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突然の来報に頑張ります

ピンポーン


玄関のチャイムの音がなる。

最近はネット注文とかも何もしていないはずだが、実家から仕送りか何かだろうか?

俺は重い腰を上げて扉を開ける。


「え?」


そこには見覚えのない女の子がいた。

いや、どこかで見覚えもあるような。


「パパ?」


女の子の言葉に頭の中がフリーズしてしまう。

大きく息を吸い込んで、精神を落ち着かせる。


よし、少しずつ思考が戻ってきた。

よく考えろ。

この子はなんていった?

パパ?

……。


「もう一度、なんて言った?」


「パパ」


……。

聞き間違いではなかったようだ。

そうか。

俺はこの子の父親。


「な、わけあるか!!」


「ひっ」


「ああ、ごめんね」


俺の大きな声に怯えてしまったようだ。

落ち着こう。

まずはよく思い出して見よう。


俺は沢井さわい 敬之のりゆき

東京大学 工学部 三年生。

二十一歳だ。

出身は福島で、大学入学と共に上京してきた。

現在彼女はいない。

過去にもいたことは無い。

だから、子供は「あっ」


そういえば。


「あ、もしかして、お母さんの名前ってロアーナさん?」


「う、うん」


見覚えがあると思ったら、そうだ。

彼女に似ているんだ。

高校の頃、交換留学生で同じクラスにいたのがロアーナ・パロナブルさんだ。

一目ぼれにして初恋だった。

でも、いつまでも告白できずにいた。

それは、彼女はとても美しいだけでなく、優しかった。

だから、彼女を好きな男子生徒は多くて、俺のような平凡な男では彼女の隣に立つ資格は無いと思ったからだ。

でもそうしているうちに彼女の帰国の日は近づいていき、何もできなくなる前に勇気を振り絞った。

彼女が帰ってしまう前日。

俺は告白して、お互いが好きだと確認しあって、その日のうちに夜を共にした、夢を見た。

そう、夢だったのだ。

気づいたらいつもの席で寝ていたのだから。

そして、告白もできずに彼女は自分の国に帰ってしまった。


「そうか、遠いところからよく来たね」


「うん」


たぶんこの子が彼女の子供であるのは間違いない。

だが、この食べてしまいたいほどの可愛らしさは俺の遺伝子が入っているとは思えない。

このぱっちりとした大きな目。

ふわふわのブロンドの髪。

真っ白な肌。

そのどれを見ても純日本人である俺の特徴がないのだ。

だから、この子の父親は俺ではないだろう。


「お母さんは?」


「いない」


「どこかな?」


「アプセント」


あぷせんと?

聞いたことが無いな。

でも、名前から日本の地名ではないだろう。

とりあえずは。


「警察か」


「ケイサツ?」


警察は分からないか。

まあ、どう見ても日本人じゃないし、国が違うからだろう。

国も違えば、文化も言葉も違うからな。

……。


「そういえば、日本語上手だね」


「ニホンゴ?」


「今、君がしゃべ「リリターナ」


「えっと」


「リリはリリターナ」


「……。じゃあ、リリちゃん」


「はい!」


うん。

かわいいなあ。

こんなかわいい子を見ていると俺も早く子供が欲しくなってくる。


「じゃなくて、日本語はお母さんに習ったの?」


「ニホンゴ知らない。なに?」


「ここの言葉以外の、あるでしょ?」


「?」


もしかして、日本語以外しゃべれない!?

でも、そうなるとこの子は日本で育ったのだろうか?

色々知りたいこともあるが、これ以上は踏み込まない方がいいだろう。


「とりあえず、着いてきてくれるかい」


「はい!」


~~~


「なるほどね。確かに見た目は全く似てないね」


警察署のお姉さんは俺とリリちゃんの顔を交互に見ると納得したように頷いた。

場所は変わって、最寄りの警察署に来ていた。

どういうわけか、リリちゃんの手を引いて入ってきた俺をまるで獲物を見つめるような鋭い眼光で厳ついおじさんたちが睨んできたのが怖かったが、このお姉さんは違うようだな。


「ちなみに、誘拐、とかで連れてきた訳じゃないよね?」


「は、はい!」


いや、お姉さんも同じようだ。

鋭い眼光がおじさんたちと同じだった。

そんなに犯罪者に見えるだろうか?


「じゃあ、こちらで預かるから」


「お願いします」


俺はリリちゃんをお姉さんに引き渡そうと背中を押す。

だが、リリちゃんは俺のズボンをつかんで離さない。

明日提出の課題があるから早く帰りたいのだが。


「リリちゃん」


少し強めに更に背中を押そうとした時だった。


「パパ」


そう言って、泣きそうな顔を俺に向けてきたのだ。

そんな顔されても、俺は。


「あの、少しいいですか?」


警官のお姉さんが先ほどとは違う視線を向けてくる。

その目は何かを疑うような目だ。


「もしかして、本当は自分の子供なのに育てるのがめんどくさくなってここに預けに来た、とかじゃないですよね?」


「な、なんで、そうなる?」


「最近多いのよ。適当な理由付けて子供素敵来るのが。でも、ここは児童相談所じゃないよ。それに子供作っちゃったなら、育てるか。その前に堕胎するか。そもそも、出来るような行為をするなってのよ! それは子供を作るようなパートナーすらいない私への当てつけかコノヤロウ!!」


「え?」


話がそれてないか?


「私だって、こんな年になるまで結婚はおろか、恋人ができないなんて思ってもみなかったわよ。でも、頑張ってダイエットやエステで女磨いたって、警官やってますとかいうと、周りの男どもが逃げていくのよ! 仕方なく、結婚相談所に行って高い会費払って、相手を見つけようとしたけど、なかなか見つからないし、見つかってもお金目的のクズ男だったり、変な宗教の勧誘だったり。もう、警察がどうとか言ってられなくなってSNSとかで、詐欺じゃね、って自分で思ってしまうほど写真加工して、男を引っかけようとしたらまさかの同性愛者の女の子だったり。でもその子、かわいいくせにたまに見せるかっこよさにキュンとしちゃって、もう女の子でも一人じゃないならいいかななんて思っちゃったり。でも、一歩手前で踏みとどまったわよ。それでも焦りがひどくって。ねえ、私って男から見たらそんなに魅力は無いの? ねえ、私って、結婚できない? どう思う!?」


どう思うって、聞かれても。


「運命の出会いを、待つしか「っち」


今、このお姉さん舌打ちしたよ。

聞かれたから、率直に返しただけなのに。

警官でしょ!?


「はあ、でもね。リリちゃんのなつきっぷりから、素直に親子関係じゃないって判断できないのよ。見た目はぜんっぜん似てないけど!」


そんな、強く言わなくても。

自分でも自覚はあるが。


「私の妹にも子供がいるからわかるけど、見知った程度の大人にはそんなにそんなに懐かないの。確かに、殺しちゃうような親と比べれば百倍ましだろうけど。子供は何よりも頼りにできるのは親だけなのよ。もし、自分が子供だったらって思わないの? 自分は親にどうやって育てられたか覚えてないの?」


「いえ、親には感謝してもしきれませんが、それ以前の問題と言いますか」


「よし、そこまでいうなら、これをしようじゃない」


そう言って渡されたのは、綿棒と滅菌済みのケースだった。

これ、警察物のドラマで見たことあるぞ。


「DNA鑑定してあげる。もし違ったら、タダね。でも、父親だって結果が出たら、鑑定代一万三千円払ってもらうから」


「マジか」


でも、ほぼリリちゃんが俺の子供だなんてありえない。

まあ、これぐらいはしてもいいか。


「分かりました」


「じゃあ、口の中の頬側の粘膜をこすってね。リリターナちゃんはお姉さんがやるね」


そう言って、綿棒を渡される。

リリちゃんも少し嫌そうだが、素直に口の中に綿棒を入れてDNA採取に協力してくれる。


「いたっ」


「ごめ「なにしてるんですか!?」


俺はすかさずリリちゃんを引き寄せて、抱き寄せる。

なんだかんだ言っておいて、子供にいたい思いをさせるなんて。


「パパ!」


痛かったのかリリちゃんも俺の服を強く引っ張る。


「ごめんなさい。まさか、虫歯があるとは思わなくって」


「虫歯? リリちゃん口の中見せてもらってもいい?」


リリちゃんの歯を見ると、お姉さんの言う通り一番奥の歯が少し黒くなっている。

何か暴力を振るわれたわけではないようで一安心した。

でも、この虫歯は今は触れなければ痛くないだろうが、このままにしておくと悪化するのは火を見るよりも明らかだろう。


「リリちゃん」


「なに?」


「歯医者さん行こうか」


「ハイシャサン? 分かった」


ああ、たぶんリリちゃんは歯医者さんがどういう所か分かってないな。

分かっていればこんなうれしそうな笑みは浮かべない。


「……」


「何ですか?」


何か視線を感じて、視線を向けるとお姉さんが驚いた眼をしていた。


「本当に親子なんじゃないの?」


お姉さんの言葉に俺はため息をこぼすのだった。

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