4-8
「……君、勇樹君。起きて、ねぇ起きてってば」
「お兄さん、着いたよー! いい加減に起きないと……えいっ!」
――っ!
ようやく薄らと意識が覚醒しだした時、突如ティディが俺の胸の上に乗ってきた。
「さぁ、早く起きなさーい!」
俺が船内で馬鹿な事をして背中を強打した際、どうやら気を失って寝かされていたようだ。
軽い衝撃と、大きな声で目を開けると、すぐ目の前にティディの小さなお尻がある。薄い毛布一枚を隔て、俺の顔に背を向け跨っているのだが、小柄な身体なので重くもなく、むしろ柔らかな感触を楽しんでしまいそうになる。
「もう、起きないとくすぐっちゃうよー!」
ティディがわきわきと俺の腰をくすぐろうとしている。だが毛布で俺の身体の位置が正しく把握出来ていないのか、腰というか、ちょっとくすぐる場所がズレている。
「わかった! わかったから。ティディ起きるよ。だから、今すぐやめてー!」
「あははっ。お兄さんが起き上ったら止めてあげるよー」
笑いながら俺の腰を弄ってくるのだが、ティディが俺の上に乗っている以上、起きられるわけもなく。そして、ティディの手が、
「はいはい。もう起きたんだから良いでしょ。二人とも行くわよ」
「はーい」
ようやくラブルから助けが入った。あのまま放置されていたら……いや、考えないでおこう。
どうやら俺が遅れたせいで、船から降りたのは俺たちが最後だったようだ。
「ここがラブルたちの目的地なの?」
「そうよ。といっても、港から街中へ移動しないとだけど」
そう言いながら足早にラブルが進んで行く。
目的地に着いたからなのか、いつもよりもラブルの歩みが速い気がする。小柄なティディはラブルの速度に合わせるため、時折小走りになってしまっている。
「ラブル、少し急ぎ過ぎじゃない?」
「ごめんね。ちょっと時間が無いのよ。このタイミングを逃すと、夜まで待たないといけなくなるから」
船でやたらと急いでいたのは理由があったのか。そして、この急ぐ原因を作ってしまったのは俺自身のようだ。
「あっ! いや、ごめん。何でもない」
少し気になる事を見つけた。が、只でさえ遅れているらしいのだ。俺の気のせいかもしれないので、質問したい想いを我慢し、黙って付いて行く。
――まただ。
暫く歩くと、さっきと同じ感覚に陥る。
どうしてかはわからないが、何故かこの街並みを知っている気がするのだ。
綺麗に石畳が敷かれ、煉瓦作りの家が並ぶ。それなりに人通りが多く、活気のある街。そして何より、少し遠くにあるものの、街の中心にそびえる神殿のような白い建物。
もちろん元の世界では、俺はこんな街に行った覚えがない。
だが、俺はここに来た気がするのだ。となると、いつ来たのか。
……それは俺が最初に美玖ちゃんから召喚された場所。そして彼女が俺に来いと行った街――アテーナイ。
今居る場所は、まさにそこの街並みと同じだった。
内容を微修正しました。




