舞い散る紙吹雪が虚しく散っていた。
夢を見ていた。
輝く舞台の光が、僕と相方を照らしてくれる日をずっとずっと夢を見ていた。
だけど夢を見れば見るほどに、現実の世界が辛くなってしまったのはいつ頃からか。
思い返すまでもなくハッキリとしている。
1年前の今の時期だ。
口にださず、だけどもしっかりと感じてしまうぐらいには、夢の熱さよりも、現実の冷たさが逆転してしまっていると思うのは、隣の相方が泣いているのに、淡々と受け止めてしまえるものだと自覚したら現実が辛くなっていた。
憧れの先輩には追いつかない。
輝いていく後輩には抜かれていく。
ギラギラに野心を燃やしていく同期。
そんな連中と争い転がり落ちていくのはいつも僕達だ。
反省会と言う名の安い缶のお酒で、来年こそは売れてやるとか、芸人として一花もふた花も咲かせてやると息巻いている相方を羨ましく、疎ましく思っていた去年の今迄だ。
愚痴も決意も飲み込んだ僕とは対象的に愚痴も決意も粗方吐き出した相方は、さらに熱を込めるためか安い酒を飲み進めて終いには酒を飲んでいるせいか恍惚と情熱が入り混じる眼差しで誓いを手に、酒をのみぶっ倒れるかのように、眠りについた。
よくある決意ではあったが、それもいいだろうと思った。
来年結果を出せなければ解散だ。
相方は相方なりに僕の態度に感じとるものがあったのだろう。
来年こそは一緒に一花を咲かせてみせると言う自信なのかもしれない。
その自信は何処から来るんだよと毎度毎度思うのだけど、それでもいいと思った。
最初はせめて、悔いなどなくやめれる様にと思っていたのがいつの日か、いけそうだと思う日の方が続いていった。
怖いぐらいに波が、風が、舞台へとドンドンと押し上げていくのを感じた。
まるで運命の女神が微笑むように。
憧れた舞台のスポットライトを浴びた、間違いなく浴びている。
最高の相方の最高の瞬間を見たとき、僕は相方の思いを汲み取ってしまった。
相方はあれほどの熱意が感じられず、ただ真っ青と絶望めいた顔をしている。
相方は売れず夢を語っているのが幸せだったのだと言うことを、夢のスポットライトを浴びながら汲み取ってしまった。
舞い散る紙吹雪が虚しく散っていた。