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異世界転生でチートしてます……妻が。  作者: パセリ
第三章 精霊魔法はじめました
25/48

3-9

「ごちそうさまでした」

 レモラのムニエル――骨が多い小魚レモラを無理矢理真っ二つにし、両面をカリッと焼いた料理は、俺からすれば悪くは無かった。

 数匹分の小魚の半身がサラダと共にプレートへ盛られ、柑橘系の香りがアクセントとなって食欲をそそる。そして何より量が少なく、既に食事を終えている俺でも食べきれた。

 しかしラブル曰く、本来ムニエルとは魚の切り身を使うそうで。しかも骨の多いレモラを使うのであれば、油で揚げた方が良いのでは? という小言――もといアドバイスまで付いてしまう内容だったようだ。

「あの……やっぱりダメでしたか」

「うーん、ごめんなさい。でも、あのムニエルは本当のオススメではないのでしょ?」

 ラブルは何をおかしな事を言うのだろうと思っていたのだが、どうやら図星の様だ。アドバイスを聞いていた時は、まだヨーコさんの顔は普通だったのだが、それがわかりやすく沈んでいく。

「アレ? でも最初にヨーコさんがオススメって言ったメニューだよね?」

「勇樹君。このお店の看板に気付いた?」

「看板?」

 確か、いかにもファンタジーな食堂してますって感じで、特に印象に残るような看板でもなかったと思う。全く俺の印象に残って居ない事が良い証拠だ。

「んー、ちょっと見てくる」

 小走りで店を出て看板を見上げると、赤いドラゴンの絵に重ねて、ナイフとフォークを描いた看板だ。

 とりあえず確認したので、再び店内へ。

「食堂っぽい看板だったけど」

「うん、そこに何が描かれていた?」

「ナイフとフォーク」

「それと?」

「ドラゴン……って、あれ? そういえば、飛竜の翼の煮付けってメニューがあったよね」

 ティディが注文しようとして断られたものだ。

「そう、そのドラゴンにナイフとフォークを重ねた絵はドラゴンを食べられるお店だけに許された、いわばドラゴン料理店のマークなのよ」

「えっ? でも、さっき出せないって」

「きっとこのお店は元々ドラゴン料理専門店だったのに、その材料であるドラゴンが入手困難になって、急遽他のメニューを追加したと思うのよ」

 ラブルの発言に、ヨーコさんが沈んだ顔のまま無言で居るため、おそらく肯定なのだろう。

 ドラゴン料理一筋だったのに、材料が入らない。だが店を閉めるわけにもいかず、急遽別の料理を出してみるも、当然専門外の材料でいきなり美味しい料理が作れるわけもなく、こうなったという訳か。

「けど、材料が入手困難になった……というか、入手困難になる前に手は打てなかったの? 品薄になる兆候とかがあったんじゃ?」

「違うんです。元々ドラゴン――特にワイバーンと呼ばれる飛竜なんて、そこかしこに沢山飛んで居て、割と安く仕入れる事が出来ていたのです。ところが数日前、急にパタっと空から飛竜の姿が消えたのです」

「えっ!? 沢山飛んでいたのに、ある日突然居なくなるなんて、そんな事あるの?」

「私だって、そう思いましたよ。まさか、突然空から飛竜が居なくなるなんて。でも何の兆候もなく、突然消えてしまったのです。それで仕方がなく、この街よりさらに大きな街へドラゴンの肉を仕入れに行ったのですが、ビックリするくらい高騰していて」

 なるほど。高くて仕入れる事が出来ず、ヨーコさんは手ぶらで帰らざるを得なかったと。そして、その帰り道に俺たちと出会ったのか。

「それで、もう自分で飛竜を仕留めるしかないって思っていた所に、皆さんが魔法の練習をされていたので、教えていただこうかと」

「えっと……ヨーコさん。まさか精霊魔法でドラゴンと戦うつもりだったのですか?」

「えっ!? 出来ないのですか!? 私のお父さんが若い頃は、包丁とお鍋の蓋だけで飛竜くらいなら仕留めたって言っていたので、魔法が使えたら出来るのかと思ったのですが」

 包丁とお鍋の蓋って、あの厨房の親父さんがそんな強者だったとは。まぁ本当かどうかわからないが。

「うーん、よほどの高位者なら別ですが、一般的にドラゴンに精霊魔法は効果が薄いのですよ」

「ど、どうしてですか!?」

「ドラゴンの身体を覆う『竜の鱗』が魔法力による干渉を弱めると言われています。なので、基本的にドラゴンを倒すのであれば、物理攻撃じゃないと難しいですね」

 っとラブルの説明で、厨房の親父さんが実は竜殺し(ドラゴンキラー)である信憑性が出てきてしまった。

 だが、そんな凄い力を持つ人も、今や食堂のコックさん。人生とは、どう進むかわからないもののようだ。

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