第45話「我は悪魔なり」
第一章完結。
『契約を反故にするつもりか?』
「ヒッ!?」
自身の庭であるシルツ森林を駆けていた猿亜人は、背後から聞こえてきた声に小さな悲鳴を上げた。
全速力で逃げていたのに、すぐ後ろから声が聞こえてきたのだ。ただのコボルトだと思っていた、死の獣の声が。
「ど、どこじゃ!?」
猿亜人は慌てて振り返るも、そこにあの獣の姿はない。
コボルトの姿ならばともかく、三回目の進化によって辿り着いた巨体ならば隠れることなど不可能。そして、一段階目とはいえ進化体である猿亜人の足に追いついたのならば、進化後の姿であることは確定。ならば、いないはずがないのだ。
なのに、どこにもいない。
「どこに隠れておる!?」
途中経過はいろいろあるが、結果的にはオーガですら圧倒的に下したのだ。あのコボルトだった何か――ウル・オーマは猿亜人の理解の外にいる怪物である。
そんなものに狙われているという事実に、猿亜人の身体は震える。もはや、自慢にしていた知性など全く機能していないほどに、猿亜人は恐怖以外の全てを忘れてしまっていた。
『隠れてなどいない。少々遠くから語りかけているだけだ』
「と、遠くから……?」
『方法など、貴様如きが気にすることではない。それより、我が問いに答えよ』
「と、問い……?」
『契約の内容を提示する。我とオーガとの一騎打ちの勝敗を条件として、以下の制約を行う。敗者は勝者に全面的な服従を誓うこと。その際、勝者と敗者とは一騎打ちを行った当人に限らず、その配下全てを含むものとする』
「ぐ、うぅ……」
『貴様はオーガの支配下にあった。そして、オーガは我に敗れた。よって、貴様の支配権は我に移ることとなる。その契約を、反故にするつもりかと聞いているのだが?』
猿亜人としては理不尽な話だが、自らの群れのボスの決定は絶対。それは魔物の掟だ。
オーガがその条件でいいと言ったのだから、猿亜人に拒否権など無い。猿亜人自身は敗北していなくとも、既にウルとオーガの群れは統合され、そのボスはウル・オーマに決定しているのだ。
ならば、そのボスの命令を待たずに逃げ出した猿亜人は、群れのボスに背いたということになる。そうなれば、残されているのはボスの怒りに怯えて隠れ住むか、あるいはボスを殺して新たなボスに君臨する下剋上のみである。
「い、いやいや! 決して、決してそのような考えはワシにはありませんぞ?」
ウルへの服従を拒むのならば、このまま逃げ、三大魔と呼ばれる他の強者の群れに合流する以外に猿亜人に生きる可能性はなかった。
しかし、何らかの方法で自分の所在は完全にばれているらしいと猿亜人は理解し、ならばと方針を転換する。
猿亜人はその場で膝を折り、平伏してみせたのだ。
「ワシはその、新たなる王の誕生を祝い、それを他の領域の領域支配者共に通告しなければと思いましてな」
『ほう?』
「さしあたって、オーガと互角の勢力である風の牙へと新たな王の誕生を伝え、服従を求めようかと……いや、新たな王であるウル様に確認を取らずに勝手な行動をして申し訳ない」
猿亜人は、逃げられないのならばとウルへの服従を装うことにした。
ウルの下では猿亜人が上に上がることは難しいが、まずはこの場を乗り切ることを優先させたのだ。
もちろん、本心からではない。しかし、今はこの場で殺されることを避けることが先決――
『我に服従を誓う、か。ならば、貴様の勘違いを二つ正そう』
「は?」
『前を見よ』
猿亜人は、ウルの声に従い顔を上げた。
そこには――
「あら? 誰かしら? このお猿さんは?」
「く、蜘蛛の女王……!」
森の奥から、一匹の怪物――二段進化体、アラクネが姿を現したのだ。
明確に自分を超える力を持つ強者の出現に、猿亜人の身体は強張る。しかも、その後ろから更にヤバいものが現れたことで、その場で失禁しそうになるほどの恐怖を味わうことになるのだった。
「――か、かかかかか、風の、牙ァ!?」
現れたのは、つい先ほどまでシルツ森林でも三体しかいなかった三段階目の進化に至った大魔、風の牙こと嵐風狼であった。
嵐風狼とはその名の通り、嵐と表現されるほどの暴風を操る能力を持つ獣系の魔物であり、オーガに匹敵する巨体と群れを率いる統率力を兼ね備えた絶対強者の一角である。
一対一の戦いでは風をなぎ払うオーガの方が優勢と予想されているが、集団戦となれば統率力に長ける嵐風狼が勝つだろうと言われており、もちろん単騎であっても猿亜人では千回死んでも勝ち目など無い存在である。
『……支配者が一角、嵐風狼よ。我との契約に賛同するか?』
ウルの声は、猿亜人を無視して嵐風狼に向けられた。
「……貴方の声は聞こえています。そして、答えましょう。私たち風狼の一族は、条件を呑んでいただければ貴方への忠誠を誓うと」
「はぁっ!?」
外見からは想像もできないほどに穏やかな、女性的な声により紡がれたのは、まさかの服従宣言。オーガの力を以ってしても屈服させることができないどころか、下手をすれば自分達が負けてしまう危険極まりない宿敵。それが風狼の群れだったはずである。
猿亜人は、その強大な存在が戦いもせずに頭を垂れたことに、信じられないと叫びを上げた。
「貴方の配下、アラクネより聞きました。貴方とオーガの勢力が激突すると」
『そのとおり。その結果は、既に知っているな?』
「ええ。私たちは、鼻と風で遠方の出来事も把握しています。……アラクネさんから聞いた内容は、オーガと貴方との戦いを静観すること。そして、勝ち目がないと判断した場合に限り貴方への服従を誓うこと……でしたね」
(な、なんちゅう恐ろしいことを……!)
猿亜人は心の底から恐怖を覚えながらも、理解した。
何故オーガ軍とウル軍の戦いの際、ボスであるウル・オーマに次ぐ戦力であるはずのアラクネが出てこなかったのか。
初めはアラクネは既に死んでいて、その配下だけウルが吸収したのだと思っていたが、生きているとなると話は簡単だ。
恐らく、他の大魔がオーガとの戦いに横やりを入れないよう警戒と監視を行っていたのだ。それどころか、自ら接触を持ち、オーガとの戦いを自らの力のデモンストレーションに使った……ということなのだろう。
「貴方の力は、あの咆吼だけでもわかります。私に、あれはできません。貴方が扱う多種多様な術まで加味すれば、私達が戦いを挑んでも勝算は低く、運良く勝ったとしても群れは壊滅的な被害を受けるでしょう」
『なるほど、理解が早くて助かる。……それで? 服従の対価として、何を望む? 何を以て我との契約を行う?』
「貴方――魔王ウル・オーマへの忠誠の対価として、我々風狼一族の繁栄を約束していただきたい。それが叶わなければ、我ら一族は死を覚悟して戦いに挑む覚悟です」
一族の繁栄――すなわち『風の牙』一族を全滅はさせるなという契約条件だ。
配下に入ったからといって、捨て駒にするのは禁止。戦力、労働力として使う分には従うが、種が滅ぶようなことは受け入れない――ということだろう。
その要求に、ウルの声は楽しそうに笑うことで答えたのだった。
『クカカッ! ……その程度のことでよいのか? ならば、問題は無い』
「そうですか?」
『当然だ。我の支配下に入るということは、それすなわち繁栄の約束だ。そんなことでいいのならば我に異論は無い』
「感謝します。ならば、私からはこれ以上求めるものはありません」
『よかろう。【ここに契約は結ばれた】』
次の瞬間、話の流れについて行けない猿亜人を余所に、嵐風狼の身体を不可思議な魔力が包み込んだ。
それが何かはわからないが、恐らくは魔王ウル・オーマの力なのだろうということだけは理解する猿亜人だった。
『……ああ、猿亜人よ、存在を忘れていてすまなかったな』
「は、はひっ!? い、いえいえ、滅相もありません!」
突然話を振られた猿亜人は、パニック状態だ。
先ほど、ウル・オーマへの対抗戦力として利用できるのは風の牙以外にないと結論したばかりなのに、その風の牙がウルの傘下に入ってしまった。
こうなると、もう猿亜人にウルを何とかする手段がない。取引している人間が協力してくれるはずもないし、最後の大魔――死招きの羽音はオーガ以上に話ができない本能だけの怪物だ。あれに近づけば交渉も何もなく食われてしまう以上、本当に手詰まりであった。
『先ほどの勘違いの一つだが、理解したな? わざわざ貴様が動かなくても、風の牙との話は既についているのだ』
「そ、そのようで……」
『そして、二つ目の勘違いだが……我の力を侮るな、ということだ』
「は、はい?」
『貴様は既に我が契約に縛られている。契約に反する行動を行っているか否か……その程度のことが、理解できないと思っているのか?』
地獄の底から響いてくるような、冷たい声。間違いなく、魔王ウル・オーマは怒りを感じている。
オーガを下し、風の牙すら手中に収めた紛れもない森の王の怒りだ。死招きの羽音といえどもこの戦力に対抗できるはずもなく、また縄張りの外に関心を示さない奴らはそもそもウル軍からちょっかいを出さない限り刃向かわないだろう。
もはや、この僅かな間に森の統一支配者は決定している。そんな絶対者の怒りを――殺意を浴びている猿亜人は、生きた心地がしなかった。
『最後のチャンスだ。貴様の真意を語れ』
「し、真意……?」
『我の意思に背く行為を行っているであろう? 貴様が我に服従を誓うというのならば、貴様の腹の全てを見せよ』
――その言葉に、猿亜人は産まれて以来これ以上はないというほど脳細胞を活性化させる。
まず、正直に人間と自分の関係を語るか。それは、考えるまでもなく否だ。
魔物にとって、人間とは誰しも忌むべき敵。力や敵意の有無など無関係に、突然現れては殺戮と略奪を繰り返す大罪人。それがシルツ森林の魔物にとっての『人間』である。
そんな存在と内通しているなどと知られれば、奇跡が起きてウルが許しても他の魔物達が猿亜人を許さない。
人間によって同胞を殺され、住処を追われ、ひもじい思いをした多くの魔物が、その恨みを猿亜人にぶつけるのは間違いないのだから。
「――じ、実は、人間共から奪った道具をコレクションしております。本来ならばボスに献上すべきなのですが、ついつい好奇心から――」
猿亜人は、真実の一部だけを語ることでその場を逃れることにした。
配下を売った報酬として得た道具も、略奪といえばそれは魔物的には問題の無い行為だ。隠し事であることは事実であり、人間の道具の幾つかを手放すだけでこの場を凌げるのならばそれでよしと妥協したのである。
しかし――
「もう、よい」
「あっ――」
森の奥より、ウル・オーマが声だけではなくその姿も現した。
――三段階目の進化体、死毒の邪狼の姿で。
「こ、これはウル様。ワシの不始末、心よりお詫びを――」
即座にウルに向かって平身低頭を試みる猿亜人だったが、ウルからの返答はどこまでも冷たいものであるのだった。
「悪魔相手に、嘘が通じると思っているのか?」
「は? 悪魔――」
「服従とはすなわち、命令に対し拒否権を持たないということだ。意見を述べることは許そう。代案を以って反対することも許そう。我への説得や不満も許そう。……しかし、我に対する偽り、意図的な情報の隠蔽は契約違反と見なす」
「グ――お、おのれ!」
一切温かみを感じないウルの視線に、言い逃れは不可能と猿亜人もようやく理解した。
同時に、体毛の中に隠していた小さな道具を取り出した。人間との取引で得た道具、それは――
「死ね! この化け物が!」
パンッ! という小さな破裂音が響いた。
猿亜人の手の中にあるのは、銃。人間勢力が造り上げた火薬の爆発で弾丸を飛ばす武器であり、非力な者でも一定の攻撃力を期待できるという物だ。
と言っても、猿亜人の手にあるのは隠し持つことを重視した小型の暗器のような物。剣や弓で戦った方がよほど強い、女子供用の護身用の玩具程度のものであるが。
「……銃? 珍しい玩具を持っているな」
「あ、あぁ……」
「しかし、いくらなんでもそれで俺を傷つけられるつもりだったのか? それではゴブリンを怯ませるくらいが精一杯だろう……」
当然と言うべきか、猿亜人の放った弾丸はウルの体毛にあっさりと跳ね返された。
所詮はいざ敵になったときもさほど脅威にはならない――という前提で猿亜人に与えられた玩具。この程度が限界というものだ。
「さて――明確な反逆の意思を見せたところで、執行の時間だ」
宣告の言葉と共に、ウル・オーマの身体から黒い何かが立ち上った。
それは、猿亜人の周囲を覆っていき、そして――
「【魔王の功罪・悪魔との契約】。――既に契約は成立している。契約違反の罰……それは、魂の献上である」
「ごっ!? がぁっ!?」
猿亜人の前に一枚の黒い紙切れが現れた。と、同時に猿亜人はその場で苦しみ悶える。
両手で首を掴み、引き裂くつもりなのかと思うほどに喉をかきむしる。まるで、何者かに首を絞められているかのように。
更には地面に倒れ込み、バタバタと何かから逃れようと必死にもがき始めた。
「あ、ぐ、ま……」
「そうだ、我は悪魔なり。今はこの器にあれど、本来悪魔としてこの世に生を受けし者。他の悪魔共は契約の対価として魂を得るが、我は違う。我が狩るのは、我との契約を反故にした痴れ者だ」
魔王の功罪・悪魔との契約。それは、悪魔より進化した魔王ウル・オーマの起源に刻まれた功罪。
契約対象を設定し、契約者と契約者の間で契約内容の合意が取れた際にのみ発動可能。
契約者はそれぞれに契約によって課せられた義務を必ず果たさねばならず、もし違反した場合は魂の所有権を奪われる。また、契約違反が行われているか、常に知ることもできる。
契約の力は絶対であり、たとえウル・オーマと隔絶した力の差がある相手であっても必ずその魂を徴収する。そして、魂を奪われた者は――
「汝の所有者、ウル・オーマが命じる。苦心し、死ね」
「ぐああっっっ!?」
――ウル・オーマに肉体の命令権を奪われる。
肉体は魂によって動かされているもの。もし魂を他者に奪われれば肉体は機能を停止し昏睡状態になるが、魂の所有権のみが奪われた場合は、事実上肉体の支配権まで奪われることに成るのだ。
といっても、この能力で奪った魂はさほど時間を置くこと無く肉体を離れウルの下へと向かうため、長時間操ることはできない。だが、自害させる程度の時間は十分にある。
ウルの眼を欺こうとした猿亜人は、数分悶え苦しんだ末に、糸が切れた操り人形のように動きを止めた。
その身体より、特別な眼を持ったものでなければ見ることのできないエネルギー体……魂が浮かび上がり、ウルの下へと運ばれてくる。
ウルは、その苦しみと恐怖に染まった魂を、躊躇うことなく飲み込み、食らう。
――魂とは、悪魔にとって何よりのご馳走であり、正負を問わず強い感情に味付けされた魂は至上の味となる。
悪魔が他者を傷つけ苦しめるのは、調理。より旨みを引き立てるために獲物を苦しめ、自分好みの味に仕立てるのだ。
「クククッ……久しぶりの味わいだ」
魂を捕食するのは簡単ではなく、悪魔本来の身体であっても契約を経由する必要がある。
ウルが復活してから、残されたこの功罪をまともに使えるようになったのはつい最近。もう一つの功罪により人間の悪意を食らったときからだ。
これは復活以来、初めての『本来の食事』。それを得たことで、ウルの身体は歓喜に震え、更なる力を解放していった。
「……恐ろしい、ことですね。もし私達が契約に背けば、その者と同じ運命……ということですか」
「そういうことだな。とはいえ、俺は反逆を罪とはしない。もし王としてこの俺に勝ると思ったのなら、堂々と名乗りを上げるが良い。その時は魔王として、正々堂々正面から受けることを約束する。これもまた、契約だ」
裏切りの代償を知った嵐風狼は、僅かに恐怖を滲ませた声を出した。
元々裏切る気はなかったが、絶対に逆らえない鎖を付けられた……と自覚したのである。
そんな嵐風狼にウルはニヤリと笑って己の価値観を語り、最後の仕上げを行うことにした。
「さて――最後に、面白いものを見せてやる」
「面白いもの?」
「お前にもすぐに覚えてもらうが、魔道という技術だ。その中でも、かなり便利なものだぞ?」
嵐風狼とアラクネの注目を集めて、ウルは魂を失った猿亜人の死骸の前に立った。
そのまま、自身の魔力を操り猿亜人の身体を包んでいく。その魔力量は今までウルが使ってきたどの魔道をも、凌駕している――
「[天の道/二の段/不死者創造]」
発動されるのは、世界の理の外にある説明不能の力――天の道。
それにより、猿亜人の死骸は生まれ変わった。骨格はそのままに肉が干からびていき、骨と皮だけの存在となって立ち上がる。
全身から不浄の瘴気を発し、生前はあった嫌らしい知性の光を全く感じさせない存在――アンデッドとして蘇生させられたのだ。
「ふぅ……中々疲れるが、俺はこんな方法でも兵を増やすことができる。いずれはお前達にもできるようになってもらうぞ?」
「これは……」
「ボス……ちょっと気持ち悪いんだけど」
「そうか? 便利なのだがな……」
アンデッド兵は疲れ知らずで無茶な用兵ができるため、太古の時代から愛用していた術の一つなのだ。
しかし、昔の部下にも不評であったことが多く、便利なのに何故なのだろうとウルを悩ませる一因でもある術なのだった。
「ま、まあ、とにかく、この森の平定はほぼ完了したと言えるだろう。これからは、少々時間をかけて足場がためをする必要があるな」
「足場?」
「オーガと嵐風狼を従えたことで、ようやく数は揃った。しかし、拠点一つとっても野ざらしの有様ではとても戦はできん。……今後、我らの敵は人間となるだろう。勝利のため、力を蓄える時間になるということだ」
ウルは、人の世界がある方角に目をやり、強烈な敵意と殺意をむき出しにする。
「兵を増やし、武具を増やし、術を磨き、真の軍勢を作り出す。そして、我らが奪われし全てを、取り戻す!」
ウルは、人間にこれといって恨みも情も持ってはいない。かつてウルを倒し封じたのは神々であり、人間などそのおまけ、神々の道具に過ぎなかった。
道具に恨みを持つのは愚かな話だ。魔王ウルの敵は神々であり、人を蹴散らすのはただの過程――偶々この世界で繁栄しているのが人間だからというだけに過ぎない。
だからこそ、必要な犠牲の一つでしかないからこそ、ウルは容赦するつもりはない。
ウル・オーマには、人間に対して一切の慈悲など持つ理由は何一つ無いのだから。
――その後、ウル・オーマ率いる魔王軍はシルツ森林の中でしばしの沈黙を守ることになる。
世界に恐怖と絶望をばらまく魔王の再臨は、この一年後より始まるのだ……。