしれない。

〇 ● 〇 ● 〇 ● 〇 ● 〇 ● 〇 ● 〇 ● 〇 ● 〇 ● 〇 ●


お願いです!

ブックマークと下にある☆☆☆☆☆を★★★★★にしていただけると嬉しいです!

面白いと思って頂けたら、感想もお待ちしてます!


● 〇 ● 〇 ● 〇 ● 〇 ● 〇 ● 〇 ● 〇 ● 〇 ● 〇 ● 〇 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ