3-12
「勇樹君、今のは?」
「いや俺もよくわからないんだけど、失敗したと思ったのが何故か上手く発動しちゃって」
ラブルの疑問は当然なのだが、俺自身がよくわかっていないので何も説明ができない。
「細かい事は気にしない! いーじゃない、とにかく初めて魔法が発動したんだよー。おめでとー!」
「あ、あぁ。ありがとう」
俺の顔のすぐ左側へ小さな顔を出すティディは素直に祝ってくれる。ただ顔が近過ぎて、少女特有の良い匂いが絶えず俺の鼻孔に吸い込まれて行く。
きっと、この男を虜にするであろう少女の香りと、大きくはないが柔らかくて弾力のある少女の温もりで俺は冷静な判断が出来なくなったのだろう。
「あ、そうだ。ボク思うんだけど、失敗成功云々言うくらいなら二、三回やってみれば良いんだよ。練習、練習」
「そ、そうだな。よーし行くぜっ!」
ティディの提案に乗っかってしまい、魔法が成功した原因も究明しないままに魔法を連発したのだ。それも全て成功するので二、三回と言わずに調子に乗って十数発も。
「あ、あれ? 何だか目眩が」
「お兄さん! 大丈夫!?」
成功時の状態をそのまま残して試そう! とか言いつつ、実はただ少女の温もりと香りを楽しみたいだけの理由で、ティディに背後から抱きついて貰っていたのだが、俺の膝が崩れ落ちる。
「きゃっ!」
俺が体勢を崩したせいで、ティディまで巻き込んでしまう。さらに悪い事に座席からもずり落ちて、その時俺の身体だけ横に半回転――仰向けの状態で床へ倒れ込んでしまった。
硬い木の床で後頭部を打った瞬間、体勢を崩したティディの控えめな胸が俺の視界を塞ぎ、真っ暗になったところで意識を失ってしまった。
「あ、お兄さん大丈夫?」
目が覚めると、俺の視界はティディの幼い顔で埋め尽くされていた。
「ラブルに聞いたんだけど、魔法が正しく発動すると失敗した時よりも遥かに多くの魔法力を消耗するんだって。で、魔法力が少ないお兄さんが一気に魔法を使っちゃったから、こんな事になっちゃったんだって」
「こんな事?」
「あ、お兄さん一時間くらい眠っていたんだよ」
そう言われて、俺の身体が横たわっている事と、頭が何か柔らかくてハリのあるものに載せられている事に気付く。
俺の視界と後頭部に伝わる感触から、俺の頭が載っているコレが何かを連想してしまう。今の状況って、大至急頭をどけないといけない状況なのでは!?
このまま真っ直ぐ上半身を起こすとティディの顔にぶつかってしまうので、一旦身体を横に回転させると、俺の頬にムチっとした弾力のあるスベスベしたものが触れ、視界がティディの顔から肌色の双丘――ぴったりと並んだ膝に変わる。
上半身を起こして現状を確認するが、やはりティディに膝枕をしてもらっていたようだ。短いキュロットスカートから覗く素肌が何とも眩しい。
「えっと、介抱してもらったみたいだね。ごめんよ。そして、ありがとう」
「いいよ、いいよ。気にしないで」
この一連のやりとりで、今まで熊耳とその幼い容姿に行動から、ティディは女性として見れないのかと勝手に思っていたのだけれど、そんな事もないのだなと考えてしまった。
いや、決してフトモモの感触が良かったからとか、良い匂いがするからとか、単に触れあう時間が長かったからとか、そんな短絡的な理由ではないと思うが。いや、ホントに。
もしもティディと恋人関係になった場合、俺が二十七歳でティディが十五歳だから一回り違って、もれなくロリコンと呼ばれるように……。でも、今の俺は見た目十代後半だから、ノーマルなのか?
一人で意味不明な葛藤を続けていると、俺が起きた事に気付いてラブルが近づいてきた。
「おはよ。調子に乗って魔法を使い過ぎるとどうなるか、身を持って体験できたわね」
「そ、そうだね。これからは気を付けるよ。あ、この魔法力の残量とかって数値で確認出来たりしないのかな?」
「数値で? どうやって?」
「あー、無理なんだ。例えば、この『状態確認』とかで表示されると分かり易かったのだけど」
「流石にそれは無理よ。今どれくらい疲れているか……とか、そんなの数値に出来ないじゃない。こればっかりは本人の感覚だから、自分で経験して養っていくしかないわね」
RPGなんかだと、バーや数値で表示してくれるのだが、どうやらそんな親切な機能は無いようだ。レベルの表記はあるのだから、出来そうな気もするのだけれど……。
「って、あれ? ラブル、この『状態確認』壊れてない? 俺は村人レベル1だったのに、村人レベル18って表示されているよ?」
「あら、本当ね。勇樹君、実はどこかで戦闘してた?」
「いや、全くしてないんだけど」
村人レベル1と表示されて以来一度も見ていなかったのだが、何気なく見てみると表示が変わっている。ただ「村人」については少しも変化がないが。
「もしかして、魔法の練習で経験値が溜まっていたのかも。村人の適した行動っていうのが何かはわからないけれど、戦闘しなくても経験値が入るのかもしれないわね」
「そんな事ってあるの?」
「もちろん。例えば、『商人』が戦闘したってレベルが上がるわけじゃないわ。商人なんだから商売を行うことでレベルがあがるの」
「それで強くなれるの?」
「別にレベルが上がると強くなるわけじゃないの。その職業に対してどれだけ優れているかを数値化しているだけなのよ。だから商人レベル99と戦士レベル5の二人が戦うと、戦士レベル5の方が勝つ事だってありえるわけよ」
つまりは、今の俺は村人として成長しているというわけなのだが……村人として成長って何なんだ?
またグルグルと頭の中で自問自答が始まりかけてしまった。
内容を微修整しました。




