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異世界転生でチートしてます……妻が。  作者: パセリ
第二章 セカンドライフはファンタジー
5/48

2-1

――ッ!

 視界が真っ暗になったかと思うと、いきなり腰に衝撃が走る。

 どこかに腰を強打したらしく、横になって腰をさする。

「ん? 俺、触れている?」

 横になったまま自分の足を見てみると、黒のスラックスに革靴を履いた足。バタつかせてみると、俺の思う通りに動く。

 手! ちゃんとある。寝そべった地面に手を突くと、上半身を起こす事が出来た。

「何だ。夢か」

 よりにもよって自分が死んだ夢などという、とんでもないものを見てしまった。

 だが、それにしてもここはどこなのだろうか。どうして俺はこんな場所で眠っていたのだろう。

 このやけに着慣れた感じのする黒のスーツに靴だが、パジャマには不向きだと思う。

 ならば、眠っていたというより、俺は倒れていたのか?

 服装からすると仕事着なのだろうが……ん? 俺は一体どんな仕事をしていたんだ?

 何だか頭に霧がかかっているかのように、自分が何をしていたのかがさっぱり思い出せない。


 雲一つ無い青空の下で、遥か遠くに山が見えるのだが、今俺が立っている場所はかなり広い草原のようだ。

 たった一人で見知らぬ場所に、わけもわからず立っていると、急に心細く、不安になる。

 一人? 俺はいつも一人で居たのだろうか。

 何となくだが、いつも可愛い少女と、幼い女の子の三人で過ごしていたような気がするのだが。

 とにかく、何も無い草原で突っ立っていても仕方が無いので、何か無いかと周囲を見渡すと、少し離れた場所で少女が二人、俺を見ていた。

「すみませーん! ここはどこですかー!?」

 大きめに声を上げ、白いヒラヒラした服の少女と、茶色い子供服を着た小さな女の子の二人組に向かって走って行く。

 彼女達は友達と言うには年が離れているし、姉妹なのだろうか。だがそれにしては、二人はあまり似ていない。

「いやー、よくわからないんですが、気付いたらここに居たんですよー」

 お客さん向けの営業スマイルを浮かべつつ近寄っていく。

 ん? お客さん? ハッキリとは思い出せないのだが、何となく人との会話を仕事としていたような気がしてきた。

 などと記憶をたどっていると、

「あの、転生で来た方ですよね?」

「はい?」

 白い服の少女がよくわからない事を聞いてきた。

「いや、あの……意味がわからないのですが」

「ラブルー、この人絶対転生者だってー。ヒトミミだもん。それにこの服装。聞くまでも無いってー」

 小さい女の子が俺を指さしながら、白い少女に話しかけている。

 転生者? ヒトミミ? 後者の意味はよくわからないが、俺の心が少しずつソワソワしだす。

 もしかして、もしかすると、やっぱりアレなのか!?

 俺がモヤモヤと考え込んでいるうちに、少女達の方から俺の近くまで歩み寄って来ていた。

「こんにちは。私はラブルで、こっちはティディ。道に迷われたのですよね?」

 俺の営業スマイルが恥ずかしく思える程の、キュートな笑顔を向けて白い少女――ラブルが挨拶してくれた。

 見た目は二十歳くらいで、透き通るように白い肌と、白くて長いヒラヒラしたポンチョのようなものを身に纏っている。

 外国人なのだろうか、青い瞳に白みがかった長い銀髪……

「って、そ、それは何!? 動いてるんだけど!?」

 遠目には気付かなかったが、側頭部から左右に垂れる銀色の大きな何かが、時折ピクっと動く。

「あ、やっぱり転生で来られたのですね。これは耳ですよ」

 さらりと言ってのけられたのだが、耳にしては大き過ぎる。だが、その位置、その形状、そして耳。俺の知識をかき集めて推測されるそれは、間違いなくイヌ耳だ。

「えっと、そういうアクセサリが流行っているのかな?」

「あはは。転生してきた人が耳をアクセサリの類に思うってホントなんだー! ラブルもボクも本物の耳だよ!」

 言われて小さな子――ティディの茶色いショートカットの頭を見ると、ラブルよりもやや上の位置に丸く大きな耳が生えている。

 この茶色いそれは、クマの耳なのだろうか。ラブルのイヌ耳よりもモコモコしている。

「えっと……ここは、どこなのかな?」

「ここですか? ここは都市国家テーベイの西にある草原地帯ですよ」

「そんな地名聞いた事ないのですが」

「まぁ、そうでしょうね。えっと、一応確認いたしますが、貴方のご家族のうち、誰か一人でもお名前を言えますか?」

 この少女は何を言い出すのだろう。家族の名前? そんなの、そんなの……アレ?

 名前どころか、顔も思い出せない。そもそも俺は何人家族なのだっけ? 両親と俺の三人で核家族だったのか?

 何となく三人家族だったような気がするし、兄弟などは居なかったのだろう。

「言えないですよね。何故なら貴方は、前の世界での人間関係をリセットされて、この世界へ転生されてきたのですよ」

 ……はい?

 少女の言葉の意味が理解できず、返事が声になっていない。

「お兄さん、心配しなくていいよー。この世界へ来るヒトミミは皆そんな感じだからー」

 真っ白になっている俺の頭に、ティディの陽気な声が響いていた。

いただいたご指摘より、内容を少し修正いたしました。

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