猫と甘酒
寒い日には、思い出します。
高校時代、冬のある日。
僕は自分の部屋でくつろいでいた。
畳の上でごろ寝をし、のんびりと小説を読んでいたのである。
お腹の辺りには、ジュリという名の猫がぴったりとくっついて、丸くなっていた。
大人のオスなのに、とても穏やかな性格の猫だ。
猫の毛色による性格診断だと、赤茶のトラ猫はまさにそういう性格だそうである。
その一点だけで、信じても良いと思ってしまう。
そこにやって来たのは、我が母親。
お盆に湯呑みを乗せてのご登場。
熟睡していたジュリが目を覚まし、大きく伸びをし始めた。
母親も、大が付く猫好き。
伸びをするジュリを見ながら、畳の上にお盆を置き、自分も座り込む。
お盆の湯呑みには、甘酒が入っていた。
それを。
ジュリが見た。
その瞬間、僕にも母親にも、ジュリが勘違いをした事が分かってしまった。
真っ白い甘酒を、真っ白い牛乳と。
スタスタスタと、湯呑みに近寄っていくジュリ。
しかし僕も母親も、それを止めようとはしなかった。
2人とも、逆に息をひそめてしまう。
ジュリの反応を見てみたかったのである。
何の疑いもなく、ジュリは甘酒を一舐め。
「ぎゃおぅ!」と鳴いて、飛び上がった。
穏やかなジュリが、そんな大きな声を出し、そんな激しいリアクションをしたのは、後にも先にもそれだけだ。
猫はやはり猫舌なのだと実証された瞬間である。
その後、母親と2人して、ジュリの機嫌を取るのには、かなり苦労しました。
ごめんなさい、ジュリ。