衣裳問題(共)
本日コミックアーススターにて由那先生による「婚約解消のち、お引越し。セイラン・リゼルの気ままで優雅な生活。」のコミカライズ第1話が連載開始となります。よろしくお願いします。
今話はセイランがセレスティスに出発する直前の話です。
セレスティスに行くにあたって、私の荷物は特に問題ないのだが、侍女2人の衣裳問題が持ち上がった。
貴族家の侍女にはその家によって決まった衣装がある。
つまり、衣裳を見ただけでどの家の侍女か一目でわかってしまうのだ。
シルヴァーク公爵家の名を隠して留学すると決めているというのに、侍女の衣裳で家がバレバレなのである。
アルトディシアからの留学生や商会がまとまってある地区でそんな衣裳を着た侍女がいたら、わかる人には一目でわかってしまうのだ。
しかし、平民の下働きと違って、貴族の侍女は割とその衣裳に誇りと愛着を持っているらしいので、主の私が衣裳に拘りはないから好きな衣裳で仕事していいよ、とは言い難い。
ちなみに、シルヴァーク公爵家の侍女衣裳は年齢や仕える相手によって裾丈や刺繍は違うが、青地に銀で刺繍の入った割とノーブルな感じの衣裳である。貴族の侍女は掃除や洗濯なんてしないしね、主の身支度はするけど。掃除や洗濯は平民の下働きの仕事である。
護衛騎士ももちろんシルヴァーク公爵家の騎士団の制服があるのだが、騎士はこっそりと行動することも多いので、制服以外の騎士服も色々持っている。それに貴族の男性は動きやすい衣裳として騎士服を着ることも多いし。
「お嬢様、私が文官ではなく侍女を選びましたのは、衣裳が支給されるからでございます。私の家の事情をご存知のお嬢様ですから正直に言いますが、文官として自前で衣裳を揃えるだけのお金が我が家にはありませんでしたので!」
本当に正直にぶっちゃけてきた私の面食い侍女イリスは、実はというと失礼だが、かなり頭が良い。文官として就職してくれても良かったのだが、文官には特に決まった衣装がないのだ。まあ、私の身支度の他に手紙の代筆とかもしてくれているので、半分は文官としても働いている。
「わかりました。急いで2人の衣裳を考えましょう。どのような衣装が良いか希望はありますか?」
「あまり奇抜な衣裳でさえなければ何でも構いませんわ。セレスティスではこれまでのアルトディシアの生活と違って、他家とのお茶会や夜会もないでしょうし」
クラリスの言葉にイリスも頷く。
そうなんだよね、社交をする主の身支度をして、それに付いて行くのが侍女の仕事の大半のようなものなのだ。それがなくなるからこそ、私の身の周りの世話をするだけなら侍女も2人だけでどうにかなるだろうと思っている。
ああ、いっそ、メイド服でもデザインしてみるか、前世と違ってこの世界にメイドというのはいないし。前世のメイドというのは平民の下働きで貴族の侍女とは違ったけれど、世界が違うんだし、イリスは若いんだからゴスロリっぽいメイド服でも着こなしてくれるだろう。エプロンを何種類かデザインを用意して、お客様が来た時用にはレースやフリルを多用した華やかなものを着用してもいいし、ホワイトブリムを作ってもいいだろう。ホワイトブリム以外にも髪をまとめるのは黒と白で統一したものをいくつかデザインするか。
「まあ、お嬢様、こんなにレースやフリルをたくさん使用した贅沢なエプロンを、侍女の衣裳として支給してくださるのですか?こちらのエプロンには宝石まで付いているではありませんか」
「その代わりワンピースは黒一色で特に飾りはありませんわ。エプロンは何種類かデザインしましたので、その日によって好きなものを着用すると良いですよ」
ワンピースの丈は長い。短いのは邪道である。まあ、この世界で貴族女性がミニスカートなんて穿くことはまずないのだけれども。
前世で読んだ記憶のある漫画では、宝石店で宝石の付いたエプロンを着けて接客をするメイドもいたではないか。
そして私がついノリと悪戯心でデザインしたメイド服は、その後セレスティスで開店することになる食事処の女性従業員の制服にもなり、セレスティスの働く女性の密かな憧れの制服となるのだが、それはまだ先の話。
書籍化の際にあんべよしろうさんがメインキャラのキャラデザをしてくださったのですが、イリスがメイド服を着ていたんですね。その時に、あれ?私メイド服なんて作中で書いてないよな?そもそも貴族の侍女と平民のメイドは違うし・・・なんて思ったのですが、イリスとクラリスがイラストで登場することはほとんどないだろうし、世界が違うからメイドさんもいないし、まあいいか、なんてそのまま訂正しなかったんですが、まさかのコミカライズのお話を頂き、しまったああ!メイド服じゃないです、て訂正しておけば良かったああ!と後悔したのが、今回のSSを書いた真相です。
由那先生が最初にキャラデザしてくださった各キャラの衣裳も、このメイド服を訂正していなかったせいか、19世紀の英国みたいなヴィクトリアンな衣裳が多くて、すいません、違うんです、もっとファンタジー色の強い衣裳なんです!と訂正させていただいた経緯があって申し訳なかったです。
見開きのオスカーを見た友人が「どこのチンピラ?」と言いましたが、メインキャラでありながら書籍では結局イラストにならなかったオスカーですが、由那先生の描いてくださったオスカーは私のイメージ通りです。チンピラではありません。




