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世界の理(ル)

本編の感想の返信で時々書いていたのですが、この世界の設定についての話です。

セイランが知らないので、本編では出て来ませんでした。ルナールルートです。

私の名前はミリア、先日成人したばかりの猫獣人の女の子よ。

私にはまだ誰にも話したことのない秘密がある。

それは、前世の記憶があるということ。

思い出したのは、8歳の時に木から落ちて頭を打って意識を失った後。目が覚めて鏡を見て、ビックリしたわ、だって頭に黒い猫耳があって、お尻には黒くて長いふさふさの尻尾が生えてるんだもん。リアル猫耳と尻尾ってこんな風に生えてるんだ、と自分の耳と尻尾だけど散々触りまくっちゃったわ。

私が住んでいるのはヴァッハフォイアという獣人族が多く暮らす多種族国家の国で、私は猫獣人族の族長の孫娘だった。

黒髪の猫獣人で名前はミリア・・・?それって、前世で散々嵌ってやり込んだ乙女ゲームの2の主人公の名前じゃなかった?!


1はフランスっぽいアルトディシアという人間族の大国を舞台にした宮廷恋愛で、2は中華っぽいヴァッハフォイアで様々なイケメン獣人族を攻略するのだ。

1と2で国と種族が変わるから当然なのかもしれないけど、ガラッと攻略対象が変わって、国や種族によっての法や考え方も違って、すごくよく作り込まれた世界観だ、て話題になったけど、ネット上のインタビューでゲームクリエイターの人が、実は夢で見た世界をゲームにしてみたんだ、て答えていたのを覚えてる。

てことは、この世界は乙女ゲームの世界というよりも、ゲームクリエイターの人が見た夢の世界?卵が先か、ヒヨコが先か、て話かもしれないけど。設定集とかファンブックとかも買って読み込んだからわかるけど、結構ゲームとは色々と違うのよね。


でも私がミリアで、ここはヴァッハフォイアなんだから、2の攻略対象に会えるってことかもしれないよね?!1の表はキラキラしてるけど裏はドロドロした宮廷恋愛も好きだったけど、2の強くて情熱的な獣人族の方が個人的には好みだったのよ、筋肉好きだし。

特に好きだったのが、狐獣人族のシュトースツァーン家4兄弟よ。4人とも美形で強くて頭良くて、しかも攻略すると絵に描いたようなスパダリになるのよね。イケオジの先王の虎獣人や現王の狼獣人もいいけど、やっぱりシュトースツァーン家の4兄弟よ。特に長男のルナール様はかっこ良かった。ステータス的には実はヴァッハフォイア最強なのは王様じゃなくてルナール様だし、主人公が攻略するまでは割と女好きで遊び人なのに、主人公のことを好きだと自覚した瞬間から、主人公以外の女には一切見向きもしなくなるのが最高にいい。シュトースツァーン家の4兄弟はそれぞれが魅力的なんだけど、4人とも唯一人と決めた女ができたら絶対浮気しないのよね。


よっしゃ!将来は玉の輿に乗ってスパダリに溺愛されて暮らすのよ!そのためにはスキル上げなきゃ!

ゲームと違ってレベルやスキルがわからないのが難点だけど、とにかくシュトースツァーン家の男が女に求める基準値は高かった。特にルナール様の理想値は高くて、何度リセマラしたことか・・・初期値が高くないと到底求められるレベルまで上げられなかったのよね。シュトースツァーン家の男は獣人族には珍しく頭の良い女が好きで、まずは知力をマックスにしないとならなかったんだけど、どれだけ勉強したら知力マックスなんだろう?幸いうちは猫獣人族の族長の家だから、教育はきちんと受けられる。将来的にシュトースツァーン家4兄弟に会える宰相府に、文官として勤められるように頑張らなきゃ!


それまで遊んでばかりで勉強なんて嫌がって逃げ出していた娘が豹変したようにがり勉になったのを家族は心配したけど、これは将来イケメンスパダリに溺愛されるための投資なの!

ゲームだと、冒険者のレベルは1~10が青銅、11~20が鉄、21~30が銅、31~40が銀、41~50が金、51以上が白金でわかりやすかったんだけど、ゲームと違ってレベルなんてわからないし、そのランク毎の魔獣を討伐したり、何かを採集してきたりしないとランクアップできないから、実際にはレベル50だけどランクは銀、みたいな冒険者もいるみたいだし、当然パラメーターもわからないから、私の知力がどのくらいなのかもさっぱりわからない。前世では偏差値高くもなく低くもない普通の大学生だったからなあ、それに獣人族は頭の良さよりも強さを重視するから、成人するまでに猫獣人語と大陸共通語以外に10言語を話せるようになった私は一族一の天才扱いよ。強さ的には多分銅から銀くらいだと思う。シュトースツァーン家の男は女には強さはさほど求めないけど、それでもある程度自分の身を守れる程度の力はないとダメなのが獣人族クオリティ。

幼馴染のアルトには、そんなに勉強ばっかりしてどうするんだ?て呆れられてるけど、このまま何もしないと私は多分このアルトとくっつくことになると思うのよね、ゲームでは1番攻略難易度の低い相手だったし。多分、今のパラメーターで既にこいつの基準値はクリアしている気がする。青と金のオッドアイの白猫獣人で、見た目はなかなか好みなんだけど。


「王都に行って試験を受けて宰相府に就職するの。私は猫獣人族の里だけじゃなくて、もっとたくさんのものを見て色々な種族と会ってみたいのよ!」


「宰相府なんて国中から頭の良い奴ばっかり集まってくるところで、なかなか入れるところじゃないだろ?色々見たいなら冒険者でいいじゃないか」


本やゲームでなら冒険者は楽しそうだけど、現実に魔獣を倒してさばいたりとか、何日もお風呂に入れないとか、そんなの生理的に無理!いや、流石にこの世界で記憶戻ってから魚や肉をさばくくらいはできるようになったけど、それはまな板の上で包丁を持ってすぐに手を洗える環境で、という条件付きよ。前世では大学に入って独り暮らし始めてから料理始めたからそんなにできるわけじゃないけど、それでも焼く煮る生しか調理方法がなかったら自分でやらざるを得ない。おかげで私はこの里では、頭が良くて料理上手で可愛い最高の嫁候補だ。王都に行ったらもっと美味しいものが食べられるのかなあ。


「冒険者じゃなくて、私は宰相府に文官として就職するの」


冒険者になったら会えるのはシュトースツァーン家末弟のレナート様だけじゃない。先代王ディゲル様と現王ウルファン様には会えるけど。それにレナート様とは会えるけど、宰相府で会うよりも攻略難易度は高いのよ、まずは宰相府に入れる程度の頭がないとシュトースツァーン家の4兄弟は見向きもしてくれないってことなの。ゲームなら、試験までに知力を一定値まで上げれば文官ルートに入れたけど、実際の試験はどうなんだろう?


「仕方ねえなあ、俺も一緒に王都に行ってやるよ、ミリア1人で行かせるのは心配だからな。俺は冒険者になるけど」


別に一緒に来てくれなくてもいいけど。とは流石に言わなかった。進学や就職で都会に行くのに、気心の知れた幼馴染が一緒に行ってくれるというなら安心だし。




無事試験に合格した私は宰相府で働き始めた。国中から戦闘よりも頭脳労働の方が得意、という獣人族としては珍しい人達が集まってくるので、独身者のための寮もあるし、色々な種族がいる。里にいるとほとんど猫獣人族しかいなかったからとっても新鮮!書類の書式も統一されててわかりやすいし、脳筋が大半を占める獣人族の中で普通に知的な会話を楽しめるというのもいいし、大きな図書館もある。

そして食堂のご飯が滅茶苦茶美味しい!

もう、このご飯を食べるためだけでも、宰相府に来て良かった!と言えるくらい美味しい。焼く煮る生だけじゃない、様々な香辛料を使って色々な調理方法で作られた前世で食べていたような美味しいお料理が日替わりで出てくる。

それは誰もが思っているみたいで、毎年新人は食堂で感動して泣き出すようなのも何人もいるみたい。


「こんなに味が変わったのは実は最近なのよ」


「そうなんですか?」


先輩の兎獣人のルーシーさんが笑いながら教えてくれる。兎獣人はナイスバディの美女揃い。前世でもバニーガールなんてのがあったくらいだもんね。


「宰相閣下と弟君の1人がアルトディシアから人間族の奥方を連れて帰国されてね。それから料理が劇的に変わったの。宰相閣下の奥方が特に料理の味にはうるさい方らしくて、その伝手で街中にも他国から色々な商会が支店を出し始めたのよ」


・・・え?


ちょっと待って。

宰相閣下ってレーヴェ様じゃないの?!

私の知っているゲーム展開では、まだルナール様達の父親のレーヴェ様が宰相のはずなんだけど?!

てっきりレーヴェ様だとばっかり思ってたから、入職したばかりの下っ端文官の私は現宰相の名前も確認していなかった。


「宰相閣下に会うことなんてそうそうないだろうけど、会ったらじっくり眺めておくといいわよ、すっごい色男だから。残念ながら既に妻子持ちだけどね」


パチンとウインクするルーシーさんはお色気むんむんの美女だけど、私は頭が混乱して何も言えなかった。




それから私が同僚たちから情報収集した結果、ルナール様とロテール様は冒険者時代にアルトディシアの王女様と公爵令嬢と恋に落ちて、それぞれ嫁として連れ帰ってきたらしい。ロテール様が連れてきたのは王女様のステファーニア様、て1のライバル令嬢の1人じゃない!確か、フォイスティカイトの王子様を攻略しようとすると、その婚約者として登場するのよね。でも1にロテール様なんて影も形も出てこなかったはずなんだけど。そしてルナール様が連れてきたのは公爵令嬢のセイラン様・・・て誰?セイランて。1の攻略対象のアルトディシアの3人の王子様にはそれぞれ公爵令嬢の婚約者がいたけど、セイランなんていた?


混乱する頭で歩いていたらどうやら道に迷ったみたい。見たことのない場所に来ちゃった。宰相府は広すぎてまだどこに何があるのか把握できていないのよね。誰か通りかからないかな。あ、服の影が見えた!


「あの、すいません!道に迷ってしまって!」


回廊を曲がっていく後ろ姿を慌てて追いかけて声をかける。宰相府は広いから、新人のうちは道に迷っていても訊けば誰でも教えてくれる、て言われたし!


「うん?新人か?」


あ、あれ?この腰にくる低い美声はもしかして?


振り向いた背の高い黒髪の狐獣人は、前世で全スチルコンプしたルナール様だった!

そうだった!ルナール様との出会いイベントは、宰相府の中で道に迷って教えてもらったのよ!


「は、はい!財務部に配属されたミリアと申します!」


うっぎゃー!イケメン!イケボ!やっぱり好き!


「そうか。私もそちらの方に用があるから、連れて行ってやろう」


「ありがとうございます!」


くうっ!やっぱりかっこいいわ、ルナール様!一体誰よ、セイランて?!

途中、わかりやすい目印を教えてくれながら歩くルナール様は優しくて、私はいつの間にかルナール様を攻略していたセイランという人間族に恨みを募らせた。

ロテール様はルナール様と顔はそっくりだけど、結婚すると閨ではちょっとS気質入ったりして、それが堪らなく好き!という人と、ちょっと・・・という人に分かれたけど、ルナール様は本当に全力で溺愛してくれる人なのよね、ゲーム知識だと。


「ほら、ここまで来れば大丈夫だろう?」


「はい、ありがとうございました!」


優しく微笑んで去って行くルナール様の後ろ姿をぽーっと眺めていると、その先から何人かが歩いてくるのが見える。


「セイラン!」


え?セイラン?

ルナール様が物凄く嬉しそうな声で前の方から来る人に声をかけるのが聞こえる。


「まあルナール、迎えに来てくださらなくても、執務室まで行きますのに」


セイランと呼ばれた人は、長い銀髪に眼鏡をかけた、でもなんか顔の印象がぼやけてよくわからない人で、でもそれをルナール様が抱き締めるのが見えた。


「最近忙しくて帰れてなかったからな、お前に会いたくて堪らなかった」


そうそう!こういうセリフをさらっと言ってくれる男なのよ!

て、そうじゃなくて!


「ちょうどいい、試してみよう。ミリアといったな、こちらへ」


ルナール様が振り返って、ぼーっと眺めていた私を手招きする。


「これは私の妻なんだが、どのように見える?」


あ、本当に奥さんなんだ、やっぱり結婚してるんだ。

ずーん、と気分が沈むのがわかるけど、質問の意味はよくわからない。


「ルナール、それでは彼女がよくわかっていませんよ。ミリアさん?私の顔の印象がどのように見えますか?」


「印象、ですか?申し訳ありません、なんだかぼんやりしてよくわからないのですが・・・」


ぼんやりした印象だけど、その人がにこりと笑ったのがわかった。


「それで良いのです。どうやら成功のようですね」


「これで人目を気にせずに宰相府で書類仕事を手伝ってもらえるな!」


「あの・・・?」


「ああ、すまないな。妻はかなり目立つ外見なので、それを目立たなくする魔術具を作成したんだ。既に妻の顔を見知っている者には効果がないが、知らない者にはぼんやりとした印象に見えるように。邸の者は皆妻の顔を見知っているから効果の程がわからなくてな」


上機嫌でセイランという妻を抱き締めているルナール様が教えてくれるけど、私は何が何やらさっぱりよ。


「女相手なら問題ないだろう、セイラン、素顔を見せてやれ」


私がきょとんとしているのに気付いたルナール様が、セイランという妻の眼鏡をすっと外す。

そこで顕になった絶世の美貌を見た瞬間、私は日本語で叫んでしまった。


{シレンディア・シルヴァーク?!なんで1のライバル令嬢がこんなところにいるのよ?!}


シレンディア・シルヴァーク、1の攻略対象の1人第2王子様の婚約者で、その兄弟も攻略対象だった究極のチート令嬢だ。完璧すぎて可愛げがない、何を考えているのかさっぱりわからない、とプレイヤー達に言われ、確かノベルズ版ではゲームとは展開が違ったはず。


「ワンノライバルレイジョウ・・・?」


ルナール様が訝しげな顔をする。


「・・・ああ、なるほど、ご同輩というわけですか。ルナール、彼女と少しお話いたしましょう、空き部屋をお借りしてもよろしいですか?」


「構わない。俺も同席するがな」


私が指さして叫んだせいで、私に殺意バリバリ向けていた護衛の人達を部屋の外で待たせて、空いている部屋にルナール様とシレンディア・シルヴァークと3人で入る。すっごく気まずい。


「ミリアさん?貴女も前世の記憶持ちということでよろしいでしょうか?」


シレンディア・シルヴァークがにこやかに訊いてくるので、黙って頷く。

貴女も、てことはこの人も記憶持ちってことよね。1のライバル令嬢が一体どうやって全く接点ないはずのルナール様と知り合って妻の座を得たのよ?!


「お前が前に教えてくれた、違う世界の記憶をこの娘も持っている、ということか?」


「ええ。ただ、それが同じ世界の同じ時代の記憶なのかどうかはわかりませんけれど。私のことを1のライバル令嬢と言われましたが、私にはそれが何のことなのかわかりませんので」


え?自分が乙女ゲームのライバル令嬢だって自覚ないの?

いや、ゲームやってなかったらそもそも知らないよね。

同じ世界の同じ時代?SFとかの並行世界とかいうやつかな?


「えっと、シレンディア様はあの乙女ゲームやってないんですか?」


「乙女ゲーム、ですか?申し訳ありません、P〇Pくらいまではいくつかやっていたのですが、ゲームがスマホメインになってからはゲーム自体をほとんどやらなくなっていまして・・・この世界はゲームに似た世界なのですか?」


年代がちょっと違うのかな、私はP〇Pを名前でしか知らない。


{ええと、私が前世の記憶らしきものを思い出したのは8歳の時なんですけど、前世でやったことのある乙女ゲームの世界にすごく似てるな、と思ったんです。1はアルトディシアが舞台の宮廷恋愛で、シレンディア様はアルトディシアの第2王子様の婚約者として登場していました。ヴァッハフォイアは2なんです}


ルナール様本人に意味が分かるかどうかはわからないけど、攻略対象とかは聞かせたくなくて日本語で話す。根掘り葉掘り突っ込まれて、自分たち兄弟がゲームの恋愛攻略対象だなんて知られるのお互いに嫌じゃない?


{なるほど。ちなみに1の主人公はユリアさんという名前ですか?}


{あ、はい、そうです。知ってるんですか?}


そこでシレンディア様はにこりと笑った。


{私がアルトディシアで婚約者の第2王子に婚約解消されて、真実の愛をみつけたと言われたお相手がユリアさんでしたので}


うわー・・・

そのユリアさんが私達みたいに前世の記憶持ちかどうかは知らないけど、第2王子様を攻略したんだ・・・

こうして現実に婚約破棄された、て話を聞いちゃうと、ゲームだとやった!攻略成功!スチルゲット!としか思わないけど、実際にはかなりひどい話よね、子供の頃からの婚約者だったはずなのに。

その点2は攻略対象に誰も婚約者はいないはずだったんだけど。シュトースツァーン家4兄弟にはライバルになる嫁候補の一族の女達が何人かと、小姑の妹となかなか迫力のある姑がいるけど。


{あ、お互いに政略結婚の相手としか思っていませんでしたので、公衆の面前で婚約破棄されるとかではなくて、穏便に婚約解消して、私は慰謝料を頂いてそれを機にセレスティスに留学しましたので、全く遺恨はございませんのよ。留学中にルナールと出会って求婚されてヴァッハフォイアに嫁いできましたし}


・・・あ、さいですか。

なんかちょっと同情して損した気分。

好みの問題だと思うけど、私的には確かディオルト様だっけ?アルトディシアの第2王子様よりもルナール様の方が遥かにいい男だと思うから、全然いいじゃん。

しかもこのぶっ壊れ性能のチート令嬢なら、ルナール様の厳しい基準も軽々とクリアしたんだろうし。だってこの人、登場時からゲーム上のステータス全てマックスだったはずなんだよ?!ルナール様が求める知力、交渉、政治、経済、語学、礼儀作法とかだけでなく全部!


{・・・でも、私の知っているゲーム知識とは色々違うところもあるので、どこまでゲームの世界と一緒なのかはわかりません。開発者のインタビューを見たんですけど、夢でこの世界を見てゲームにした、と言っていたので、この世界の方が先にあった可能性の方が高いかもとは思っています}


1のライバル令嬢が2人も何故かヴァッハフォイアに嫁入りしているしね。この人もなんでかセイランとか呼ばれてるし。


{つまり、貴女の知識ではこの世界は乙女ゲームの2以降の話でルナールも攻略対象だった、ということでしょうか?}


・・・察しがよろしいことで。


{・・・そういうことです}


{申し訳ないのですが、ルナールは私の夫ですので他の方の攻略をお願いいたします。ロテールも攻略対象でしたら外してください、既婚者ですので。2人ともシュトースツァーン家の家訓として浮気はしませんので}


{・・・家訓なんですか?}


それは初耳。


{シュトースツァーン家の男は結婚したら、夫の女性問題などというつまらない心労を妻にかけないように浮気は絶対にしてはいけない、という家訓があるそうですよ}


なるほど。それはゲームには出てこなかった設定だなあ。


「セイラン、そろそろ俺にもわかるように話せ」


黙って私達の日本語の会話を聞いていてくれたルナール様が、そろそろ痺れを切らしたらしい。


{あ、そういえばなんでセイランなんですか?シレンディア・シルヴァークですよね?}


最初からシレンディアて名で通っていたらすぐわかったのに。


「私の名が、シレンディア・フォスティナ・アウリス・サフィーリア・セイラン・リゼル・アストリット・シルヴァークだからですよ。セレスティスに留学中はセイラン・リゼルと名乗っていたからです」


そうか、6つ名持ちだったね、この人。

アルトディシアでは名前の数はかなり重要だけど、ヴァッハフォイアでは魔力が多いか少ないかだけの問題で、日常生活では名前の数はさほど重要視されてないもんね。6つ名持ちだけはどこの国でも特別みたいだけど。


「さて、2人でなんの話をしていたのか教えてもらおうか?」


「こちらのミリアさんは、前世でこの世界のことが書かれた本を読んだことがあるそうですよ。その本の中で、1巻はアルトディシアのことが中心に書かれていて、私は1巻にしか登場していないはずなのに、何故2巻以降のヴァッハフォイアにいるのかと驚いたそうです」


上手にごまかすなあ。


「お前がヴァッハフォイアにきたのは、予定調和ではないということか?まあ、確かに本来6つ名持ちが自国を出るなんて滅多にないからな。だが、神々も俺をお前の守護者として認めてくれたし、俺はお前を離すつもりはないぞ?」


くーっ!いいなあ、神々が守護者として認めてくれたとか何のことかわからないけど、さらっと独占発言!


「いえ、どうやら、この世界のことを夢で見て知った作者が、虚構を織り交ぜて書いた冒険譚のようですので、問題ないでしょう。貴方と結婚したのは私の意志ですから」


乙女ゲームを冒険譚とか言っちゃったよ、いや、複数の男の中からヒロインが好みの男を選んで攻略するゲームとか言われるよりよっぽどいいけど。


「それならいいが。お前と同じような知識を持っているなら、適当に権限を与えて何か開発させるか?」


え?いやいやいや、私は大学英文科だったから、何か作ったりとかはできないよ?そういう知識も技術もないし!だからこそ、玉の輿狙いだったんだし!

私に視線を移したルナール様に慌てて首をぶんぶんと横に振る。


「ルナールがこう言っていますし、何か作りたいものとかありませんか?私は色々作りましたよ。フリーズドライとか、ポーションの味の改良とか、各種サプリに美容グッズに健康グッズ、料理もかなり再現いたしました」


「あ!宰相府の食堂があっちのファミレスメニューみたいな料理を出すのって、シレンディア様のおかげだったんですか?!」


なんと!それだけでルナール様を先に攻略されちゃった恨みが帳消しにされるわ!


「ええ、そうですよ。ルナールに宰相府の食堂の料理人達を、シュトースツァーン家の料理人達と一緒に最初に教育してくれ!と頼まれましたので。お気に召しました?」


「ものっすごく、お気に召しました!うちの里でも、最初に記憶が戻った時、焼く煮る生しか調理方法がないってどういうこと?!て思って、あんまり得意じゃなかったけど料理始めましたもん!大学英文科なんかじゃなくて調理師学校にでも行っておけば良かった!とどれだけ思ったか!」


「私も料理は趣味程度なのですけれどね。この世界で前世の記憶を思い出してから、色々作っております」


思い出して色々作っております、てさらっと言ってるけど、よっぽど色々知識ないと難しいよね?私はただの女子大生だったけど、この人前世で何やってたんだろ?


「あの、私は特に何の知識も技術もない英文科の女子大生だったんですけど、シレンディア様は前世では何を?」


「外資系の企業で管理職をしておりましたけど、もう定年間近でしたのでそれなりに蓄積されている知識がございまして、どうにかそれを再現できるように奮闘中ですわ」


定年間近って、前世のママより年上じゃないの。それは年代違うわ。しかも外資系企業の管理職って、バリバリのキャリアウーマンじゃない。チート令嬢は中の人もエリートだったのね。




なんか色々と納得して、気を取り直してリーレン様かレナート様を攻略しようと思ったんだけど、私はこの時はまだ気付いていなかった。


リーレン様もレナート様も義姉としてあの人を見てるから、ゲームなんか目じゃなくやたらと女に求める基準値が上がっちゃってるということを!


ルナールルートでもセイランはルナールに寝物語で前世の記憶のことを話しています。本編でも言っていますが、特に隠していたわけではないので、なんでそんなおかしなことばかり知っているんだ?と聞かれてさらっと答えています。

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― 新着の感想 ―
[一言] セイランの中身が自分より先輩だったと知って「さん」付けにしようと思いましたw今後はミリアちゃんのお話も楽しみにしています。
[一言] 番外編の更新もありがとうございます! そして設定の話も本編で見れて良かったです!! こうやって他の転載者の人も出るとセイランさんがどれだけ規格外かということが余計に浮き彫りになりますね笑笑 …
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