苦味の二滴目
『自分を認めてくれるグループに所属したい。自分を褒めてほしい。自分を認めてほしい。誰かに、認められたい。』
LINEの友達が増えた。Twitterのフォロワーが増えた。所属するコミュニティが増えた。
なのに、なぜだろう。心が、どこか物淋しい。何かが、とても大事な何かが足りていない。
( )
ふと、あの子の名前が浮かんだ。思いを寄せたヒロインだ。
もう、あの子とは学校が違う。出逢える確率はゼロに等しい。出逢ったとして、届かない。
(届かないこと、わかってたのに。あー、貴女に会いたいな)
ポエムチックな歌詞が頭をよぎる。
ああ、そうか。足りないものは感情か。もっと言えば、熱く夢中になるような、回りが見えなくなるほど熱中できる存在だ。その心だ。
思えば、この年は環境の変化に慣れず、落ちついて熱中できるものがなかった。
ふと、外界と自分とを繋ぐ液晶に、活動の限界を示す警告が浮かんだ。
充電器につなぎ止め、僕はベッドに転がった。頭がぼーっとする。考えがまとまらない。
そのうちに、寝落ちていって、しまったようだ。
(クラクラしちゃう夜、それでも前に進んだ…の?)
結局、目覚めた後も考えはまとまらず時間だけが進んでいった。
二年生、春
後輩が出来る嬉しさと、先輩のいない寂しさとの狭間で揺れている。
仲の良い、話せる同級生も増えた。ただ特定の数人と居るとき、ふと思う。
アイツは勉強ができる
コイツは運動が得意
あの子は絵がうまい
この子は身長が高い
(…あれ、おれは…。)
幼い劣等感に押し込まれている二年生の春だ。
4話か5話で完結です