甘くなれない最後の一滴
寝れたのか寝れてないのかわからない。
身体が、ココロが、何かがだるい。
脳が眠たい。
それでも、機械的に支度をして学校へ向かう。
窮屈な電車で揺られる。
(いっそこのまま帰ってしまったら、楽だろうか。…まあ、ちゃんと行くけどさ。)
道中の気だるさは、校内でも継続らしい。授業は真面目に受けているつもりだが、わからない。
いつも通り宿題を持て余すほど課された帰り道。話が目を疑った。
(あ、 だ)
なぜ居るのかわからないほど、人気のないベンチで泣いている彼女の姿に胸が締め付けられた。同時に美しくも感じた。
勇気を持って声をかける。
「ど、う、した…の…?」
「あ、 。ちょっとね…。フラれちゃった。」
素直に言ってくれる程度には信用されているのか。
「話聞くよ。」
「…ありがとう。じゃあ、言っちゃおかな」
彼女の吐露は切なかった。仮にも片想いの相手の失恋話、振り振られた関係の相手に吐いてしまうほど頑張ったのだろう。
「…だいぶ楽になったよ。ありがとね。」
「うん。こちらこそ。俺で良ければいつでも聞くからね。」
「あはは。今の彼氏っぽーい」
「ごめんね。私はワガママで、こんなに話を聞いてもらっても、まだあの人が好き。」
「…うん。わかってる。」
「…応援してね。なんて、流石に言えないけど。でも私はアピールし続けようと思う。」
彼女の笑顔は眩しいほどに、眩しすぎるほどに真っ直ぐだった。
そして、、僕の心の何かが弾けた。
告白の衝動とか、そういった類いのものではない。むしろ、清々しさで充ち満ちている。
かつて好きだった人の笑顔をもう一度見ただけで、自分の中の全てが浄化されるなんて、漫画の世界だと思ってたけど。
前を向ける。
そんな気がした。
我ながら単細胞だと自嘲気味に嗤う。
『“明日が来る”んじゃなくてさ、
“自分が行く”んだ。 自由意思で選ぶ未知へ!』
クサイ台詞だと思う。でもその通りだ。
『大丈夫。大丈夫。』
もう一度大きな声で、
大丈夫❗
もう、これできっと前を向ける。
つまづくこともあるかもしれない。でもその度に乗り越えられる、それはまるで魔法。
この言葉で、自分を、誰かを支えて、支えられて
手探りで生きていくんだ。
ここまで読んでくださりありがとうございました。
モヤモヤしたまま完結となった読者さんもいるかもしれませんが。それはそれで。
重ね重ねですが、読んでくださりありがとうございました