終章
終章
アタシは、駅前で待っていた。
ポケットから懐中時計を取り出してそれを見る。
もうすぐ十二時だ。
そろそろ電車が来るはず。
カンカンカンカン……
遮断機の下がる音が聞こえる。
そして、電車の走る音が響く。
ガタンゴトン、ガタンゴトン……
電車は駅に止まり、中から何人かの人が出てくる。
アタシは、その中から一人の人間を探した。
いた、彼だ。
キョロキョロとしながらアタシを探しているようだった。
そんな彼に向けて手を振った。
彼も、アタシを発見しそれに答ええるように体全体を使って手を振ってくれる。
そして、走って改札口へときた。
改札口を出てアタシの元へ来ると、ギュッと抱きしめてきた。
「イタイイタイイタイ。離して!」
痛さと恥ずかしさからそんな事を口走ってしまった。
彼は照れを隠しているのかほっぺたをぽりぽりと掻く。
「今日はどこ行こうか?」
この何とも言えない空気を消すために、アタシは何気ない話題をふる。
「そうだなー。水族館でも行こうか?」
「え―――。先月もそこだったよ――」
月に一回しか会えないのに、この男はいったい何を考えてるんだ!
もう少し豪華な、所にも連れていって欲しいものだ。
「ははは、楽しからいいじゃないか」
乾いた声で彼は言った。
「まあいっか、今度はもっと違うところ行こうね」
こっちに来るだけで結構かかる彼に贅沢は言えないな。
「そういえばさ、幸が病院にいたときに変な夢を見たんだ」
彼はこれ以上目的地の話題に触れたくないのか話題を変えてきた。
「変な夢?」
なんだろう?
「うん。幸と一緒に不思議な世界を旅をする夢」
「アタシもその夢見てたよ」
彼は目を白黒させ、そしてアタシといっしょに微笑んだ。




